第11章
オニカの視点.....
アレックス、やっと元気になってきた。この数日、マジで地獄だったんだから。2日も寝れなかったし。でも、アレックスの手術が成功したって分かったら、胸の重みが取れた気がしたんだよね。それでも、アレックスのこととか、上司とのことで、まだ落ち着かないんだけど。毎日、あいつと顔を合わせるの、どうしたらいいんだろ…それに、彼への借金を返すために、あと1年もこの会社に縛り付けられてるってのも、マジでキツいし。
本当は認めたくないけど、一番心が落ち着くのは、アウグスティンとの楽しい日々を思い出すことなんだよね。あいつが、あんなモンスターだって知らなかった頃のこと。
.
.
面接に間に合うように、ありったけのスピードで車を飛ばした。もう30分も遅刻してるし。ああ、なんで今日に限って、あんなバカに会わなきゃいけないんだよ。
どうしてもこの仕事が欲しいんだ。こんなに頑張って、寝ずに勉強して、やっとここまで来たのに、絶対諦めたくない。
車を停めて、足が動く限り、受付に向かって走った。
「すみません、コウリン・オニカです。面接で…」
「ああ、オニカさんですね。どこに行ってたのかと思ってましたよ。遅刻ですよ、ミス…」
「はい、すみません。渋滞に巻き込まれちゃって」
「まあ、運がいいですね。うちのCEO、アウグスティンさんも、珍しく遅刻されてますよ」
ふう! ほっと一息ついて、他の面接者たちの隣に立った。全部で5人。みんな、すごく上品で高級感があって、当然、このレベルに達するだけの実力があるんだろうな。私、絶対に厳しい戦いになるって分かってる。普段はすごく自信があるんだけど、今は、いつ割れるか分からないクルミみたい。
私も、そんなに資格がないわけじゃないけど、経験不足が最大の弱点なんだよね。
10分くらい経って、声が聞こえた。「社長がいらっしゃいました」
みんな、棒みたいに固まった。物音一つしない。
それから、受付の人が説明を始めた。
「皆さんには、トークンとキーカードをお渡しします。トークンは面接の順番を示すもので、キーカードは、エレベーター2番の前にいる警備員に見せてください。何か質問はありますか?」 単調な声で言った。
'いやー、ちょっと聞きたいんだけど、あいつ、社長なの?っていうか、こんなに厳重な警備、もう十分守られてる建物なのに、何が必要なんだよ。' でも、もちろん、口を噤んだ。面接が始まる前に終わっちゃうのは嫌だし。
誰も何も言わないので、受付の人は続けた。
「それでは、皆さんの健闘を祈ります。そして、アドバイスです。聞かれたことだけ答え、自信を持って、アマチュアみたいにどもらないでください。そして、ここにいる女性の皆さん、もし、色仕掛けが通用すると思ってるなら、考えが甘いです。要するに、一歩間違えれば、あなたは追い出されます」
マジでクソだわ。何それ、誰が面接中に色仕掛けするんだよ。
面接が始まり、私は最後の順番だった。長い待ち時間になるだろうと思って、余計に不安だったんだけど、驚いたことに、10分も経たないうちに、3人の面接が終わった。中で何が起こってるんだ?本当に面接してるのか?それとも、顔を見ただけで追い出してるのか?3人に10分って、短すぎるだろ。せめて30分は与えるべきだろ。
あいつは、このレベルに達するのにどれだけ努力が必要か分かってるのか?それに、出てくる人は、みんな幽霊でも見たような顔をしてるし。最初の女の子は、マスカラが頬に細く流れてて、もう一人は、目が充血してる。
私の思考は、名前が呼ばれて途切れた。
「5番、コウリン・オニカさん。アウグスティン社長がお待ちです」
ああ、神様、助けて!
エレベーター2番に向かって歩いた。そこに立っていた警備員は、私のキーカードを受け取って、番号とコードを確認し、エレベーターに向かうように指示した。3分後、ついに、デ・ルカ・コーポレーションのCEO、アウグスティン・デ・ルカ社長のドアの前に立っていた。
勇気を振り絞って、ドアをノックした。
「入れ」 あいつの威圧的な声が聞こえて、私の自信は少し萎縮したけど、それでも深呼吸して、ドアノブを回して彼のキャビンに入った。
キャビンは、控えめに言っても美しい。インテリアは、かなり高そう。部屋を見回した後、私の視線は、私の未来を手にしている、エレガントなアルマーニのスーツを着た、マスターチェアに座っている男に集中した。
彼の顔は、ラップトップで部分的に隠れていた。よく整えられた茶色の髪と、鋭い顎のラインが横から見えた。彼は、私に漠然とした親近感を与えた。
それから、楽しそうな、聞き覚えのある声が私に挨拶した。「見終わったら、向かいの席に座ってください。僕はそんなに暇じゃないんだ」
私は顔を上げて、ヘーゼルの瞳が、私の青い瞳を面白そうに見つめているのを見た。突然、雷雨のように、現実が私を襲った。
ああ、なんてことだ! 私はライオンの巣に入ってしまったのか? 私は地獄行きだ。
「繰り返すのは嫌いなんだ。座れって言ったんだ、ミス・オニカ」
そして、迷子の犬のように、私は彼の命令に従った。
彼は私の履歴書を読んでいた。ホッとした。つまり、まだチャンスはあるってこと? あいつが、私だってことに気づいてないってこともありえる? でも、私の白昼夢はすぐに終わった。彼が私の目をまっすぐ見た時。私は今にも泣き出しそうな顔をしてるんだろう。彼の深いヘーゼルの目は、楽しさに満ちていて、唇は、笑いをこらえきれないようにピクピクしている。そして、私は彼が知っていることを悟った。
なんで地面が開いて、私を飲み込んでくれないんだ? マジでクソみたいな一言だったのに。なんで、先に彼に行かせなかったんだ? なんで、私は自分の未来をあんなくだらない一言で台無しにするほどバカなんだ? 今、どうすればいいんだ? 頼むべき? それは有効? ああ、今日、私がやったことの後で、彼は私を許してくれないだろうな。この仕事を得るチャンスはあるのか? ああ、冗談でしょ、今は、彼が私をこの州から追放しないように祈るべきかな? それとも、彼が私を殺すかどうか心配するべきかな? ダメだ、ダメだ、こんなことになんてさせられない。必要なら頼むけど、彼のせいで私のキャリアが台無しになるのは許せない。
「それで、ミス・オニカ…」 彼が何か言う前に、私はまるで自分の命がかかってるかのようにまくし立て始めた。
「本当にすみません、社長。ガソリンスタンドで言ったことは、本気じゃないんです。あなたは、病気じゃな…」 クソッ、なんで黙ってられないんだ。私、マジで終わった。なんで、そんなこと思い出させちゃったんだよ。ああ、神様、私、死にたいんだ。それ以外に何がある?
「あの、忘れてください…私…私…」 今、私がまき散らしたクソを片付けたかったけど、何も言葉が出てこなくて、ただ魚みたいに口を開けてるだけだった。
「もういいか?」
「あなたの履歴書を見ていたところです。あなたの資格はいいですが、職務経験が不足していて…」
「はい、あの…」
「話せって言ったか? 受付の人が、許可なしに話すなって忠告したんじゃないのか。邪魔しないでください。分かりましたね」
「はい、社長。すみません」 それだけしか言えなかったけど、彼にイライラした顔を見せる前にね。
「それで、私が言っていたように、あなたは経験不足ですが、チャンスをあげたいと思います。それで、ミス・オニカ、あなたは採用です」
「えっ?!」 彼が言ったことが聞こえたのか? 私は目を大きく見開いて彼を見た。彼は、傲慢な笑顔を私に向けて言った。「聞こえた通りだ」
一瞬、私は天にも昇るような気分だったけど、待て待て待て。いやいや、私は良いバイブを感じてないんだ。私は彼を睨みつけ、まくしたてた。「何が目的なんですか?」
彼は片方の眉を上げて、顔から楽しそうな表情を消すことなく言った。「普通、誰かに『採用だ』って言うと、感謝して、がっかりさせませんとか、そういうたわごと言ってくるもんだろ? これは新しいな」
「もう、冗談はやめてくださいよ。もちろん、私をからかってるんでしょ。コーヒーに砂糖を入れすぎなかっただけで、スタッフをクビにするって噂も聞いたことあるのに、今、私と喧嘩した後に、採用だって。まるで、何事もなかったかのように。何か裏があるんでしょ?」
「オッケー…じゃあ、はっきりさせよう。僕とまた喧嘩するのと、この仕事を受け入れるのと、どっちがいい?それなら僕は喜んで。選択は君次第だ。どうする?」
ああ、こんなチャンスを逃すわけにはいかない。それが何であれ、私は挑戦する準備ができてる。私は、これを手に入れるために、すごく頑張ったんだから。だから、私はためらわずに答えた。「仕事にします」
「いい判断だ。すごくいい。じゃあ、秘書に辞令を渡すように言っておこう。明日の朝8時に、ここに来てください。遅刻する人は嫌いなんだ。もう行っていいよ。また明日」
「ありがとうございます、社長」 そう言って、私は顔に大きな笑顔を貼り付けて、彼のオフィスを後にした。
.
.
.
突然の騒ぎで目が覚めて、もう朝だってことに気づいた。今日から仕事を再開しなきゃいけないんだ。行きたくないけど、行かないといけないんだ。もうずいぶん遅らせたし。それに、アレックスはもう大丈夫だし。彼のベビーシッターが面倒を見てくれる。でも、なんでだか、オフィスに行くことにネガティブなバイブを感じるんだよね。考えすぎてるだけかもしれないし、アレックスを置いて行きたくないからかもしれないけど、とにかく、私の人生がこれ以上悪くなることなんてありえないし。
そう思って、私はオフィスに出発した。
~~~~~~~~~~~~