CHAPTER 39
「もうすぐ、あの人に本当のこと、話さないと。手術代と医療費、全部俺が払ったってこと、知らないと」
ポケットから携帯電話を取り出して、**Jasmine**の番号に電話した。
「もしもし」って、**Jasmine**が出たからそう言った。
「ハーイ。元気? 」
「うん、大丈夫だよ。会議から帰ってきたとこ。**Jasmine**のこと、恋しいよ。今、何してるの?」
「お母さんに会いに病院に行く準備してる。もうすぐ、先生たちが退院させてくれるんだ」
「迎えに行こうか? 病院まで連れてってあげるよ」
「ううん、大丈夫。そんなことさせられないよ。会社にいて。あたし、大丈夫だから」
「わかった。寂しいよ」
「あたしもだよ」
「帰ってきたら電話してね?」
「うん」
電話を切って、顔がニヤけた。
「ちょっと、話があるんだけど!」って、別の声が聞こえて、びっくりして、いい気分が吹っ飛んで、**Jasmine**のことなんか忘れちゃった。
「何? **ジェシカ**」って俺は聞いた。
「どうして、こんなことできるの、**Evan**? あたしと付き合ってるのに、あの秘書と浮気してるんでしょ?」って、**ジェシカ**が俺のデスクに近づいてきた。
「え、そうだったっけ?」って俺は聞いた。
「そうよ!」って、俺のデスクに覆いかぶさって、すっごい顔で睨んできて、笑っちゃった。
「**Evan**、あたしのこと、面白い?」
「うん、面白いよ」って俺は答えた。
「**Evan**…」
「マジ勘弁してよ、**ジェシカ**。今日は、そっち側に行きたくないんだよ。
お前が絶対見たくない、そっち側に。
俺とお前は、正式な関係じゃないし、そんなこと、一度もなかった。勘違いしたかもしれないけど、婚約指輪じゃないし、それはよくわかってるはず。8年前のハイキング旅行でなくした指輪だろ。なくしたのが俺のせいみたいに思えて、弁償すると約束したけど、実際にそうしようとしたら、お前がいなくなっちゃったんだから。
俺は約束破らないし、忘れもしない。だから、指についてる指輪は、新しくしたもの。
だから、婚約してるみたいに振る舞ったり、付き合ってるみたいに勘違いするのはやめてくれ。そんなんじゃないんだから。
他に好きな人ができたんだ」
書類の束が、俺の顔に飛んできた。
「え、あたしに紙投げた? あいつ、頭おかしい!」
「別れるとか言わないで!」って、**ジェシカ**が叫んで、他のやつみたいだった。
「あたし達、一度も付き合ってなかっただろ、**ジェシカ**。お前が急に出てきたときには、ちょっと優しくしちゃったけど、もうお前は俺の人生にいらないんだ。お前は狂ってるし、不安定だし、独占欲も強すぎるし、例の恥ずかしい瞬間も忘れられない。例の、バイアグラ」
「**Evan**、やめてよ。愛してる」
「俺はお前を愛してないから、俺のオフィスから、このビルから出て行け。警備員を呼ぶ前に。それで、これあげるよ」って、白いバラを渡した。
涙が頬を伝って、残されたプライドで、**ジェシカ**はくるっと背を向けて、オフィスを出て行った。
ざまあみろ。
**Jasmine**の視点
アパートの鍵をかけて、階段を駆け降りた。バスに乗って、病院に直行した。
「ブラックマンさん!」って、**ドクター・シャノン**が病室に入った俺に声をかけた。俺のこと、待ってたんだ。
「お母さん、どうですか?」って、すぐに聞いた。
「もう退院できるわ。あなたが来るのを待ってたのよ」
**ドクター・シャノン**について、お母さんの病室に行った。
お母さんはベッドに座ってた。顔には大きな笑顔、肌の色もつやつやしてるみたい。俺を見て、目が輝いて、力強く抱きしめてくれた。
「気分はどう?」って、嬉し涙を拭きながら、俺は聞いた。
「最高よ」って、昔の声で答えた。もっと強く抱きしめて、邪魔するやつはいないって感じだった。
「**スーザン・ブラックマン**さん、あなたのお医者さんになれて、すごく怖かったわ。あのプラグを抜いて、あなたの素敵な娘たちからあなたを奪うことになったら、きっと一生後悔したでしょうね。
でも、神様はあなたを見てて、あなたを救うために、あの人を遣わしてくれた。あなたの人生と幸せを願ってます」って、**ドクター・シャノン**はお母さんに言って、退院させた。
「先生、本当にありがとうございました」って、お母さんは**ドクター・シャノン**と握手した。
俺はまだ、お母さんを抱きしめてた。
ようやく離れて、一緒に病院を出た。こんな状況は、もう二度と経験したくない。病院なんて大嫌いなんだ。
アパートのドアを開けて、お母さんを家に入れた。
「ただいま」って、勝利したみたいに手を上げた。
本当に勝ったんだ。死に勝ったんだ。
「おかえり、お母さん」
「**ゼニア**は?」
「仕事に行ってるよ。**Las Chicas Boutique**で夏休みのバイトしてるんだ。**ゼニア**とファッションは、大の仲良しだもんね」
「そう。**ゼニア**が自分の人生で何か建設的なことをやってて、嬉しいわ」
お母さんはソファーに座った。俺はキッチンに行って、水を持って行った。