チャプター43
訓練場に歩いていくんだ。
エカテリーナがトレーニングの準備をしてるのが見える。
どうやって狼男たちの訓練を手伝ってるんだろう。
端っこで見てるだけにしようと思ったんだけど、一人の狼男が俺に気づいたみたいだ。
「おはよう、ルナ女王」
って挨拶してきて、周りの狼男もみんな同じように挨拶してくる。
「おはよう。
まさかあなたが来るなんて思わなかったわ」
エカテリーナが俺のところへ歩いてきてそう言った。
「いや、別に。ただ見に来ただけなんだ」
「私たちと一緒にやらない?
セオドアが戦争には行かなくていいって言ったのは知ってる。
でも、魔女と戦う方法を学ぶのに損はないわよ。
いつ、そういうのに遭遇するかわからないし」
エカテリーナがそう言って、俺はその言葉を真剣に考えた。
セオドアの願い通り、戦争に行かないことにするかまだ決めてないし、決めるまでの間、トレーニングするのも悪くない。
「いいね、やろうかな」
「やった!
じゃあ、トレーニングを始める前にいくつか説明させて。
魔女は狼男や吸血鬼みたいにスピードや爪はないけど、魔法のおかげであなたたちみたいなのや吸血鬼との戦いでも互角に戦えるのよ」
エカテリーナはそう言って、片手に火の玉、もう片方に水を出す。「
世界にある4つのエレメントのうちの一つを使って魔法を唱えることができるから、狼男や吸血鬼との戦いでも対等に戦えるの」
「どうやって?」
「あなたの体内の血の流れを止めることができるの。
水魔法が得意な魔女なら誰でもできるわ。
火の魔法を使えば、体の中から燃えるような感覚にすることもできる」
「うわ、魔女ってそんなことできるんだ。
俺たち、勝てる可能性ある?」
「あるわよ」
「どうやって?」
「魔女を見たときに最初にすることは、変身しないこと。
狼の姿だと、魔女はあなたたちに魔法をかけやすくなるの。
それに、さっき言った魔法は全部禁じられた魔法よ。
魔女はあなたの心をコントロールしないと、体の中をコントロールできないの」
「へえ、狼男の心をコントロールするのって簡単なの?」
「いいえ、簡単じゃないわ。
狼男はみんな頭の中に複数の心を持っているから。
魔女があなたの心を乗っ取ろうとしたら、狼とも戦わなきゃいけないの。
だから、狼の姿の方が簡単なのよ。
あなたの狼は自由だし、乗っ取られるのは人間の心だけになるから。
だから、闇魔法を使う魔女の前では絶対に姿を変えちゃだめよ」
「了解」
「いいわね。
吸血鬼キングを助けてる魔女たちはみんな闇魔法を使ってるの。
あなたを限界まで追い詰めて、狼に変身させようとするわ。
狼の姿の方が強いのは知ってるけど、どんなに人間としての姿でボロボロになっても、変身しちゃだめよ。
変身した瞬間、命は終わりよ」
「重ねて了解」
「よし、全部説明したから、トレーニング始めましょうか。
人間の姿で戦って、私の言葉をちゃんと覚えていてね」
「絶対に、変身しないよ」
「そうね、始めましょう」
俺はエカテリーナから一歩下がった。
ある程度距離ができたところで、ベルが鳴って、彼女が俺に襲いかかってきた。
彼女は火の玉を俺の方に投げてきたけど、俺はしゃがんでそれを避けた。
彼女の首を掴もうと走り寄ったけど、5歩も進まないうちに、俺の足を地面に凍りつかせられた。
「ずるいぞ!」
俺は足を縛る氷を壊そうと叫んだ。
だって、もし普通の魔女だったら、使えるエレメントは一つだけなんだから、俺と戦うには。
俺は自由な方の足を使って、氷の塊をできるだけ強く叩いて、足を解放しようとした。
「二つの魔法の才能があるのは、私のせいじゃないし」
彼女はニヤニヤしながらそう言った。
もう一つ火の玉が飛んでくるのが見えて、俺はしゃがんだ。
氷が当たってしまっても、火傷しないように低く潜り込んだ。
エカテリーナが使ってる火は、トレーニングだから熱くない。
もし本当に別の魔女との戦いだったら、火が肌に触れた瞬間燃え上がってたはずだ。
「ありがとう」
俺はそう言って、足の氷が溶け始めた。
作戦成功。
「見抜くべきだったな」
「残念だったね」
俺はニヤニヤしてそう言った。
反対側から彼女に走り寄った。
彼女は火の玉を投げてくる。
俺の狼男スピードなら、全部避けられる。
彼女の首を掴もうとした時、巨大な水の波が突然俺の頭上に現れて、俺に降り注いできた。
「カテリーナ!」
俺は叫びながら、水が降り注ぎ続けた。
「あらまあ、無理」
エカテリーナは笑いながら言った。
「お前を殺すぞ」
俺はなんとかそう言えた、彼女が俺に水をかけるのを止めた後に。
「一体どこからそんなに水を手に入れたんだよ」
俺は尋ねた。
「私の後ろに川があるの」
彼女はそう言って、俺は前を見た。
エカテリーナは、ここにある湖の水の半分以上を俺の体にかけたんだ。
「あ」
「もう十分だと思うよ、二人とも」
セオドアがそう言って、エカテリーナと俺が戦いを続けようとした時だった。
「何をしたっていうんだ?」
俺たちは同時に尋ねた。
「お前たちは戦ってない。
ただ、お互いのスキルを試してるだけだ」
「いや、戦ってるんだ」
俺はそう言った。
「本当に、本気の戦いだったら、魔女にどこから水を手に入れたか聞いて、溺れさせてたのか?」
「いいえ」
「そう思ったよ。
エカテリーナ、本気の戦いだったら、狼男がお前をほとんど溺れさせても、喉を掻きむしったりしないのか?」
「はい」
「そう思ったんだ」
「ごめん」
俺は、エカテリーナと俺が、真剣な戦いじゃなくて、ただ遊んでるみたいだったことに、恥ずかしさを感じながら言った。
「ごめんね」
エカテリーナも言った。
「大丈夫だよ。
さあ、乾かしてあげよう」
セオドアはそう言って俺の手を掴んだ。「
エカテリーナ、他の人たちのトレーニングを続けてくれ」
そう言って、俺を連れて城の中に入った。
中を歩きながら、エカテリーナと俺がどんなトレーニングをしたせいで、俺にがっかりしてるのがわかった。
真剣な戦いよりも、もっと楽しくしようとは思ってなかった。
ただ、そうなっちゃったんだよ。