シイル
アタシは急いで自分のカラダを追いかけた。アラダが中に入ってるソレに。そして、パヴェルがアタシのカラダの前に立って、アタシのカラダと向き合ってるのを見て、走るのを止めたんだ。
「パヴェル」
アラダとアタシは同時に彼の名前を呼んだ。パヴェルの唇に浮かんだ笑顔を見て、アタシは涙が止まらなくなった。そして彼はアタシのカラダを抱きしめたんだ。
「カルマ」
パヴェルが囁いた。アラダがアタシのカラダを操ってる時にね。
「パヴェル… パヴェル、それ、アタシじゃない」
アタシは泣きながら、抱き合ってる二人を見た。パヴェルをアタシのカラダから引き離そうとしたけど、無駄だった。アタシはただすり抜けるだけ。パヴェルのキスがアタシのカラダを捉えた時、アタシの涙はさらに溢れた。
「パヴェル…」
アタシは二人を見上げながら、優しく名前を呼んだ。
「それ、アタシじゃないよ、パヴェル…」
アタシは囁き、二人の間に座り込んだ。パヴェルがアタシのカラダにキスするのを見て、パヴェルがアタシが中にいると思って抱きしめるのを見てたんだ。
アラダの笑顔を見た時、アタシは拳を握りしめた。マジでムカつく。アタシは立ち上がり、全力でアラダをアタシのカラダから押し出そうとしたけど、何も起こらなかった。ただ、すり抜けただけ。
「アタシが、お前に戻って来いって言ったか?」
パヴェルが笑顔で言ったから、アタシは彼を見た。
こんな状況で、アタシみたいな悪魔に何ができるっていうんだ? アラダはアタシよりずっと強くて、アタシは諦めたら負ける。
「パヴェル…」
アタシは彼を見上げながら、もう一度囁いた。
「アタシがいなくて寂しかった? パヴェル」
アラダが笑顔で尋ねた。パヴェルは彼女に微笑んで、頷いたんだ。アタシは、そこにいないのに、誰かに見られているかのように首を振った。
「やっと、最後のカルマと会えた」
パヴェルはアラダを見ながら言った。
「それ、アタシじゃないよ、パヴェル。アラダだよ」
アタシは泣きながら、パヴェルの手をアラダの手から離そうとしたけど、前みたいに、ただすり抜けるだけだった。
「パヴェル」
パヴェルを呼ぶ声に、アタシ達は同時に顔を上げた。
国王と女王は、アラダに操られたアタシのカラダを見て、パヴェルとアラダの手を見て、それからパヴェルを見た。
「起きてるんだ、ファーザー、マザー。アタシが好きな娘が起きたんだ」
パヴェルはアタシを傷つけるように言った。
「パヴェル、アタシがそのカラダを操ってるんじゃない!」
アタシは誰もアタシを見ることができないのに、叫んだ。
「マザー、ファーザー。カルマなんだ、ちなみに、アタシがいつも待って、探してた娘だよ」
パヴェルは笑顔で言った。国王と女王は答えず、アラダに視線を向けたままだった。
「パヴェルはどこ?」
アタシ達は二人の声の元を見た。国王と女王の後ろから、白い服を着た長い黒髪の女性が出てきたんだ。
その女の顔は、パヴェルを見た途端、次第に明るくなった。
「パヴェル!」
その娘は嬉しそうに叫び、パヴェルに駆け寄り、抱きしめた。アタシはパヴェルを抱きしめた女の喜びを感じることができた。
「シイル、何してるんだ?」
パヴェルは困惑した様子で尋ねた。パヴェルが呼んだシイルは、抱擁から離れ、彼に微笑んだ。
「お父様とお母様が呼んだから来たの」
彼女はそう言って、アラダを見た。アタシは、シイルという娘をじっと見つめながら、眉を上げたアラダを見た。
「彼女は誰、パヴェル?」
シイルはアラダを見ながら尋ねた。パヴェルはアラダを見て、それからシイルを見た。
「彼女は…」
「アタシはカルマ、パヴェルのガールフレンドよ」
アラダは紹介した。アタシは彼女を見た。彼女がシイルを見つめながら浮かべた笑顔を見た。アタシにも何気なく視線を向けたけど、また怒りそうだった。
「そう? アタシはシイルよ」
シイルは笑顔でアラダに言った。「パヴェルの婚約者」
アラダとアタシは、彼女の言葉に同時にシイルを見た。彼女は嘘をついてない。彼女の言葉からは嘘の匂いがしないんだ。
「え?」
パヴェルが突然尋ねたので、アタシ達は彼を見た。明らかに、彼はシイルの言葉に驚いていた。彼の額にはシワが寄り、信じられないといった様子で父と母を見た。
「ええ、お父様とお母様が、アタシ達の両親が合意したって言ってたわ。心配しないで、パヴェル。アタシがウィンソウルを率いるのを手伝ってあげる」
シイルは笑顔で言った。アタシの胸にはすぐに怒りがこみ上げてきた。こいつは明らかにアタシの味方じゃない。
彼女の笑顔は偽物だけど、口から出る言葉は本物。彼女を騙せるのは、彼女の笑顔だけ。彼女が本当に幸せなのか、それともただのショーマンなのか、アタシにはわからなかったんだ。
アタシは不機嫌そうにアラダを見た。アタシと同じように、彼女もシイルが気に入らないのは明らかだった。
シイルが問題なら、シイルがいなくなるまで、アラダにアタシのカラダを使わせることにしよう。この娘、いいタイミングで来た。
アタシはニヤリとした。アラダは、アタシがニヤリとしたのを見て、アタシを見たんだ。
「カルマって笑って、アラダ」
アタシが言うと、アラダはアタシを見て、それからシイルを笑顔で見た。
「ファーザー、マザー。もう話は済んだんですよね?」
パヴェルが話を遮ったので、アタシ達は彼を見た。
「聞きなさい、パヴェル。あなたのためになることがわかってるのよ」
彼のマザーが言った。アタシはパヴェルがアタシのカラダに触るのを見て、胸が痛んだ。
「アタシが結婚したいのは、隣にいる娘であって、彼女じゃない」
パヴェルが言った。アタシはアラダの狡猾な笑顔を見たから、疲れてしまった。
「でも、彼女はあなたを助けられないわよ、パヴェル」
シイルは嬉しそうだったから、アラダを見ながら笑顔になったのはアタシだったんだ。
「彼女はただの宮殿の低ランクの人。あなたがユニコと結婚したら、あなたの管轄下の人々はなんて言うかしら?」
シイルは付け加えた。パヴェルとアラダはシイルを睨んだ。
「カルマにそんなこと言う権利はない」
パヴェルは力強く言った。
「権利はあるわ、パヴェル。アタシが言いたいことを全部言うのを禁止する法律はないんだから」
シイルは笑顔で、からかうように言った。
アタシは本当に感謝してる。だって、今アタシのカラダにいるのはアタシじゃないから。前はアタシのカラダがアラダのものだったからすごく心配だったけど、今はすごく嬉しい。だってアタシはシイルの対象じゃないんだから。
アタシはシイルに悪い顔をしているアラダを見た。彼女がムカついてるのは明らか。彼女は誰にも負けたくないし、誰かより優位に立ちたいわけじゃないから、シイルが現れた時はイライラしてただけ。アタシはそれが嬉しいんだけどね。
「で、パヴェルはあなたと結婚すると思うの?」
アラダは尋ねて、ニヤリとした。「アタシはパヴェルの愛する人よ。彼はアタシと結婚すると約束したんだから、あなたじゃないわ」
彼女はそう言った。
「約束はただの約束のままになるだけよ、ユニコ。全部決められるわ。パヴェルはあなたに約束したけど、それが続くのかどうかってことね?」
シイルがアラダに尋ねたので、アタシは笑った。
「もういい、アタシはカルマと結婚するんだ。あなたじゃない、シイル」
パヴェルが言ったので、アタシの唇から笑顔が消えた。
シイルは大声で笑い、それから冗談めかしてパヴェルの腕を叩いた。
「あなたはいつも面白いわね」
シイルは笑い、パヴェルにそう言ってから、笑顔で腕を組んだ。
「わかったわ、彼女と結婚しなさい。結局、あなたが失敗したと思うわ、パヴェル」
シイルは笑顔で言った。「ところで、あなたは隣の女が死ぬところをどう見たい? パヴェル」
シイルが尋ねたので、アタシはそれを見た。
「あなたの両親は、あなたがアタシと宮殿の代わりに彼女を選んだ時に何をするつもりだったか、あなたに言ったはずよね?」
シイルは遊び心のある声で尋ねた。アタシはパヴェルの握りしめた拳を見て、彼の体から今まさに流れ出ているイライラを感じることができた。
「あなたの愛する女性が、結婚式の翌日には死体になるのはどう?」
シイルが尋ねてアラダを見た。アラダはニヤリとした。
「あなた、あなたは自分の魂が地獄の底で燃えるのが見たい?」
アラダが尋ねたので、アタシは笑った。
「ハハハハハ、面白いね、アタシはもう長いことそこで燃えてるよ。あなた? どれくらいそのカラダにいるの?」
アタシもアラダも、シイルの言葉に驚いた。まるで彼女が何か悪いことをしたかのように、二人で彼女を見たんだ。
彼女は何を言ってるんだ?
「もう十分だ、この話はどこにも行かない」
パヴェルはため息をつき、両親を見た。
「後で部屋に行って話すよ」
アタシはアタシのカラダの手を握るパヴェルの手を見た。
「今はカルマと一緒にいたいんだ」
そう言うと、彼はアタシのカラダの手を握ったまま、踵を返した。
アタシは、二人が立ち去るのを見て、シイルに視線を向けた。今彼女は恐ろしいオーラとニヤリとした笑みを浮かべ、二人の歩く姿を見つめていた。
「あなたは自分のカラダを取り戻す必要があるわね」
彼女は二人から目を離さずに言った。アタシは眉をひそめ、彼女をじっと見つめたんだ。
「戦いはフェアみたいね、カルマ?」
アタシは目を見開き、彼女が突然アタシを見た時、体が硬直した。
シイル、あなたは誰で、なぜアタシが見えるの?