第十四章
次の日、あたしはベッドで目が覚めた。どうしてここにいるんだろ?家に帰った記憶がないんだよね。セオドアのにおいがする。服をくんくんしてみたら、ほんのりセオドアのにおいがする。きっと、あたしを運んでくれたんだ。お風呂に行こうと思って床に足をつけたら、腕が燃えるように熱くなってきた。止まらなくて、どんどんひどくなっていく。全身が燃えているみたい。こんなことってあるんだ。あたしは、こんなことにならないようにって祈ってたのに、セオドアがあたしをマークするのを拒否するから、こんなことになってるんだ。床に倒れ込んで、この燃えるような感覚を止めたくて、自分の肌を剥がそうとしてみた。どこもかしこも燃えてるみたい。腕も、足も、心臓までもが燃えている。痛みが秒ごとに増していくから、あたしは叫んだ。生きたまま焼かれて死ぬような感じだけど、あたしは死なないで、ずっと燃え続けている。
「セオドア、お願い、なんとかして、消して」あたしのメイトが部屋に飛び込んできたとき、あたしはそう言った。あたしの叫び声を聞いたに違いない。彼はあたしをじっと見つめるだけ。また恐ろしい叫び声が口から漏れるまで、彼は動かなかった。彼はあたしに一歩近づいたけど、止まって、部屋から出て行った。
セオドアがあたしをメイトとして見ていないのはわかってたけど、今のあたしをこんな状態で放置するなんて、ありえないでしょ。彼が出て行ってから数分後、クロエとシャーロットがやってきた。
「どれくらいひどいの?」シャーロットが心配そうに尋ねた。
「ひどいよ、シャーロット、本当にひどい」あたしは顔を涙で濡らしながら言った。涙が顔をもっと燃えさせる。だって、何かが体に触れると、その熱で燃えるんだから。焼けただれた皮膚に熱湯をかけるような感じ。
「あたしを抱えてお風呂場に運んで」シャーロットがクロエに言った。
「触っても大丈夫なの?」クロエは目に涙を浮かべながら言った。
「そうね、無理だね。できるのはセオドアだけ。早く彼を呼んで」
「わかった」クロエはそう言って部屋から走り出した。
少しして、セオドアを連れて戻ってきた。
あたしは彼を見て、なんとかしてくれって目で訴えた。あたしの苦しみを終わらせることができるのは、彼だけなんだから。彼はあたしと目を合わせようとせず、抱き上げてくれるときもあたしの目を見ようとしない。体が彼の手に触れた瞬間、焼けるような感覚が少しだけ和らいだ。彼はあたしを浴槽に入れようとしたけど、拒否した。だって、彼が手を離したら、その触れ合いは消えてしまう。あたしは彼の触れ合いが必要なんだ。あたしの作戦はうまくいかなかった。セオドアはあたしの体を乱暴に剥がして、少しきつめに浴槽に入れた。
シャーロットは氷を持って走り込み、浴槽を氷で満たした。氷は熱を少し和らげてくれたけど、メイトの触れ合いほど効果はない。
「お願い、抱きしめて、セオドア、ただ抱きしめて。マークしてくれなんて言ってない。ただ抱きしめてほしいの」あたしは彼が部屋から出て行く前に、彼の腕を掴んで言った。
彼はいつもみたいに、あたしを無視して、お風呂場から出て行った。セオドアがあたしを抱きしめてくれないなんて信じられない。こんなに苦しんでいるのに。あたしをメイトとして欲しくないだけじゃないんだと思う。あたしは、彼はあたしを嫌ってるんじゃないかって思い始めてる。あたしも彼が嫌い。だって、もしあたしが今経験していることを、敵が経験していたとしても、あたしは助けてあげてると思うから。あたしが感じている痛みはひどすぎる。さらに悪いことに、彼はあたしの痛みを感じることができるんだ。だって、彼が部屋にいれば、あたしの痛みを感じることができるのに、それでもあたしを無視するんだから。
ヒートが始まってから一週間が経った。ヒートの3日間を生き延びることができたのは、シャーロットとクロエのおかげ。彼女たちは、浴槽の水が温くならないようにしてくれた。あたしは彼女たちに迷惑をかけたことを悪く思ったけど、彼女たちは友達ってそういうものだよって言ってくれた。あたしは、彼女たちがいてくれて本当にラッキーだ。
あたしはシャーロットと庭にいて、今、色々考えているんだ。ヒートの間にセオドアがあたしを扱ったときの痛みはまだ鮮明に脳裏に焼き付いているけど、あることに気づかされた。セオドアはあたしを嫌っていて、あたしと一緒にいたくないんだ。だから、あたしは彼を捨てることにした。今度は、彼に見つからないようにる。どうやって彼から逃げるか、どうやって彼が二度と見つけられないようにするかはわからない。ただ、もうここにいたくないってことだけはわかってる。
「アナ、何考えてるの?」シャーロットが、あたしの顔の前で手を振って尋ねた。
「何でもないよ」あたしは、彼女が本気で何にも考えていないように思えるように、微笑んだ。
「そっか。お腹すいてる?サンドイッチ作ってあげようか。食べる?」シャーロットが立ち上がって言った。
「うん、お腹すいた。お願い」あたしは野菜畑の近くのベンチから立ち上がった。
あたしたちは彼女の家に入り、彼女がサンドイッチを作っている間、あたしはさっき考えていたことに関連する質問をした。
「シャーロット、王様があたしを嫌ってる理由ってわかる?」
「嫌ってるって?王様があなを嫌ってるなんて思わないけど」
「もし嫌ってないなら、なんでこんな風に扱われるの?」
「わからないけど、嫌ってるわけじゃないと思うよ」
「あたしはそう思うんだ。なんでそうなるのか知りたい」
「王様があなをメイトのように扱ってくれないのは知ってるけど、嫌いだからってわけじゃないと思うよ」
「王様があたしに与えてきた痛みから、そう思わざるを得ない」
「うーん、そうじゃないといいね」
「あたしもそうだけど、たぶん違うと思う」
家に帰る途中、あたしの頭の中で誰かの声が聞こえた。
「どこにいるんだ?」その人は言った。
「誰?」あたしは聞き返した。ここに来てから、マインドリンクで話しかけてくる人なんていなかったんだから。
「俺のオフィスに来て、何をしてるにしろ、やめて」彼はそう言うと、通信を遮断した。
こんな風に話しかけてくる人なんて、この世界に一人しかいない。あたしは、進路を変えてセオドアのオフィスに向かった。入る前にドアをノックした。
「座れ」あたしが入るとすぐに、彼はいつもの厳しい口調で言った。
「どうも」あたしは心の中でつぶやいた。
「聞こえてるぞ。生意気な口きくな」
「わかった」あたしはそう言って、口を閉じた。なんであたしを呼んだんだろ?
ヒート期間以来、顔を合わせるのも話すのも初めてで、最初に言われたことがこんなにきつい口調なんだから。あたしを嫌ってるって思わないようにってお願いしたい。
「使いすぎないように」彼はそう言って、あたしの前に黒いクレジットカードを置いた。
「なんでこれを?」
「会議に出るなら、オフィスで一日中待ってるんじゃなくて、もっとちゃんとした格好をするんだ」
「家にいたくてもいい?前みたいに」あたしは彼と一緒に一日中過ごしたくない。毎日がどれだけひどくなるか想像できる。彼に会わなくても、すでに地獄なのに、24時間365日一緒にいたら、どんなことになるんだろ。
「ダメ」
お願いしようとしたとき、あるアイデアが頭に浮かんだ。
「わかった。じゃあ、いつ買い物に行けるの?」
「明日」
「了解。あと聞きたいんだけど、昔のアルファからお母さんのこと、何か連絡あった?」
「ない」
「お願い、何かあったら、遠慮なく教えて」
「できない」
「できない?」あたしは、彼の言葉が理解できなくて繰り返した。
「お前の母親のことは、お前がどれだけ気にしてるか知ってるから、連絡があったらすぐに教えるから、遠慮はできないんだ」
「へえ」あたしは、彼の返事に少し驚いた。彼がそんなことを言うとは思ってなかったんだ。
「それだけなら、出て行ってもいいぞ」
「バイバイ」あたしはそう言って、椅子から立ち上がり、出て行こうとした。オフィスを出る前に、彼のテーブルからクレジットカードを拾った。
初めて、あたしはメイトから笑顔で離れた。あたしが笑顔だったのは、彼がくれたクレジットカードのため。彼がこのカードを渡したのが、最大の過ちだってことに気づいてないだけなんだから。
次の日、シャーロット、クロエ、あたしはモールに向かった。何時間も買い物してる。ちょっと休憩して、何か食べようってことになった。あたしは彼女たちに断って、トイレに行った。いや、そう言っただけ。あたしはすぐにAT&Tに行って、SIMと電話を買った。
セオドアがブラックカードをくれたのはよかった。今日買った服の量からしたら、とっくにカードの限度額に達してたはず。あたしはわざと高いものを買ったんだ。だって、セオドアに仕返しできる唯一の方法なんだから。彼を殴ることも、戦うこともできないから、彼の金を使い果たすしかない。あたしが買った服で、彼の金がなくなるわけじゃないけど、それでも彼の金を贅沢に使うのは気分がいい。今日どれだけ使ったか、彼が激怒してくれるといいんだけど。
店の店員が電話の設定を終えたら、すぐにUberをダウンロードした。車を注文して、到着を待つ。シャーロットとクロエが、あたしがトイレでずいぶん時間がかかってるのに気づく前に、逃げ出せるといいんだけど。
あたしは、逃げる計画を彼女たちに話さなかったことを後悔してる。あたしを心配させることになるだろうから。遠くまで行ったら、クロエにメッセージを送るつもり。今度は彼女とは連絡を取り合うつもりだし、あたしが立てた計画で、セオドアに見つからないといいな。そうだといいな。だって、お母さんを探すためだけじゃなくて、すべてがうまくいけば、あたしは彼を永遠に捨てるつもりだから。
車は1時間ほどで目的地に到着した。あたしは車から降りて、国境に向かった。戦士が、あたしに気づくと、あたしの方に歩いてきた。
「あなたは誰ですか?ここで何をしているのですか?」彼は、あたしがローグじゃないってわかってる。あたしからはローグの匂いがしないから。だから、攻撃してこなかったんだ。
「アルファに、女王が来たって伝えて」
「女王?」戦士は混乱した様子で尋ねた。
「そう。あたしは、アルファ王のメイトよ」あたしは、彼のメイトであることを誇りに思うのは、これが初めてだと思う。
「女王様、先ほどは失礼いたしました。すぐにアルファ・スカーレットに、あなたが来たことを伝えます」戦士はそう言って、誰かにマインドリンクを始めた。
「ありがとう」あたしはそう言って、ここにきて大きな間違いをしていないことを祈った。
そんなことないと思う。あたしがセオドアのそばに戻ってきてほしくないと思ってる人がいるとしたら、それはスカーレットだけだし、彼女が助けてくれると確信してるから。