CHAPTER 16
起きて部屋から出た。もう無理だったんだ。泣くの止まらないし、お母さんのこと考えると苦しくて。
震える手でサインして、それから病院を出た。
バスの後ろの方に座って、何か解決策がないか考えようとした。
でも、頭が真っ白だった。
家に帰ると、まっすぐお風呂場に行って服を脱ぎ、シャワーを浴びた。冷たいシャワーを浴びながら、また泣いた。
気を取り直して、楽な服に着替えてから、妹のゼニアがパソコンでなんか調べてるリビングに行った。
「やあ」って冷たく挨拶した。
「やあ」ってゼニアが返事した。
「今日はお母さんに会ってきたんだ。」
「何か良いことあった?」
「ううん。お母さん、あと一ヶ月で肺が完全に機能しなくなるって。移植しないと…」最後の言葉は、どうしても言えなかった。
ゼニアは大きく息を吸って、少し間を置いた。そして、目に涙を浮かべて私を見た。
「ジャシー、お金を借りられる人、いないの?」
「いないよ。友達なんていないし。」
「え、一緒に寝たって言ってた友達は?」
「はあ!?」って、私はゼニアの質問にびっくりして叫んだ。
「友達がいたって…」ってゼニアはまた言い出した。
私はゼニアの言葉を遮った。
「ゼニア、あの友達にはお金を頼めない。」
「なんで!?」
「だって、無理なんだもん!」
「死にそうなママを助けるためでも!?」
「ゼニアにはわかってないんだよ!」
「じゃあ、ジャスミン、なんでお金を頼めないのか、私にもわかるように説明してよ。」
「だって、相手は『彼女』じゃなくて…『彼』なんだもん。それに、上司だし。」
ゼニアは長い沈黙。
「エヴァン・ホーレンと寝たの?ホーレンタワーのCEO、ホーレンさんと?」って、やっと聞いた。
「うん」って答えたら、顔が赤くなるのが自分でもわかった。
「マジで金持ちじゃん。ポケットにちょっと穴が開くだけで、お金くれるんじゃない?」
「ゼニア、彼はくれないよ…。」
「なんで?一緒に寝た後なのに、お母さんのようなひどい状況でも、助けてくれないってこと!?」
「私たち、間違ってそうなっただけで、彼は私に興味ないってハッキリ言ってたし。」
「はあ?信じられない。一緒に寝たのに、そんな酷いことできるわけないじゃん。」
「同じベッドで起きたけど、セックスはしてないと思う。」
「思ってるだけ?」
「二人とも酔ってたし、ゼニア。彼は私のことなんて何とも思ってないし、それに、彼女がいるんだ。」
「やば。」
ゼニアは私を見て、首を横に振った。初めて、ホーレンさんのことで恥ずかしい気持ちになった。もう、忘れなきゃ。あんな馬鹿なこと、彼とも、他の誰とも、二度とさせちゃいけない。私には妹がいるんだし、見本にならなきゃ。
「それでも、せめて話してみたら、お金を貸してくれるとか、くれないの?」って、まだ希望を捨てきれないように、私のボスが助けてくれる可能性を信じて聞いてきた。
「正直、わからない」って答えた。
「頼んでみる?」
「お金は無理だよ、ゼニア。彼は私の彼氏じゃないし、上司なんだ。従業員の一人にお金をポンと渡すような人じゃないし、私にとって彼はそれだけ。これからもそう!従業員!パーソナルアシスタント!」
私は自分の部屋に向かって行って、大きな音を立ててドアを閉めた。また泣き始めた。人生が違ってたらいいのに。ジーニーじゃなくて、奇跡を願った。
エヴァンの視点
もう海の景色には飽き飽きしてたし、船酔いもしてきた。早くオフィスに戻って、いつものように椅子に座って、大好きな仕事がしたかった。こんな海の上に来るんじゃなかった。
キャビンに横になって、リラックスしようとして、後悔するのはやめようとした。
やっと夜にケイマン諸島に着いた。船長は、三つの島の中で一番大きいグランドケイマン島に船を着けた。
ケイマン諸島は、グランドケイマン、ケイマンブラック、リトルケイマンの三つの島からできてる。一番大きいグランドケイマン島は、都会的な雰囲気で、高級レストランや世界レベルのダイビング、有名なセブンマイルビーチがある。ケイマンブラック島は、自然好きにはたまらない場所で、素晴らしいダイビングや岩だらけの崖沿いの息をのむような散歩を楽しめる。一番小さいリトルケイマン島には、たった150人しか住んでいない。私みたいな旅行者は、のんびりした雰囲気と太陽の光を楽しんでるんだ。
夜でも、ここは綺麗だった。私は、亡くなった祖母が作ったホテルにチェックインした。すぐに探検に行きたかったし、夜遅くに泳ぎたかったけど、お母さんに怒られて、リラックスして休んだ方がいいって言われた。でも、固い地面に足をつけると、気分が良くなった。
お母さんとかは船で帰るから、私は先に飛行機で帰ろうかな。
波の揺れには耐えられない。カリブ海に入った時は、本当に嫌だった。