チャプター49
モーガンとあたし、2人でステージを降りたんだ。あいつ、あんなこと言ってくれてマジ嬉しかったよ。事前にスピーチ読ませなかったのも、結果オーライだったかも。感動をぶち壊すところだったし。で、スピーチも終わったし、いよいよ本番って感じ。トビーはトイレ行ってくるとか言って、あたし1人に任せてくれた。ありがたい。あいつが何か聞いてきても、言い訳しなくて済むし。
あたしは人混みをかき分けて進んでいく。たまに誰かが話しかけてくるけど、笑顔で愛想よくしとく。でも、頭の中は家族のことばっかり。1回目のボールルーム一周が終わったあたりで、視線が外のパティオのドアに向かう。チラッと見たら、ジャスミンがあたしにめっちゃ手を振ってる。あれ、見つけたっぽい。モーガンの方見たら、まだステージのそばに立ってて、あたしと目が合った瞬間、もうどこに行くか分かったみたい。軽く頷いてニヤけてるから、ドアに向かって歩き出した。ちょっと演技っぽく、誰か付いてきてないかみたいにチラチラ後ろを気にしたりして。ドアに着くと、ジャスミンが振り返って、道の奥に走り出した。一体どんなゲームしてんだよ!
ドアを開けると、風がビューって髪をめちゃくちゃにする。ジャスミンはもうすぐ先の生け垣のそばにいて、ニヤケながら隙間を駆け抜けていく。もし、これが公式のミッションじゃなかったら、とっくに追いかけるの諦めてたわ。ため息ついて、あたしも走り出して、生け垣の隙間をくぐり抜ける。反対側に出ると、家族全員がそこに立ってて、笑顔で出迎えてくれた。目の前にはお父さんが立ってて、腕組みしてあたしを見てる。
「うちのテイラー、よくやったな」お父さんが笑うから、あたしは出口の目の前で止まった。みんなは飾り用の生け垣の開いたところに隠れてた。「もう、すっかり大人になったな」あたしは両手を後ろに回して、感情を表に出さないようにする。「すごい成長ぶりだ」
「10年以上も経ったんだね」あたしは曖昧な返事をして、本当の感情は隠した。さっさと終わらせて、次に行かなきゃ。「まさか、今夜来れると思ってなかった」風が強くなってきたのが聞こえる。まだこの生け垣に守られてるけど、生け垣って言いすぎだよね!
「どうしても来たかったんだ。お前のためだし、こんなすごい瞬間、見逃すわけにはいかないだろ」お父さんが笑う。あたしはただ頷いて、床を見た。感情を出さないって難しいよ!「お前がこんな素敵な女性に成長する姿を、見てみたかったんだ。スピーチしてた男も、お前のこと褒めてたぞ」モーガンのことだ。スピーチの時、みんなのこと探したんだけど、全然見つけられなかったんだよね。どこに隠れてたんだ?
「モーガンは、アライアンスに来てから、お父さんみたいな存在なんだ」あたしは、彼らに向けて壁を作るように話す。集中しなきゃ!
「テイラー、お前が何考えてるか、分かってるぞ」お父さんがニヤけてるから、あたしは顔を上げた。まさか、全部バレてる?「あたし達とのアイコンタクトを避けてるだろ。返事も短くて曖昧だし。そんなに自分を閉じ込める必要はないんだ。あたし達は家族だろ?」またニヤケてる。ちょっと動揺しちゃう。まあ、逮捕計画に気付かれてないのは嬉しいけど、あたしの行動については、あながち間違ってないんだよな。
「10年以上経ったけど、あたし達家族のお前への愛は、少しも変わってないんだ。立派なエージェントとして自分の人生を築いてるお前も、まだ小さい頃みたいに森で遊んでたあたしの娘だし、夕食の準備ができるって聞いたら、すぐに家の中に駆け込んでくる子なんだ」そう言って、お父さんはあたしの方に近づいてくる。あたしの目は床を見て、涙が溜まっていく。「どんな大人とも、話が止まらない子で、何の話をしてるか分からなくても、相手に嫌な思いをさせたくなくて、ずっと座って話を聞いてた。それが終わるまでね。そんなお前が、将来どんな素敵な女性になるか、その時分かったんだ」お父さんは、あたしの目の前に立って、続ける。もう、テイラー!感情の壁は壊しちゃダメ!この人が何してきたか、思い出して!
「あたしは、もう子供じゃない」あたしはそう言うだけで、まだお父さんや、数フィート先にいる家族の顔も見れない。
「違うな、でも心の底では、まだ子供のままだって分かってるよ。あたしを見て」って言われて、あたしは首を振る。もう、感情の壁は完全に崩壊しそうだけど、あたしはここに立って、お父さんのことを見ないでいられるかな?
深呼吸をして、顔を上げると、彼の目を見て、すぐに涙が溢れ出てきた。お父さんはあたしを抱きしめて、強く抱きしめてくる。あたしは抱きしめ返すこともできず、ただそこに立っていた。
「お前は、お前のままだ。だから、あたし達がどうやってこの家族のビジネスをやってるのか、きっと喜んでくれると思うんだ。リチャードみたいな奴らに、二度とお前を傷つけさせないためなんだ」抱きしめながら、そう言われて、あたしの中で何かがプツンと切れた。一体、何やってんだあたしは?この人に抱きしめられてるって…?
あたしは彼の腕を振りほどいて、強く突き飛ばした。彼も家族も、完全に驚いた顔をしてた。みんなの顔には、ただただショックと驚きがあった。
「まさか、あたしのこと、全然分かってなかったんだね。7歳のあたしが、犯罪組織を作りたいと思ってたと思ってたの?いつも、どうしてこのグループを始めたのか聞かれると、あたしのこととか、あたしが望んでたこととか、そういう話をするよね!実際は、お父さんがもっと良くなりたい、良い人に見られたかったからでしょ!」あたしはそう叫んで、彼を指差した。彼は首を振って、あたしに近づこうとしてる。
「あたしの知ってるお父さんとは全然違う。あたしの知ってるお父さんなら、こんなグループ、絶対作らなかった。だって、良い人だったから。一体、何に変わっちゃったのか、あたしには分からない」あたしは、正直に言って冷静さを失ってしまった。彼が言ってたこととか、最近聞いたこととかが、本当に堪えたんだ。
「トラウマのせいで、こんな風になっちまったんだ!お前には分からないだろうけど、この家族は色んな酷い目に遭ってきたんだぞ!」って、彼は怒鳴り返してくる。あたしはもう限界で、完全にキレてた。
「あんたが酷い目に遭ったって?あんた達はみんな、あたしに起きたことのせいで、苦しみや怒りをぶつけてるんだ!7歳の時に、追いかけられて襲われたのはあたし!何もかも奪われて、知らない人達がいる場所に連れて行かれたのもあたし!あたしが、経験したトラウマを、何とかしなきゃいけなかったのもあたしだった。でも、あたしは、その苦しみを乗り越えて、良い方法で解決することにした。リチャードみたいな奴とか、あんた達みたいな奴らを止めるってね!」あたしは叫んで、あたしが入ってきたドアが開くのが聞こえた。モーガンとチームは、あたしの叫び声を聞いて、助けに来てくれたんだ。「だから、あたしは、この瞬間を楽しんでやる」あたしはニヤリとして、ドレスの下から銃を取り出し、みんなの驚いた顔の前で掲げた。
「手を上げろ!」あたしが叫ぶと、モーガン、ブランドン、ジュリアンが生け垣を飛び越えて、銃を構えて入ってきた。お父さんはあたしの目を見て、悲しそうな顔をしてる。
「だから、あたし達を呼んだんだな」って、彼は悲しそうに言う。あたしはニヤリとして、彼を真っ直ぐに見返す。
「やっと、何か当たったね」あたしはモーガンを見て、彼に戻ってニヤリとした。家族全員が、トラビスの指示を待って立っていた。
「娘さんのために正しいことをしたいなら、手を上げてください」モーガンがそう言って、一歩近づく。お父さんは、あたしをもう一度見てから、モーガンの言う通りにした。他の家族もそれに続いた。
「テイラー、これはお前のためだ。今度は、あたしを父親のように扱ってくれると嬉しいな」ブランドンが、手錠を持って彼の後ろに立つ。もっとエージェントが、騒ぎを聞きつけて飛び込んできた。もう生け垣なんて存在しなかった。「すみません、もうその場所は埋まっちゃいました」あたしは銃を下ろして、モーガンのところへ歩いていく。お父さんは、あたしを拘束しようとするエージェント達と、必死に抵抗してる。
「大丈夫?」モーガンが、ベルトに銃を戻しながら聞いてきた。あたしはお父さんのことを見て、頷いた。
「いつもの仕事って感じ?」あしはニヤリとしたけど、一筋の涙が頬を伝った。モーガンは、あたしを抱きしめてくれた。