CHAPTER 26
エルバのPOV
デイジーはご飯食べ終わってすぐ部屋に行っちゃった。
「お皿洗い、するね」って言って、空っぽのプレートを片付け始めたんだ。
「ダメだよ、エルバ。指!」 フルールが言った。
「あ、…」って、小指に絆創膏貼ってて、水に濡らしちゃダメなの思い出した。
「指、どうしたの?」 ミゲルが聞いた。
「デイジーのご飯作ってる時に、うっかり小指切っちゃったの」 フルールが言った。
「マジで?」って聞かれて、頷いた。
「ごめんね」って、心配そうな顔で言った。
「ありがと、ミゲル」
「ちょっと見せて」って言って、小指を彼の方に差し出した。
まさか、って思ったけど、彼はそれを口に近づけて、ちゅーってしたんだ。
マジで震えた。
フルールはニヤニヤして、あたしは顔真っ赤、ミゲルはニヤけてる。
「俺のキスは魔法なんだ。小指、すぐ治るよ」って言って、みんなで笑った。
「フルール、お皿洗い、エルバとあたしは図書館行くね…エルバ、新しい小説あるんだ」って言って、あたしを引っ張って行ったから、喜んでついてった。
「小説オタク」ってフルールが後ろから叫んで、クスクス笑った。
彼は図書館のドアを開けて、あたしたちは中に入って、後ろでドアを閉めた。
あたしはスツールに座って、ミゲルはあたしの前に立って、あたしの目をじっと見てる。
「それで…小説は?」って、彼があたしを見てるせいで緊張して、聞いた。
「うーん」って、髪の毛を掻きながら言った。「正直言って、新しい小説はないんだ」って言って、あたしは目を見開いた。
「マジかよ! 期待させといて、何もないとか!」って、ちょっとムッとして言った。
「だって、先に指のこと教えてくれなかったから、ちょっとお仕置きしなきゃと思って」って言って、あたしは笑った。
「ざまぁみろ」って、楽しそうに舌出した。
「あらら…お仕置きが必要ね」って言って立ち上がって、棚から小さい棒を取って、彼の肩を軽く叩いた。
「痛い!」って叫んだ。
「痛い?」って聞いたら、全然強く叩いてないの分かってたから。
「うん」って言った。
「うっそー、ごめん」って言ったけど、彼が下唇噛んでるの見て、絶対笑いを堪えてるって分かったから、すぐさま「嘘つき!」って言って、もう一回叩いた。
「痛い!」ってまた叫んだ。
「嘘! 痛くないんでしょ!」って、また叩こうとしたら、彼は図書館の反対側に逃げちゃった。
あたしも追いかけて、また叩こうとしたけど、避けられて、結局二人で床に倒れて、大笑いした。
「湖に行こう」って言って、立ち上がった。
あたしも立ち上がって、彼の手に自分の手を重ねた…一緒に家を出て、湖に向かった。
着いたら、夜の景色が最高だった。
月が湖に明るく反射して、水がキラキラ光ってる。
あたしたちは砂の上に並んで座って、冷たい水に足をチャポンとさせた。
「エルバ」ミゲルが呼んだ。
「ん?」って答えた。
「俺、昔デイジーのこと好きだったんだ」って、突然言って、あたしはため息をついた。
「うん」って言って、水面を見てた。
「ずっと好きでいると思ってたんだけど、違ったんだ。彼女が近くにいても、もうドキドキしなくなっちゃったんだよね…でさ、彼女のこと忘れられてよかったよ。だって、俺のハートの矢印、もう別の方向向いてるから」って言った。
「マジで?」って聞いたら、相手があたしだったらいいのに、って思っちゃった。
「うん…まだ自分の気持ちを確かめてる最中だけどね」って言って、あたしは頷いて、彼の方を向いたんだけど、彼はまだ水面を見てて、あたしが振り返ったのに気づいてない。
月の光が彼の黒髪にキラキラ光ってて、その柔らかそうな髪の毛に手を伸ばしたい衝動を抑えた。
彼が突然振り向いて、あたしが見てるのに気づいた。
あたしはまた水面の方を向いて、ちょっと恥ずかしい。
「こっち向いて」って言われて、彼の方を向いた。彼の長いまつ毛が瞬いてる…神様…あたし、ヨダレ出てないよね?
あたしたちは沈黙の中でお互いを見つめ合った。
「砂の上に寝転ぼう」って言って、あたしは背中を砂につけた。
ミゲルも同じようにした。あたしたちの足は、まだ水の中。
夜風が優しく吹いてる。
「フルールが、エルバは歌うの得意だって言ってたよ。歌ってくれない?」ってミゲルが言った。
「うーん…そんなに上手くないから、期待しないでね。でも、頑張ってみる」って、照れながら言った。
「うん、いいよ」って言って、あたしの髪を撫でてくれた。
ここ数日、あたしは歌を作ってるのに気づいてて、音楽に対して特別な願望があるんだよね。あたしの過去と関係ある気がしてて。
咳払いして、歌い始めた。
愛よりもすごい気持ちがあるんだ、それが君への気持ちなんだよ
心の底から君と一緒にいたいんだ
君のそばにいる限り
最悪の悪夢さえも最高の思い出に変わるんだ
もしもずっと君のそばにいれたら
…
目を閉じたまま歌い続けて、ミゲルの指があたしの髪を撫でてるのを感じた。
歌はどんどん熱を帯びて、スムーズに口から出てくる。
あたしの声が、今この瞬間だけは完璧に聞こえるって誓える。
〜
歌い終わって、目を開けたら、ミゲルの視線があたしに釘付けになってて、びっくりした。
「うわー!言葉が出ない。歌声、マジですごいね」ってミゲルが言って、あたしはちょっと顔を赤くした。
「まあね。でも、あたしが家に帰るたびにいつも聞く声ほどじゃないけど」って言ったら、彼の顔が急に変わった。
「どうしたの?」って聞いた。
「いや、ただ、エルバがこんなに上手く歌えるってのに、まだびっくりしててさ。
もしかして、昔ミュージシャンとかだったり?」って聞いた。
「さあ、どうなんだろうね」って言って、あたしの目から涙がこぼれた。
何か思い出せるかもしれないのに。
両親は心配してるかな?
兄弟は…いるのかな?
考え続けてたら、静かに泣き出してしまって、ミゲルに泣いてるって知られたくなかった。
頭が痛み出して、フルールがやめろって言ってたのに、過去のことを思い出そうとしてるからだって分かってたけど、どうしてもやめられなかった。
「エルバ、なんで泣いてるの?」ミゲルが聞いて、親指で涙を拭ってくれた。
「なんで思い出せないんだろう…つらい」って、もっと大きな声で泣いた。
「大丈夫だよ、エルバ。よく分かるよ…ちょっと時間をおけば、きっと記憶も戻ってくるから」って、慰めるように言ってくれて、少し安心した。彼はあたしの前にひざまずいた。
「ありがと、ミゲル」
「いいんだよ、エルバ」って言った。
あたしの横に寝転ぼうとしたから、あたしは彼を掴んで、彼の目を見た。
彼がその体勢に戻ったら、今感じてる温かさが薄れて、心臓の鼓動がこんなに早くなくなって、あたしは永遠に彼の為に鼓動を刻みたいって感じがした。
彼の息があたしの首に触れて、あたしは飛び退いた。彼の顔はもうあたしのすぐ近く、唇は数センチしか離れてない。
Stapsy ❣️
…続く