第90章 豪雨が襲う
このセンテンス、なんか変じゃん?って思うけど、実はめっちゃすごいんだよね。目の前に座ってたリウ・ホアとフォ・チンチーが顔を見合わせて、ニヤリって頷いた。フォ・シージェもこっそりイェ・アンランにグッドサインしてたし。
おじいさんは嬉しそうにニッコニコで笑って、「じいちゃんは、ひ孫のためにもうちょっと生きるよ」だって。
気分がいいかどうかで、病気への影響ってすっごい大きいんだよね。気分がいい人は、回復も早いし。ハワードみたいな治らない病気だと、気分がいいってのが長生きの秘訣なのかも。
みんなでハーン家に戻ってきた。この家は、ハワードが頑張って手に入れたんだよね。ここには、ハワードとの思い出がいっぱいあるんだ。特におばあちゃんとの。家に帰ると、おばあちゃんがいつもそばにいるような、そんな感じなんだって。
「お父さん、先に部屋で休んでて。ジャン・イーと私で、何か食べ物買ってくるね。」リウ・ホアがハワードの肩をポンポンって叩いて、部屋に連れて行った。
ハワードも前は2階に住んでたんだけど、年取って足腰も不自由だしさ。フォ・チンチーが、1階の左側の隅に部屋を移したんだよね。ハーン家の1階の左側っていうとこに。そうすれば、遠くに行かなくてもいいし、邪魔されることもないし。
ここで、一つ言っときたいことがある。
フォ・シージェって、飛行機迎えに行ったとき、親に挨拶しなかったんだよね。ハーン家に着いても、3人とも気まずそうに座ってたし。
理由はめっちゃシンプル。子供の頃、両親はよく仕事で家を空けてて、シージェの成長をあんまり気にかけてなかったんだよね。だから、親に対して深い感情もなかったし、イェ・ボーみたいに話すことも少なかったんだって。
それもあって、フォ・シージェは子供の頃からやんちゃだった。両親が引退した後、何も言わずに海外に留学しちゃったし。
大人になってから、両親はフォ・シージェに埋め合わせしたいと思って、いいものを色々送るんだけど、毎回「ありがとう、お父さん、お母さん」って言うだけだったんだって。
両親は、シージェに借りがあるって分かってるから、できる限りシージェを喜ばせようとしてるんだよね。
で、今、3人で気まずそうに座ってる。イェ・アンランはフルーツの盛り合わせを持ってきて、フォ・シージェの隣に座った。
フォ・シージェは、学校のこととか全然話さないんだよね。親に聞かれても、いいことしか言わないし。フォ・シージェがバンド組んでるってことすら、フォ・チャンザーから聞いたんだって。
マジで、シージェのこと全然知らないんだよ。
普通、子供に申し訳ないって思ってる親って、子供をすごく大事にするもんでしょ?リウ・ホアとリウ・ホアがいい例だよ。
リウ・ホアが、シージェの近くにちょこっと寄って、「シージェ、海外での生活には慣れた?」って。
いや、それ普通に考えたらおかしいでしょ。もう5年近くも海外にいるのに、今更聞く?
ツッコミは入れつつも、フォ・シージェは親に対してめっちゃ丁寧。「うん、まあまあ慣れたかな」
「せっかく帰ってきたんだから、しばらく家にいて、おじいちゃんと一緒に過ごしてあげなさい」
「分かってる」
お母さんと娘は、気まずくて会話が続かない。イェ・アンランは黙ってご飯食べてたし。
でも、フォ・チンチーとフォ・シージェの会話は、さらに気まずい。フォ・チンチーは、もうクルミを2つも準備してて、焦ってるからか、すごい速さでクルミを割ってる。フォ・シージェに「娘、もし海外の学校に行きたくないんだったら、いつでも言って。迎えに行くから」って言ってた。
もう2年生で、学校で自分のバンドもやってるのに、急に帰ってくるわけないじゃん。
もしかしたら、親とは話したくなかったのかも。フォ・シージェはイェ・アンランを連れて、親に挨拶して、2階に上がっちゃった。
2人とも、無意識に右に進み始めて、2歩歩いてから気づいて、今度は左に進んでたし。
ハーン家の両親が帰ってきたから、イェ・アンランとフォ・チャンザーは一緒に住んでるってことにしないといけないし、疑われるわけにもいかない。部屋の方は、まだ掃除する時間なかったんだけど、2階の右側の隅の部屋は、絶対開けて見ないでしょ。
外は、いつの間にか雨が降り始めた。雨はどんどんひどくなってきて、雷もゴロゴロ鳴ってるし。まだ4時なのに、もう8時か9時くらいみたいに暗い。風もビュービュー吹いてて、外のブランコが勝手に揺れてる。気を抜いたら、誰か乗ってるみたいに見えそう。
30分経っても、雨は止む気配がない。テレビでは、今日の雨が今年一番の大雨だって言ってる。一部では土砂崩れがあったり、道路が冠水して車が動けなくなったりしてるみたいで、冬の雨って、針で刺されるより痛いんだよね。
玄関の街灯も、何回も落っこちそうになってて、別荘地全体が真っ暗。フォ家の玄関のライトも、もう今にも壊れそう。電気つけたら「ジリジリ」って音が聞こえるし、消すしかない。
電気が消えたら、外はもっと怖い。リウ・ホアは息子が心配で、フォ・チャンザーに電話したんだ。
「アゼル、いつ帰ってくるの?お母さん、すごく心配なのよ」
電話の向こうでは、ものすごい雷の音と、雨がガラスに打ち付ける音が聞こえて、フォ・チャンザーの声も聞こえにくい状態。
「大丈夫だよ、お母さん、もうすぐ帰るから。今は安全だよ」
「無事でいてちょうだいね…」
って言い終わる前に、電話が切れちゃった。フォ・チャンザーって、急に電話切ったりしないのに。リウ・ホアがもう一回電話しても、電源切れてる。リウ・ホアはめちゃくちゃ焦って、フォ・チンチーを呼び出したんだ。
家族みんなでハワードのところに行って、他の人も出てきた。イェ・ボーが「僕、今から若様を探しに行ってきます」って言ったら、
フォ・チンチーがすぐに止めた。「ダメだ、誰も外に出ちゃダメだ。アゼルが帰ってくるのを家で待ってろ」
リウ・ホアは携帯電話を握りしめて、「ウチのアゼルはきっと無事だ、無事だ」ってブツブツ言ってた。
ハーン家のテレビはつけっぱなしで、地元の緊急ニュースがまた流れてたんだけど、大雨で低い場所にある交差点が冠水して、車が突っ込んで動けなくなって、全部渋滞してるって言ってた。
それから、土砂崩れで人が死傷したっていうニュースもあって、映像は見えなかったけど、アナウンサーの説明聞いてるだけでも恐ろしかった。
一番怖いのは、ニュースで言ってた交差点が、ハーン家から500メートルしか離れてないってこと。急に電話が切れたってことを考えると、何か悪いことが起こるんじゃないかって、すごく不安になる。
夜になって、家が雨漏りしちゃったんだよね。リン・ダッドがイェ・アンランに電話してきて、レストランが用意してた誕生日のパーティーの食材が運搬中にダメになっちゃって、1週間でそんなにたくさん食材をどうにかするのは無理だって。
イェ・アンランは、ハーン家の両親にそのことを伝えないといけなくなった。2人とも、「自然災害は仕方ないことだ。人々の安全が一番大事だ。準備ができてないなら、誕生日パーティーは延期して、他の人に危険な思いをさせるのは避けなきゃ」って言ってた。
2人とも、もう50年以上生きてるから、今日の豪雨は、20年前に一度あったきりだって思ってるんだ。その豪雨は1週間も続いて、たくさんの家が崩壊したし、豪雨で川が逆流して、川沿いの家がめちゃくちゃになって、計り知れない損害が出たんだって。
1週間後、やっと雨が止んだんだけど、1ヶ月間ずっと雨で、1日も晴れなかったんだって。
今日の雨は、あの20年前よりもっとひどくて、どれくらい続くのかも分からない。
普通の誕生日パーティーなら、中止にすればいいんだけど、今回はハワードの最後の誕生日になるかもしれないから、みんな途方に暮れて、ただ雨が早く止むように祈るしかないんだよね。