CHAPTER 10
会場に足を踏み入れた瞬間、ザビエルの心臓は爆発しそうだった。 遅れて到着したのに、聖女は全然平気な顔してる。 ま、あの人はいつもああだけどさ、こんなイベントに遅刻したら普通怒られるもんだよね。
まさか、こんな日が来るとは思ってなかったんだ。 昔のこと考えると。 昔はここが俺の家だったんだよ。 生まれ育った場所。 母親は側室だったけど、俺は王子として生まれたんだ。 父上にはすごく可愛がられてた。
ある日、狩りに出かけたんだ。 俺はまだ10歳だったけど、例外じゃないんだよね。 馬に乗って、ちょうど仕留めた鹿を追いかけてたら、すべてが最悪な方向に変わったんだ。
いつから俺が狩られる側になったのか、全然わからなかった。 矢が突然飛んできて、できることは逃げることだけだった。 護衛は、暗殺者たちと戦って死んじゃった。
必死で逃げたんだけど、結局、殺されそうになった。 谷に落ちて転げ落ちたけど、奴らは追いかけてくる。 洞窟に隠れたんだけど、重症だった。 もう終わりだって思った時に、聖女が俺を助けて、暗殺者たちを殺してくれたんだ。
それ以来、一度も戻ってない。 葬式も行われたんだ。 俺はこの世から消えたことになってて、母親だって俺が生きてるなんて知らないんだ。 それでも、母親は父上の寵愛を一身に受けてた。
今、俺はここにいる。 俺の血を欲してる連中が集まる場所に。 母親がまた息子を産んだことを祝うために。 母親は、俺がいなくなって寂しいとか思ってるのかな? なんだか、前よりずっと楽しそうに見えるんだよね。 俺って、そんなに重要じゃなかったのかな?
「落ち着けよ、ザビエル。じゃないと、閉じ込めるよ」ヴァレリーが言った。
「ごめん。俺は自分を売るつもりはない」ザビエルはヴァレリーを見て言った。
聖女、ヴァレリーは、いつも謎めいてる。 特に、他の人たちにとっては。 あの顔を知ってる人はほとんどいないんだよ。 いつもこんな儀式の時は顔を隠してるし。 知らない人が見たら、絶対気づかないと思う。 知ってても、よく知らないと見分けられない。
みんなが俺たちを見てる。 俺たちは席に案内されて、ザビエルは聖女を座らせて、それから自分の席に座った。
皇帝が后たちを連れてやってきた。 臣下たちはひざまずいたけど、聖女は座ったままだったから、ザビエルはちょっと笑った。 俺は、聖女がいつも、王族が来ても座ったままだって言う、お弟子たちの話は嘘だと思ってたんだ。
皇帝と后たちが座り、官僚たちも座った。
「日は、私のまた一人の息子が生まれたことを祝いに来てくれて、ありがとう。 楽しい時間を過ごしてほしい」皇帝が言った。
みんなが賛同して、皇帝を応援した。 でも、聖女はワインを飲んでる。 皇帝をイライラさせようとしてるのかな?
俺は知ってたんだ。 母親は、皇帝との和平のために聖女から皇帝に与えられたもので、皇帝はあの関係を壊そうとはしないはずだ。
国には50万人以上の兵士がいて、山には4000人以下しかいないけど、別の国と戦うより、山との戦争の方が怖いんだ。
山の兵士一人は、達人に匹敵する強さで、一人でも危険なんだ。 だけど、俺は母親のことしか見てなかった。 母親はすごく元気そうだった。
すごく幸せそうにも見えた。 ほんの一瞬、俺を見て、それから顔色が変わったんだ。 俺だって気づいたのかな? そう思った。 ザビエルは聖女を見て、もう一杯ワインを注いだ。
「飲みすぎんなよ」ザビエルが言った。
「絶対に酔っぱらったりしないわよ。こんなにひどいってわかってたら、来なかったわ」聖女はワインをすすって、ザビエルは笑った。
退屈そうだった。 俺にはわかった。 なんで聖女が、こんな宴会を嫌うのか、いつも理解できないんだよね。 自分の誕生日だって祝わないし。 子供が嫌いなのかと思ったけど、嫌がらせしてるのを見たことない。
誰に対しても平等で、すごく公平で正義感がある人。 良いことをした人には褒美を与え、悪いことをした人には罰を与えるんだ。
次々と贈り物が捧げられ、俺たちの番が来た。 ザビエルは聖女が贈り物を渡すために立ち上がることはないって知ってたから、自分がやることにしたんだ。 ザビエルは立ち上がり、ノラがついてきた。 父親と母親に頭を下げた。 父親と母親は、ザビエルを幽霊でも見るような顔をしてたけど、俺だって気づいてくれて嬉しかったんだ。
「蓮の宮殿と聖女に代わりまして、高貴な側室が王子の誕生を祝います。 これからも末永くお幸せに」ザビエルはそう言って、贈り物を渡した。
ノラが贈り物を開けると、みんながそれを褒めてるのが聞こえた。 聖女が贈ったのは、見たこともないくらい巨大な、光り輝く真珠だったんだ。
「すごい大きな真珠ですね。 聖女様、どこで手に入れたんですか?」皇帝が尋ねた。
「それはまた、別の機会に」聖女は話を切り上げようとした。
ザビエルは笑って、聖女の隣に戻った。 儀式はついに終わり、聖女は皇帝に呼ばれた。
「待ってて」聖女はザビエルに言った。
何の話をするのかわからなかったけど、同時に、ここで何をしてればいいのかもわからなかった。 母親に仕えてる侍女がザビエルのところに来た。 彼女のこと覚えてる。 ずっとザビエルのそばにいた人だ。 彼女が近づいてくるときの顔を見た。
「高貴な側室が、あなたとお話したいそうです」彼女は周りの目を避けるように言った。
ザビエルは、どこにも行かないようにって言われてたけど、侍女の後をついて行ったんだ。 母親に会って、聖女が何かする前に、色んなことを聞きたかったんだ。