新たな始まり
あたしのカラダが埋められてから数日経った。それから、パヴェルが部屋から出てくるのも見てないし、アビアとベールが、あたしたちが初めてここに来たときみたいに宮殿をうろうろしてる姿も見てないんだよね。
すっごい変わっちゃった。宮殿は静かすぎてゴーストタウンみたい。あたしのカラダが埋められてから、ザ・クイーンとアスラドは町からバケーションに出ちゃったみたいだし。
パヴェルが心配なんだよね。何日も食べてないし、王としての仕事も山積みになってる。彼は国をないがしろにしてるんだ。自分自身も。自分がもう王だってことを忘れかけてる。
深呼吸してから、あたしの前に座ってるシンラドを見た。彼はあたしたちのために持ってきた食べ物を食べてた。
「彼と話した?」あたしが聞くと、シンラドはあたしを見て首を振った。持ってた食べ物を置いて、唇を拭ってる。
「グランパ・ガブリエルがさ、パヴェルの部屋によく行くんだ。彼がパヴェルと話してるんじゃないかなって思う。」そう言って、あたしはうなずいて、自分の部屋の窓を見た。
「アンタ、いつパヴェルのとこ行くの?」そう聞かれて、あたしは彼を見た。
「なんでパヴェルの部屋に行きたくないの?」って。どう答えればいいか分かんない。パヴェルがあたしのカラダが埋められた後に言った言葉をまた思い出した。
「シイル。」パヴェルは、あたしが今使ってるカラダの名前を呼んだ。あたしは感情のない目で彼の目を見た。客はみんな帰って、雨も止んで、パヴェルとあたしだけが、あたしの人間としてのカラダが埋められた場所に残ってたんだ。
「最初は、あたしから離れてて。」って、あたしを驚かせることを言ったんだ。なんでそんなこと言ったのか分かんないし、あたしは傷ついた。だって、急にそんなこと言うんだもん。この時、どう反応すればいいのか分かんなかったんだ。
「最初はあたしから離れてて。だって…」彼は言葉を止めて、視線をそらした。「だって、お前からはクサァラのことしか思い出せないんだ。」って言うから、あたしは弱くなったんだ。
あたしだって言いたいよ、あたしだよ、クサァラだよって。あたしは彼を置いてないし、ただ彼のそばにいるだけだって。でも、力が出ない。だってあたしが欲しいのは…あたしが欲しいのは、彼が、あたしがクサァラだってこと、あたしが他の人のカラダの中にいるってこと、彼が前に言ったみたいに、あたしが彼を置いてないってことを、彼に見つけてもらうことなんだもん。
「結婚の前に、クサァラのこと、とりあえず忘れようと思って。」彼は言ったけど、あたしは答えなかった。
「落ち着いたら…それから結婚を進められる。」そう言って、あたしはうなずいた。「でも、あたしがシイルを愛するって期待はしないで。」って、彼は言って、あたしはずっと彼を見てた。彼はあたしの人間としてのカラダのお墓を見てたんだ。
「だって、今までも、これからも、あたしが欲しいのはカルマなんだ。」そう言われて、あたしは嬉しいのか悲しいのか分かんなかった。だって、あたしは彼の隣にいるだけだし、彼はあたしが今ここにいるってこと、知らないんだもん。
「次。」あたしが言うと、彼はあたしを見た。あたしたちの間には一瞬の沈黙があって、それから彼が話し出した。
「結婚したのは、両親が国のために望んだからだよ。」って。
「次。」あたしは言った。
「結婚しても、部屋は別々だよ。」って。
「次。」あたしは言った。
「両親の前でだけ、あたしの妻として振る舞ってくれ。」
「次。」理由は分からないけど、涙がこぼれた。
「一人にしてくれ。」彼は言った。
「次。」あたしは振り返った。あたしが振り返ると同時に、涙がこぼれ始めたんだ。
「ただ、嫌いなんだ。」あたしはシンラドの質問に答えて、彼女に見つめられて、視線をそらした。彼女は深呼吸して立ち上がった。
「行こう。」そう言われたから、あたしは彼を見た。
「どこ行くの?」あたしが聞くと、
「ただ、来いよ。」って言われてあたしは彼の方を向いた。抵抗したら、あたしを傷つけるだけかもしれない。
彼の腕から自分の手を離して、彼と一緒にスムーズに歩き出した。あたしたちは宮殿の左側に曲がった。あたしたちは二人とも無言だった。彼がどこに連れて行こうとしてるのか分からなかったけど、ある部屋で止まった。彼を見て、あたしは微笑んだ。
「入って。」って彼は言ったから、あたしは眉をひそめた。
「なんで?」あたしは聞く。
「ただ、入って。」って言われて、あたしはガッカリした。
「行きたくないよ、まず誰なのか言ってよ…」あたしが言い終わらないうちに、ドアが急に開いてタンダがツバを吐いた。あたしは驚いて彼を見てると、タンダは悲しそうに微笑んで、ドアから出て行ったんだ。
「ここ、アンタの部屋?」あたしはタンダに聞いた。「いつ部屋変わったの?」って聞いたら、彼はあたしに答えずに、部屋の開いたドアを指さしたんだ。
「入れ。」そう言われて、あたしは眉をひそめた。
「え?」あたしは聞く。
「入れ。」タンダは言った。あたしは彼を困らせた。
「なんでアンタを見たの…」言い終わらないうちに、シンラドが両腕を掴んで、あたしを目の前の部屋に無理やり押し込んだ。それから、あたしの血がすぐに沸騰して、部屋を出ようとしたら、ドアが閉まって、あたしは気が狂いそうになったんだ。
周りは真っ暗で、部屋の中の窓もライトも閉められてる。
「古いだけよ、ここから出たらあたしのこと嫌いになるわよ。」そう脅して、あたしは周りを見回したんだ。
「この部屋で何すればいいの?」苛立ってライトのスイッチを探して、見つけてすぐにライトをつけたら、目が眩んだ。
「特別な光だ。」ってあたしはささやいて、目を開けた。周りを見て、この部屋は美しい装飾で囲まれてて、明らかに高価な素材と金でできてるんだ。
「何が…」あたしの目がベッドに止まって、そこに何かが横たわってるのが見えたとき、あたしは言葉を止めた。ゆっくりとベッドに近づいて、覆ってる布を取った。心臓がドキドキして、パヴェルが静かに眠ってるのが見えたんだ。
彼を見ながら、あたしはゴクリと唾を飲み込んだ。明らかにまだ髭を剃ってないから、口ひげが長くて、あたしは彼を見ながら微笑んだ。数日ぶりに、彼に会えたんだ。
ゆっくりと彼に近づいて、彼の隣に座った。あたしは愛しい男を静かに見つめて、彼の唇に目が止まった。目を閉じて深呼吸した。
「誘惑に抵抗して、クサァラ。」あたしは心の中でささやいて、またパヴェルを見た。深呼吸してから、彼の顔に近づいて額にキスしようとしたら、突然彼が動いて、あたしの手をつかんで、あたしは彼の胸の上に倒れ込んだんだ。
彼の胸の上に横たわりながら、あたしは目を見開いて、ゴクリと唾を飲み込んだ。彼はあたしを抱きしめて、心臓が早くドキドキし始めた。
「落ち着いて、クサァラ。」
「カルマ…」彼はあたしの本名を呼んだ。ゆっくりとパヴェルをのぞき込むと、まだ目を閉じたままだ。
「カルマ…すごく愛してる。」彼は目を閉じてそう言ったので、あたしは微笑んで、また彼の胸の上に横たわった。
「あたしも愛してるよ、パヴェル。」