第34章
クル
全身が痛かった。目を開けても痛いんだもん。ベッドは超フカフカで気持ちいいんだけど、毛布の中はムシムシしててさ。
ゆっくり指を動かして、手も足も動かしてみた。とりあえず起き上がろうとして…うっ!って唸っちゃった。痛いし、なんか重いし、あの夜よりも疲れてる感じ。
足をついて、そろーっと立ってみたら…一瞬で倒れたよね。あー!ってまた唸っちゃった。
ケガした足のこと、すっかり忘れてた。
疲れ果てて、そのまま床にゴロン。ちょっとしたら、いきなりドアが開いた。ナイルが、床にいるあたしの姿を見て、すっごいビックリしてる。
え?ナイル?
「ナイル?ちょっと、ここどこ?」って聞いたら、あたしのとこにすごい速さで近づいてきた。
質問に答える前に、ナイルはあたしをお姫様抱っこして、ベッドに戻してくれた。
「俺の部屋だよ」って、淡々と言うナイル。
「部屋、リフォームした?こんなに広かったっけ?」。ナイルのペントハウスの部屋の3倍くらいあるじゃん。
「ペントハウスじゃない。ここは、もともと俺が住んでるところだ」って、布団かけてくれたけど、あたしは首を振って止めた。ナイルは代わりにベッドに座って、あたしはベッドの背もたれに寄りかかった。
「あーね。なんであたしをここに?」って、眉間にシワ。「なんで仕事行ってないの?」
時間はわからないけど、絶対昼間だよね。大きな窓から入ってくる太陽光が強すぎる。ナイルはいつも仕事人間じゃん。早起きして遅くまで仕事してるタイプだし。
「待って、もしここがナイルの部屋なら、ナイルはどこで寝てたの?」
「チッ。起きたらすぐ質問攻めか」
「本気だよ、ナイル。昨日の夜、気絶しちゃったんだけど、そのあと何があったのか気になって」
ナイルは、あたしに答えるつもりがないみたいに、急に黙っちゃった。マジで嫌なんだけど。
「なに?何があったの?教えて」って、あたしは不機嫌そうな顔で言った。
「三日前に気絶したんだ。やっと起きたんだな」
あたしは目を見開いた。「は?!」
「落ち着けよ。昏睡状態だったわけじゃない。意識が朦朧としてただけだ。熱もすごく高かったし。お前の希望通り、病院には行かせなかったから、うちの専属医に見てもらったんだ」
あたしは下を向いた。「そっか」って、まつげの間からナイルを見た。「ありがとう」
「お前には説明してもらうことがあるぞ。今回で二回目だぞ、命の危険にさらされたのは」って、意外と怒ってない声。優しく話すし、こんなナイルには慣れてない。
「別に、危険だったわけじゃないし」
ナイルの落ち着いた顔が、すごい形相になった。「あのクソ野郎を庇うのか。俺からお前を奪ったんだぞ!」って、唸ったから、あたしはびっくりした。
こんなナイル、見たことない。マジで激怒してる。
「なんであたしここにいるの、ナイル?」って、あたしは代わりに聞いた。
前回会ったときはギクシャクしてたから、なんて言っていいかわかんないんだよね。
ナイルは目を閉じて、顔を背けた。「お前が二度と来ない場所にいるんだ」って、それからあたしに目を戻した。睨んでるんだけど、色んな感情が入り混じってる。「それで、なんであいつはお前を連れて行ったんだ?」
「友達が来たときに答えたい」って、あたしは答えるとなんか不満そう。「全部説明したい…全部始まったところから」
「お前の友達が全部話してくれたよ」って、多分コルトンのことだよね。あたしが真実を話したの、コルトンだけだし。あいつに話したのが、こんな役に立つなんて思ってもなかった。でも、今回の件で良いこともあったんだよ。コルトンとナイルが協力してるってこと。「お前の決断を応援したい気持ちはあるけど、これだけは借りがあるぞ、クル。お前を探して、このクソみたいな街をぶっ壊したくなったんだ」
急に、あたしは自分が悪かったような気がしてきた。あたしへのナイルの心配そうな顔を見ると、余計に。最初から希望がないと思ってたのに、それでもあたしは脱出計画を立てられたんだもん。そして、成功したんだし。
あたしはナイルをしばらく見つめて、真実を話すことにしたんだ。
「シャワー浴びてもいい?」って、ちょっと恥ずかしそうに聞いたら、ナイルは頷いて、あたしを抱き上げたからびっくり。あたしはナイルの首に腕を回して支えた。
ドキドキするし、あったかいし、クラクラする。マジで。これはありえない。
ナイルはあたしを浴槽の端に座らせて、服を脱がせ始めた。
「ちょ、ちょ、ちょ」って、あたしはナイルの手首を掴んで止めた。「あ…自分でできるから」
マジで顔が赤くなるし、なんでこんなことになってるのかわかんない。何度もヤッてるし、裸も見せ合ってるのに。なんで今更、恥ずかしいって思ってんだよ。
ありがたいことに、ナイルは承諾してくれた。ナイルは浴槽にお湯をためて、ラベンダーの匂いの石鹸を入れてくれた。終わったと思ったら、まだあたし服着てるし。
あたし達はしばらく見つめ合って、あたしはナイルに「出てって」って口パクした。
そしたら、ナイルはあたしの前にひざまずいた。「お前の裸を初めて見たみたいなこと言うなよ」って、あたしは目を回した。
ナイルはちょっとニヤって笑って、あたしの首の後ろを掴んで、あたしを自分に引き寄せて、あたしのおでこにキスした。
あたしは呆然とした。マジで何なんだよ!ナイルは傲慢で、独占欲強くて、支配的、甘やかされて育った…でも、優しくなんてしたことないのに。
それから、ナイルは立ち上がって、部屋を出ようとし始めた。「ゆっくりしてろよ。でも、ドアはロックしないからな」って言いながら。
「別に」ってあたしは呟いて、服を脱ぎ始めた。
あたしは気づいた。あたしは巨大な白いTシャツだけ着てて、下はパンティだけ。ブラジャーもしてないし。誰があたしに着替えさせたのか、マジで聞きたくもないんだけど。
あのクソ野郎、マジで独占欲強いなー。