チャプター57
ああ、ひどい頭痛がして、眠りながらうめき声をあげちゃう。頭を揉みながら目を開けたんだけど、ベッドにいるんじゃなくて、椅子に縛り付けられてるんだよね。手首のロープをほどこうとしても、頑張れば頑張るほど、肌が焼けるように痛い。銀のロープみたい。周りを見回すと、真っ暗。マジでここはどこなの?って叫びそうになったら、誰かの声が先に聞こえてきた。
「叫ぶ必要はないわよ、ダーリン。誰も聞こえないから。」
聞き覚えのある声がする。でも、周りは暗くて誰なのか見えない。
「誰?姿を見せろ!」
部屋にいる人に叫んだ。
「やあ、ダーリン」クロエが現れた。「会いたかった?」
長い爪で私の頬を触りながら言った。
「ここはどこなの?どうしてここに?」
クロエの手から顔をそらして聞いた。
「一緒にいるんじゃない?」
「マジで、それってどういうこと?」
「文字通りの意味よ」
「クラックでもやってんの?」
眉をひそめて彼女に尋ねた。いつもより変なんだよね。
「なんでそんなバカな質問するの?」
顔をしかめて聞いてくる。私の質問で彼女を怒らせたみたい。
「どうやって捕らえたの?セオドアになにかした?もし、彼に何かしたら、この椅子から抜け出して、お前を後悔させてやる」
彼女に唸った。セオドアと一緒に寝たのに、ここで目が覚めたんだ。彼女は私を誘拐するためにセオドアを傷つけたに違いない。どうやってそんなことができたんだろう。
「くだらない脅迫は無用よ。あなたの大事なワンコには何もしてないわ」
「ワンコじゃない」
彼女に大声で唸った。ヴァンパイアや魔女は、オオカミ人間を犬って呼ぶんだよね。本当は犬じゃないって知ってるくせに。私たちをイライラさせるためだけに言うんだよ、ほんとに。
「あなたたちは、本当に、でも、それは今はどうでもいいの。大事なのは、私が欲しいものを持ってるってこと。それを私に渡してほしいの」
「ちょっと待って、私に渡してほしい?もう目の前にいるのに。なんでそんな言い方するの?」
混乱しながら聞いた。
「だって…………」
アヴァは言葉を区切った。なんか不思議なことが起き始める。周りの暗闇が美しい公園に変わっていく。
「何が起きたの?」
蝶が鼻先に止まり、目を見開いて聞いた。追い払うために鼻をひくひくさせた。
「あのね、アナスタシア。私は本物じゃないの。あなたの頭の中にいるだけなのよ」
そう言って、また周りの景色を変えた。今度は、人間でいっぱいの遊園地。
「どうして?」
「一晩中説明したとしても、あなたは理解できないでしょう」
「やってみてよ」
「そうしたいんだけど、時間がないの。セオドアがすぐに気づいて、あなたを起こしてしまうわ」
「何に気づくって?」
「私はあなたの血が必要で、あなたはセオドアの呪いを解く必要があるの。あなたの血をくれたら、セオドアの呪いを解いてあげる。私は…………」
アヴァは言い終わらないうちに、突然消え始めた。
「な、何……!」
彼女の体が消えていくのを見て、叫んだ。
誰かが私の体を引っ張って、私の名前を叫ぶのを感じた。声に集中して、それが誰だか分かろうとした。
「起きろ、アナスタシア、起きろ」
セオドアが叫んでいる。よく聞こえないけど、たぶん私の名前を叫んでるんだ。
彼の声のする方へ向かい、実際に目を開けた瞬間に叫んだ。私は空中に浮いているんだ。重力に従って落ち始め、もっと叫んだ。
「大丈夫だ」
セオドアが私を抱きとめた。
「一体全体何が起こったの?」
「それは僕が聞きたいことだよ」
セオドアはベッドに歩いて行き、私をそこに座らせた。
「アヴァと話してたの」
「は?」
混乱した様子でセオドアは、私の前にしゃがみ込んだ。
「アヴァと話してたんだ、あなたが起こす前に」
「大丈夫?ハニー?数秒前にアヴァと会話するなんて、ありえないよ」
「頭の中で話してたんだ。だから浮いてたんだと思う。私の頭の中に入る呪いが、私の体を浮かせたのかも」
「へえ」
セオドアは私の言葉を信じられないみたい。
「信じられないかもしれないけど、魔女のことだからね。色んなことができるんだよ」
「そうだね、できるね。それで、何の話をしたの?」
ベッドの端に座って、隣に座ったセオドアが聞いた。
「取引を持ちかけられたの」
「どんな取引?」
「もし私の血をあげたら、呪いを解いてくれるって」
「そう言ったのか」
驚いたようにセオドアが聞いた。
「うん」
強調するように頷いた。
「すごいな」
セオドアは手のひらで顔をこすった。「嬉しいのか悲しいのか、どっちかわからないよ」
「嬉しいはずだよ。やっと呪いを解く方法が見つかったんだから」
「2ヶ月前に、彼女があなたの血をほとんど吸い尽くして、仲間の目を覚まそうとした後、あなたの頭の中に入って起こさなきゃいけなかったこと、忘れてるでしょ」
目が覚めてから1ヶ月経った。戦争のこととか、メイソンの死を思い出すたびに、毎日寂しいんだ。
「起きたことは忘れてないよ。彼女に血をあげても、私が死なない方法があるはず」
「本当にそう思う?」
「そう願ってる。明日、エカテリーナに聞いてみるしかない」
「わかった。明日そうしよう。でも、もし方法があるとしても、本当に彼女に血をあげることに賛成なの?彼女はヴァンパイアキングの弟を起こしたいんだから、本当は反対するべきなんだけど、できないんだ。もし彼女が呪いを解いてくれたら、やっとあなたとの交際を完了させることができるけど、まず聞かないと。本当に彼女に血をあげることに賛成なの?」
「人生でこんなに確信を持てたことなんてないわ」
セオドアの手を握って言った。
「それは素晴らしいことだね、愛しい人。明日、エカテリーナがいい知らせをくれるといいね。また寝よう」
セオドアは私をカバーの下に戻した。
「そうだといいね」
カバーの中で落ち着きながら言った。