第63章
女ってのはさ、みんな同じ。金のために俺たちのそばにいるんだよ。用なしになったら、服みたいに着替えるんだから。信じらんねえ! あんなクソみたいなこと、誰ができるんだよ?
本気で好きだったと思ってたけど、別れたときは全然つらくなかったんだよね。むしろ、なんかスッキリしたっていうか。
飲み物を一気飲みして、ベッドに寝転んで、あいつのクソみたいなこととか、裏切りとかを全部考えながら、すぐにぐっすり眠っちまった。
別れてから一週間経ったけど、あいつのことなんて全然考えなくなったし。夢に出てきてうなされるとか、そんなこともなかったし。
あいつは必死で戻ろうとしてたけど、無理だったみたい。当然だけど、今はローレン・クーパーと付き合ってるんだってさ。あの人、有名な実業家で、俺の倍くらい歳上なんだよ。俺、昔は「おじさん」って呼んでたんだよね。親父のビジネスパートナーだし。
親父が俺らの別れを知ったとき、あいつには近づくな、ってローレンに忠告したらしい。親父はローレンのこと、すごく大事にしてるから。ローレンはあいつのことなんて全然知らなかったから、真実を知ってめっちゃ怒ってた。
で、今じゃあ、運命があいつに何をするか決めたみたいで、戻ってきてくれって泣いてるんだよね。別れた日に、もう俺の人生に関わらないでくれって言ったじゃん? なのに、なんで俺がもうあいつのことなんか必要としてないって、わかんねえんだ?
あいつのことなんて忘れようと頭を振って、俺は自分のネイビーブルーのジャガーに意識を集中させた。なんか変だなって思ったら、車を加速させて、「U」ターンしたんだ。そしたら案の定、車が俺を追っかけてきてた。
信号が赤になって、妊婦さんが道を渡ってくるときは、マジでビビった。俺の車が向かってることに、全然気づいてないみたいだったし。
ゆっくり左に曲がろうとしたけど、もう遅かったんだ。車のコントロールを失って、湖に向かって突っ込んでいくことになった。
なんとかコントロールを取り戻そうとしたとき、後ろから何かにぶつけられて、車が道路から飛び出して、岩に激突。頭が窓枠にぶつかって、窓はもう粉々になってた。
なんとか目を開けようとしたけど、全身から力が抜けていくみたいで、真っ黒な点しか見えなくなっちまった。
*
バッと飛び起きて、目を開けた。なんてひどい事故なんだ! 信じらんねえよ、まだ生きてるなんて。「ああ、ゴッド! 頭がまだ痛い」って呻いて、おでこを擦ったら、視界がぼやけて、医者がこっちに向かってくるのが見えた。
「ブルックスさん! 大丈夫ですか? 今の気分はどうですか?」って聞いてきた。
「見りゃわかるだろ?」って俺はやつに吐き捨てた。医者なんだから、俺が今どんな気分かくらいわかるだろ。なのに、バカみたいなこと聞いて、俺をイライラさせやがって。
やつは俺の傷ついた頭を調べてたけど、ズキズキ痛むところは触らないでくれよって思ったのに、触りやがった。頭にナイフで刺されたような激痛が走って、俺は肺から悲鳴をあげた。看護師が注射して、また意識が暗闇に落ちていった。
意識が戻ったときは、痛みは少しだけ我慢できる程度だった。親父とお袋が見舞いに来たけど、誰にも会いたくなかった。少し落ち着きたかったんだ。
あの事故のことを何度も思い出した。車には一人でいたはずなのに、なぜか、すごく大事な、大切な人が一緒にいたような気がしたんだ。
でも、誰?
俺は記憶を取り戻したって言われたけど、そもそもいつ記憶を失くしたんだ?
クインとケビンが部屋に入ってきて、話しかけてきた。ああ、ゴッド! 俺を子供扱いしてやがる。
「ハリー? 誰か、ここにいると思う人、いる?」って、クソみたいな質問してきた。
「クイン! お願い、俺を一人にしてくれ。ちょっとだけスペースが欲しいんだ」って俺は頼んだ。二人とも外に出て行ったけど、俺の目はまだドアノブをちらちら見てた。まるで、誰かをそこで待ってるみたいだったんだ。
「あいつは、やったことの代償を払うことになるだろう」って拳を握りしめた。でも、なんで事故にあったとき、誰かが一緒にいたような気がするんだろう?
俺の頭の中では、まだあの時のことが鮮明に蘇る。まるで昨日起こったことみたいに。痛みはまだあるけど、もう感じないんだ。まるで、俺の心臓が誰かに持っていかれたみたいに空っぽだった。
記憶を取り戻して三日経ったけど、それ以前に何があったのか、全然覚えてないんだ。
頭の中で、車が木にぶつかる場面と、岩に激突する場面が交互に再生されるんだ。
これは幻覚? それとも、俺は二度事故にあったのか?
俺はまたあの時のことを思い出して、頭の中で聞き覚えのある声が聞こえた。「どこに行くんだ?」って、その声はパニックになってるみたいだった。
俺は彼女を守りたかった、俺の女の子を。車が木にぶつかる前に、彼女を覆いかぶさったんだ。
シーラ?
ああ、ゴッド! 彼女に何が起こったんだ? 今、どこにいるんだ? なんで俺を見舞いに来ないんだ? 彼女に何が起こるんだ?
俺は過去を思い出して、全部、本当に全部思い出した。大学の初日に、俺が誤って彼女を轢いてしまったこと、カール・パーカーという悪魔が彼女をいじめたこと、俺があいつに恋心を抱き始めたこと、そして、正体を明かす前に彼女にプロポーズしたこと。そして、トラックが俺の方に向かってくる時に、彼女がどう反応したか、まるで明日がないみたいに俺を抱きしめて、俺のプロポーズを受け入れたこと。