第8章
ミゲルの視点
目が開いて、お腹がキューッてなった…手のひらがじっとりしてきて、体中が赤くなって、緑色の血管が浮き出てきて、お腹がめっちゃグルグル言い出した。
うう…って唸って、窓の外を見てみた。
もうジメジメした天気になっちゃって、俺の病気がまた来ちゃったんだ!
「フ..ル..ール」って、苦しそうに呼んで、また大声で唸った。
エルバの視点
お風呂に入って着替えた後、フルールと一緒にベッドに座ってた。フルールが買ってくれた青いショートガウンを着て。フルールは朝早く部屋に来て、包帯を交換してくれたり、あたしの足首を診てくれたりしたんだ。
「うわ、頭、治るの早いね」フルールがそう言って、新しい包帯を広げた。
「じゃあ、足首ね」そう言って、まだめっちゃ痛い足首の方へ。フルールは手袋をはめて、包帯を外して見てた。
「もうさなくていいよ。もっと空気に当てて、早く治さなきゃ」って言って、あたしは頷いた。
「はい、終わり」フルールはそう言って、道具を救急箱にしまった。
「フルール、ありがとう」あたしは笑顔で言った。
そしたら、フルールが突然窓の外を見て、息を呑んだ。注射器を二つ掴んで、すごい勢いで出て行った。
「フルール、どうし…」あたしが言いかけたけど、もう走って行っちゃって、あたしはびっくりしたままだった。
何があったんだろ…フルールの顔、面白くなかったし。
あたしは、フルールの後をびっこ引きながら追いかけた。ミゲルの部屋のドアが閉まるのが見えて、ああ、あそこに行ったんだって分かった。
ミゲルに何かあったら嫌だな。
もっと早く歩こうとして、足首がもっと痛くなった…
ミゲルの部屋に入ると、あたしは口をあんぐり開けた。
床に、もう誰だか分からないミゲルがいた。肌は赤くなって、緑色の血管が浮き出てて、顔色も悪くて、唇もほとんど白くなってた…
そして、フルールは息を切らしながら、注射器をミゲルの体にブスブス刺してた。
「オーマイゴッド!」あたしはショックで叫んだ。
「な、に、これ?」あたしは聞いた…まだショックで、こんなの見たら誰だってそうなるよ。
「よかった」ミゲルの体が元に戻り始めて、あんなに怖かった血管が消えて、肌の色も普通に戻ったのを見て、あたしはそう呟いた。ミゲルの目がこちらを見て、それから閉じた。
寝ちゃったんだ。
フルールが立ち上がって、あたしのとこに来た…あたしは、フルールが泣いてることに気づいてなかった。
「フルール、どうしたの?ミゲルは大丈夫?」あたしは心配して聞いた。
「それ見たら、たぶん帰りたくなると思うから、お金を少しあげるわ」フルールはそう言って、鼻をすすった。
「え、いや!」あたしは叫んだ。「あたしは、見たからって、帰ったりしないよ。あんたらは、あたしのこと何も知らないのに、あたしを受け入れてくれたんだから、ミゲルに何かあったからって、簡単に帰ったりしないよ」あたしはきっぱりと言った。
フルールはあたしを見て、すごく驚いた顔をしてた。
「ね、あたし達、仲間でしょ」あたしは付け加えた。
「マジで?」フルールは驚いて聞いた。
「うん」あたしは言った。
「リビングに行こう」フルールはそう言って、先に歩き出した。
「ちょっと待って…ミゲルは大丈夫なの?」あたしは、ミゲルのことを見て聞いた。
「うん。2時間後には」フルールはそう言って、あたし達は一緒にリビングへ行った。
あたし達はソファーに座って、お互い向き合った。
「エルバ」フルールが呼んだ。
「ん?」
「これ、どう言ったらいいか分からないんだけど、ミゲルは子供の頃から『珍しい症候群』っていう病気なんだ…それで、あの頃は街に住んでたの。
この病気は、天気が『ジメジメ』になると出るんだ。
あたし達の両親は、ミゲルを色んなお医者さんに診てもらったんだけど、みんな治す方法はないって。できることは、ミゲルの体に注射とか、何か小さなもので刺して、体に溜まった空気を減らすことだけだって…もし発作が1時間続いたら、ミゲルは息ができなくなって、し…ぬ…死ぬ。
両親はミゲルを治すために、できることは全部やったけど、何もできなかった…
それで、あたし達が高校生の時、両親は学校に行く前に、天気予報をチェックするようになったの。ミゲルは天気が『ジメジメ』の時は家にいて、あたしだけ学校に行くようになったんだ。
もちろん、他の人には秘密にしてた。もしバレたら、ミゲルは差別されちゃうから…
高校を卒業して、ミゲルは働き始めて、あたしは大学で看護を勉強してた。卒業間近に、家に帰ったら、マムが泣いてたの。
ミゲルの病気が分かってから、街を出たんだ。あたし達は差別されたし、病気がうつるって思われて、避けられた。
それで、両親ももう我慢できなくなって、田舎に引っ越して、ここで暮らし始めたんだ…実は、両親は、この家を買って、リフォームしてから引っ越してきたんだよ。
あたしが大学の卒業証書を持ってるおかげで、ここで看護師として働けてるの。
弟は、病気がいつ出るか分からないから働けないし、また差別されるのは嫌だったから。
両親は、1年前に交通事故で亡くなったから、あんたらが一緒に暮らしてるのを見たんだよ。
ジメジメした天気は、もうそんなに頻繁には来ないんだ。月に2、3回くらい。
ミゲルには、両親が亡くなった後、一緒に住んでた彼女がいたんだけど、ミゲルの病気のことを知って、出て行ったんだ。しかも、出て行っただけじゃなくて、大金巻き上げて…ミゲルの心をすごく傷つけたんだ。
それで、あたしが、ミゲルの病気のことを知っても、一緒にいるって言ってくれたから、すごくびっくりしたの。一緒にいてくれて、嬉しいわ。
エルバ、本当にありがとう」フルールはそう言って、あたしをハグした。あたしは涙を拭いた…自分が泣いてたことにも気づいてなかった…
あたし達は、本当に色んなことを経験してきたんだ…あたしはフルールを抱きしめ返して、フルールはあたしの肩で泣いた…
突然電話が鳴って、あたし達は抱擁を解いた。フルールが電話を取りに行って、耳に当てた。
「うん…すぐ行くわ」そう言って、電話を切った。
「エルバ、今から病院に行かなきゃいけないの。緊急の患者さんがいるから」フルールはそう言った。「着替えなきゃ」フルールは自分の部屋に急いで行った…
数分後、茶色のブラウスに白いカーキパンツ、黒いショルダーバッグを持って出てきた。
「エルバ、ミゲルはもうすぐ起きると思うから、あたしが緊急の患者さんのとこに行ってるって伝えといてね。またね」そう言って、フルールは急いで出て行った。
あたしはソファーに座って、色んな考えが頭の中を駆け巡った。
背後で何かの動きが聞こえて、振り返った。
ミゲル…元気そう。
「ミゲル」あたしは呼んだ。
「もう俺のこと、一緒にいたくないんだろ。さっきはびっくりさせちゃったし。だから、キッチンからグラス一杯の水をもらって、出ていくよ」ミゲルはそう言った。
「いや、一緒にいたい。うん、びっくりしたけど、全部分かったよ。フルールが全部話してくれたし、話してくれなくても、あんたを避けなきゃいけない理由なんてないよ。
だって、あんたらはあたしが困ってた時に助けてくれたのに、病気のせいで出ていくなんて、そんなことできないよ。それも、うつるわけじゃないしね」あたしは言った…
あたしはびっこを引きながら、ミゲルの立っているところまで行った。
ミゲルは、フルールと同じくらい驚いた顔をしてた。
「ミゲル、あたし達は、これからも一緒にいるよ。何も変わらないから」あたしは言って、涙がミゲルの頬を伝うのが見えた。
「ありがとう、エルバ」ミゲルはそう言って、あたしは微笑んで、ミゲルを慰めるように抱きしめた。
どうしてか分からないけど…あたしはミゲルに対して、心が温かくなるのを感じた。
TBC…