第20章
みんな見上げて、僕らを見下ろしてるビビってる男。あいつ、縁に立ちたくないんだなってわかるよね。なんか、階段駆け上がって助けてあげなきゃ!って気分になったんだけど、トビーがそんなこと許すわけないってのもわかってた。
モーガンの方見たら、まるで僕のこと全部お見通しって顔してる。
「モーガン、助けてあげなきゃ。妹さんに約束したんだ」って言って、一番下の段に足かけた。モーガンがダメって言っても、多分僕、行っちゃうだろうけど。
「わかってるよ。お前が何言ってもやるってことは。でも、気をつけろよ」って、僕の肩に手を置いてきた。でも、彼の目を見たら、どれだけ心配してるか伝わってきたよ。
トビーの方見たら、背中を向けて、パックの仲間と話してる。今しかない!って思った。あいつを屋根の上からほっとけないし。チャンスだ!って、パックハウスの階段を駆け上がった。この建物に入るの、二回目なんだよね。一回目は、ライリーと一緒にルーカスにインタビューしに行った時。
ロビーを突っ切って階段に向かいながら、そこにいた人たちに早く外に出ろ!って叫んだ。二階に着いたら、周りの様子をキョロキョロ。屋根に行く方法を探さないと。窓から飛び出して、屋根に行くしかないかな。そしたら、誰かが自分の部屋から出てきて、階段に向かって歩いてるの。僕の目に止まったんだ。
「すみません、屋根に行く道ってありますか?」って声をかけた。彼は僕の前を通り過ぎようとしたんだけど、僕が話しかけたら、階段のところに止まったんだ。
「ああ、あの廊下の突き当たりに窓があるから、そこから行けるよ」って言って、四つある廊下の一つを指さした。ラッキーだった。別のとこ行こうとしてたんだよね。
「ありがとう、早く安全なところに!」って笑顔で言って、廊下を走り出した。「いつになったら、こういうの違和感なくなるんだろ?」って心の中でつぶやきながら、廊下の突き当たりに着いた。見上げたら、さっきのやつが言ってた窓が空いてる。
梯子とかは見当たらなかったから、登るしかないんだよね。ありがたいことに、両側に本棚があった。僕の体重に耐えられるといいんだけど。足を一番上の本棚に乗せて、梯子みたいに登り始めた。一番上まで行ったら、反対側の本棚に片足かけて、空中で大の字みたいになったんだ。
腕を伸ばして、窓の両側に手をかけて、自分を引き上げ始めた。上腕二頭筋が強くてよかった。なんとか窓から抜け出して、外に出たら、目の前に屋根の端に立ってるやつがいるんだ。
「そこにいるのはわかってるよ、ルナ」って、振り返りもせずに言った。びっくりさせなくてよかった。変にビビらせて、屋根から落ちちゃったら大変だし。
「だったら、私があなたをこの屋根から助けに来たってこともわかるでしょ」って言って、ゆっくりと彼に近づいていった。でも彼は動かない。髪だけが風になびいてる。
「そんなことできないよ、これから起こること考えたら」って、自分の足元を見ながらため息をついた。そうか、彼がここに爆弾を仕掛けた張本人だったんだ。間違いない。
「もちろんできるよ。そして、やらなくてもいいんだよ。考えを変えて、私と一緒に降りればいい」って言いながら、さらに近づいた。そしたら、地上にいる人たちが見えてきた。まるでアリみたい。
「わかってないんだな!あいつは、僕にやらせないわけにはいかないんだよ。やらなかったら、僕と家族が傷つけられるんだ!」って、彼は少し動いたから、僕は固まった。これ以上近づいたら、飛び降りかねないから。
「ヘンリー、リチャードのことなら、ほぼ人生ずっと見てきた私から言わせて。あいつは本当に予測不能で、めちゃくちゃ悪いやつ。でも、お前を脅威だとは思ってないんだよ。あいつが狙うのは、あいつを脅かすやつだけなんだ。お前と家族は、みんなに守られるはずだよ。もし、あいつの言う通りにしなかったら」って、僕が言った。うまくいくといいんだけど。彼は首を振って、ゆっくりと一歩、縁に近づいていく。「そんなことしても、家族のためにはならないよ。こんなことしたら、もっとつらい思いをさせるだけなんだ。それに、家族は、お前のことすごく大切に思ってるんだよ。妹のアシュリーだってさ」って、また彼に近づいた。もうすぐ縁だって時に、トビーが見えたんだ。僕に気づいてない。
「アシュリーが何だって言うんだ?あいつはただのガキだろ?」って、少し頭を傾けて僕を見た。少しは僕の言葉が響いてるみたい。
「アシュリーは、これから何が起きるか私たちに教えてくれたんだ。そうだよ、彼女はまだガキなんだ。お前がこれからやろうとしてること、経験する必要なんてないんだよ。もし、お前がこんなことして、それを実行したら、お前の家族は、このパックのみんなから見捨てられることになる。中には、そうするつもりなくても、みんなから、人生を壊した男の家族って見られちゃうんだ。そんなの、絶対お前の家族に経験させたくないだろ?」って聞いたら、トビーがようやく僕たちを見て、びっくりした顔でパックハウスに向かって走り出した。もうすぐここに来る。
「でも、降りたら、アルファとかパックの連中が僕を殺すんだ」って、泣きながら僕を見た。僕は首を振って、さらに近づいた。
「私がアルファと話すよ。これはお前のせいじゃないって、わかってもらうから。妹さんにも約束したし、お前にも約束する。どんなことでも助けるよ。とにかく、この屋根から降りてくれ」って言ったら、トビーが窓から飛び込んできて、屋根に着地した。「お前、彼を傷つけたりしないよな?」ってトビーに聞いた。トビーの目は、僕とヘンリーを交互に見ている。僕に協力してほしいんだけど。
「もちろん、そんなことしないよ。こんなことになっても、お前はまだパックの仲間なんだ。どんなことでも助けるよ」って言ってくれた。本当に、今、言ってほしいことを言ってくれた。「もし、お前がこんなことしたら、家族からお前を奪うだけじゃなくて、この場所を奪うことになるんだ。ルナも奪うことになる。だって、僕は彼女のこと知ってるし、彼女は、お前なしじゃ、この屋根から降りるはずがないから。だから、降りて助けてもらうか、それとも、ここにいて、パックからルナとアルファを奪うか、どっちかだ。僕は、彼女なしじゃ、この屋根から降りるつもりはないからな」って言ったら、ヘンリーは完全に僕たちの方を見て、僕とトビーの間を見て、涙が止まらなくなってる。
「助けてくれ。リチャードは、たくさんの人を傷つけてきたし、これからも傷つけようとしてる。お前なら、それを止められるんだ」って言って、手を差し出した。彼は地面をもう一度見てから、僕の手を見た。「正しいことをしろよ、ヘンリー」って言ったら、爆弾処理班が到着した。思ってたより時間かかった。
ヘンリーはうなずいて、僕の手を握った。僕はすぐに彼を縁から引き離して、抱きしめた。彼は、とめどなく泣いて、僕を強く抱きしめた。
「ごめん」って彼は泣きながら言った。僕は彼を強く抱きしめて、大丈夫だよって言ったんだ。