新しい人間の体
「ずっと、彼女のこと待ってたんだ」
「また全部始まるんだ。また彼女を探すことになるんだと思うと」
冷たい風が吹いて、周りは静かで、小川の水音だけが聞こえる。オレは今、ウィンソウ王国から離れた、この小川にいる。さっき、足が勝手に連れてきたんだ。色々考え事があって、悲しみを吐き出したくて、ここにきたんだ。
「疲れたな…」
オレもすっごく疲れたよ、パヴェル。
虚空を見つめながら、涙が止まらない。また冷たい風が吹く。
「オレも休みたい」
オレも休みたいよ、パヴェル。安らかに眠りたいんだ。
「彼女の隣で休みたい」
「何百年も、彼女のこと待ってたんだ」
何百年も、パヴェル、キミと一緒にいたいと願ってたんだ。何百年も、キミと一緒に平和に暮らす夢を見てたんだよ。
「もし、過去に戻れたら…もし、あの頃に戻れたら…悪魔と取引なんてしなかったのに…そうすれば、彼女がこれ以上苦しむこともなかったのに」
風がまた吹いて、目を閉じた。もうオレの人間としての体はなくなっちゃったから、これからどうなるのかわからない。人間としての体は死んだけど、魂はまだ生きてる。
「また、カルマが死ぬのを見ることになるんだ」
カルマの体が、パヴェルの目の前で倒れるのが見える。パヴェルの目も見開かれてる。カルマに起きた暗い出来事のせいで、また涙が出てきた。
パヴェルは、カルマの顔を優しく撫でながら、目に涙を浮かべている。「カ…カルマ…」パヴェルは、抱きしめてる女の子の名前を弱々しく呼んだ。アラダが、パヴェルの目の前でカルマの魂を奪ったのを見て、オレは口を覆った。
突然、過去に見た光景が頭に蘇る。思い出せない過去、パヴェルだけが知っていて目撃した過去、パヴェルの前でオレが何度も死ぬ過去。
泣いているパヴェルの前にいて、血まみれの若いカルマの体を抱きしめてるんだ。周りを見渡すと、パヴェルを見てる人たちがいる。
「助けを呼んでくれ!カルマを追いかけて!」パヴェルは泣いてるけど、誰も動かない。オレは手を握りしめた。
「助けを呼んでくれ!」叫んだけど、誰も聞こえない。泣いてるパヴェルを見た。
「あなたの名前、もう一回教えてくれる?」オールド・ウーマンがパヴェルに尋ねた。
「パヴェル。オレの名前はパヴェルだ」パヴェルはオールド・ウーマンに答えた。オールド・ウーマンはパヴェルに微笑んだ。「あ…オレ、自分の名前忘れちゃった」オールド・ウーマンはパヴェルに言った。パヴェルは笑って、オールド・ウーマンの手を取った。
「カルマ、君はカルマだよ」パヴェルは笑顔で言ったから、オレは彼の前にいるオールド・ウーマンを見た。オレは口をあんぐり開けた。オールド・ウーマンの体の中にある魂を見たんだ。それは、三番目のカルマだったんだ。
前と同じように、パヴェルがオールド・ウーマンの世話をして、また彼女を笑わせているのを見ていた。そして、カルマがまた別れを告げる日が来た。オールド・カルマの体は老衰で弱り、パヴェルの姿は変わらないままだった。彼は年を取らないんだ。パヴェルの目から涙が流れ落ちるのを見て、オレは自分の目から流れ落ちる涙を拭いた。彼は、三番目のカルマの息絶えた体を再び抱きしめていた。
「オレはパヴェルだ」パヴェルは、目の前の女の人に言った。プリンセス・ハスミンは彼に微笑んで、手を差し出した。
「ハスミン姫です。助けてくれてありがとう」彼女はパヴェルに笑顔で言った。
「どういたしまして、カルマ」
「カルマ!」パヴェルの叫び声に、オレは後ろを振り返った。パヴェルがハスミンの血まみれの体に駆け寄るのを見て、息をのんだ。彼女は盾を身につけて、剣を持っていた。周りを見渡すと、宮殿は混乱していて、壁は壊れ、死体が散乱している。
「カルマ!カルマ、目を開けてくれ!お願いだ!カルマ!オレから離れないでくれ!」ハスミンの体を抱きしめて泣いているパヴェルを見た。二人の姿に、ゾッとした。
「カルマ、お願いだ、またオレから離れないでくれ。目を開けてくれ」オレは座って二人を見ていた。
「カルマ、お願い、カルマ…カルマ!」ハスミンの死体を抱きしめながら、パヴェルは泣いた。
「クサァラ」オレを呼ぶ声に振り返ると、ザ・オールド・マンがいた。真剣な表情でオレを見てる。「ここで何してるんだ?少しの間、お前を探してたんだ」彼は尋ねてきた。オレは悲しげに微笑んで、小川を見た。
「恨みが出てくる」そう言った後、彼が近づいてくるのを感じ、オレの隣に来ると深く息を吸い込んだ。
「お前の人間としての体は、宮殿に埋葬された」彼は言った。オレは答えず、代わりに突然涙が流れ始めた。
二人だけの長い沈黙があった。
「オレ…これからどうなると思う?」オレは小川を見ながら尋ねた。彼がオレの方を向くのを感じた。
「オレは…パヴェルがずっと待っていた最後のカルマなんだ」オレは小川を見ながら言った。「自分の過去を見たときに初めて、パヴェルがオレの前で死ぬたびに感じる痛みを知ったんだ」
彼は黙っていた。
「彼がオレを探し、オレが死ぬたびに自分を責める姿を見た」そう言って、オレは目から流れ落ちる涙を拭いた。もうザ・オールド・マンに泣いてる姿を見せたくない。
「新年の数分前、彼は自分の手のひらにオレの名前を書く。そうすれば、彼が目を開けたときに、まだオレのことを覚えているように」そう言って、オレはつばを飲み込んだ。
「今、パヴェルはすべてを思い出す…アラダは、最初のクサァラから、オレの前の最後のクサァラまでの記憶を呼び戻したんだ。彼の体に感じるのは、悲しみと疲れ、痛みと悲しみ。オレは…オレはそれを彼の体から取り除きたい」オレは言った。
「希望を失うな、クサァラ」グランパ・ガブリエルが言ったから、オレは彼の方を向いた。彼はオレに微笑んで、小川を見た。
「人の心の真実の愛は消えない。たとえ別の体であっても、彼はキミが誰なのかを認識するだろう」彼は言った。オレは彼を見つめたままだった。
「お前が最後のカルマなんだな?」彼は尋ねて、オレを見た。
「まだここにいるうちに、まだシイルの体の中にいるうちに、まだ魂が生きているうちに、彼の愛を感じさせてあげなさい。彼がシイルの体の中にいるカルマとしてキミを認識するまで、諦めるな」彼はそう言った。彼はオレに微笑んで、また前を見た。
「キミがカルマだなんて、彼に言っちゃダメだ。彼自身に見つけさせなさい」彼は言う。オレは前を見て、深く息を吸い込んだ。
「もう時間が少ししかない」オレは言った。苦笑いした。グランパ・ガブリエルの言う通りだ。たとえ別の体であっても、パヴェルに愛してるって感じさせなくちゃ。そして、自分がカルマだって気づかせないと。
「お願いがあるんだ、おじいさん」オレは、オレを見てる彼に言った。オレは彼に微笑んで、深く息を吸い込んだ。
全部がオレたちを追い越してしまう前に、無駄にしてる時間はないんだ。