準備
もう夕方でさ、太陽が沈み始めて、空全体が赤とかオレンジとか、すっごいキレイな色になってたんだよね。そろそろ、ジョシュとデイジーの家に向かおうとしてたんだけど、デイジーのこと、どうやって話そうか、全然わかんなかったんだよね。デイジーのことについて、ロイヤルなのに捜査止められないって、マジありえないし、ムカつく。グレイが言うには、色々理由はあるらしいんだけど、一番ありそうなのは、あたしたちが個人的に仲良いからなんだって。グレイは、普通なら捜査止めるように頼めるんだけど、相手はあたしたちと近すぎるからって、何もしてくれないんだって。最悪の場合、デイジーがもっと悪いことになっちゃうかもしれないんだって。
あたし、自分が原因みたいな気がしてて。グレイは何度も違うって言ってるし、本当はグレイのパパのせいだって。でも、あたしを傷つけようとしたのは事実だし、あたしは腕折れただけで、他の人たちはもっと苦しんでるんだよ。あいつがまた何か企む前に、捕まってくれるといいんだけど。もう誰も傷つかないでほしいんだ。
グレイが、あたしを城の裏口から連れ出してくれたんだ。もう出ようって。あんまり人いないから、安全だって。ルパートに見つかるリスクも減らせるからって。ま、城って言っても、もうほとんど残ってないんだけどね。あたしたちは、今まで使ったことのない裏通路を進んでいくんだけど、こんなのあったんだ!あたし、グレイが最初に見せてくれた城のツアーみたいなやつ、全然覚えてないんだけど。そういえば、もう7ヶ月も経ってるんだ!色んなドラマがあって、忙しかったから、あっという間だったんだよね。最後の通路を抜けると、両開きのドアがあって、その前に、物々しい警備の人たちが2人立って、お辞儀してた。グレイが言うには、セキュリティを強化したんだって。こんなにすごいとは思わなかった。目の前に現れたものを見て、ちょっとパニックになっちゃった。車だよ。
「こんばんは、マイロイヤルハイネス。目的地までの移動手段について、色々な選択肢を検討した結果、この無印の車両が最も安全であると判断しました。セキュリティが同行しますが、少し距離を置いてついていきます」って、その人が説明してるんだけど、全然頭に入ってこなかった。あたしの頭の中は、事故のことばっかりでぐるぐる回ってた。
事故以来、初めて車に乗るんだ。ルパートに見つかって、また事故起こされたらどうしよう?ただの事故で、またクラッシュするかもしれないし?車に細工されてて、クラッシュするんじゃないかって?グレイが、あたしを建物の横に引っ張って、あたしの心配事を遮ってくれた。
「愛してるよ、大丈夫。全部約束するよ。チームは車の必要なチェックを全部終わらせてるし、あたしたちの前のセキュリティが、周りの安全を確認してくれるから。夜になる前に出発するから、ルパートに見つかることもないよ」って言って、安心させようとしてくれたんだけど、あたしは首を振って、手が震え始めた。頭の中では、事故のことが何度もリプレイされてた。「愛してる、聞いて。万が一、そんなことになったら、もちろんそんなことにはならないけど、あたしが守るから、何も起こらない。お願いだから、信じて。愛してる、あたしは君を危険な目に遭わせたりしないよ」って言って、あたしを落ち着かせようと、おでこをくっつけてくれたんだけど、なんか効果あったんだよね。
あたしは床を見てうなずいて、手が震えるのを止めようとした。グレイは笑顔で、あたしの頭に優しくキスをして、パーキングしてある車に連れて行ってくれた。スーツを着た人がドアを開けてくれて、あたしはグレイの方を見たけど、グレイは笑顔でうなずいてくれた。あたしは車の方を見て、ゆっくり乗り込んだんだけど、全身がまだ震えてて、グレイが隣に来てくれた。大丈夫だって言ってくれて、シートベルトをしてくれたんだけど、手が震えすぎてて、あたし、留め金つけられそうになかったんだよね。ちゃんとシートベルトをしたら、グレイが腕を回して、あたしを抱きしめてくれて、車が城から出て行くのと同時に、心臓の鼓動も速くなってきた。
「大丈夫だよ、愛してる。約束する」って、あたしに囁いてくれた瞬間、記憶がよみがえってきたんだ。
カイルとあたしは車の後ろに乗ってて、カイルはあたしを強く抱きしめてくれてたんだ。真っ暗で、どこに行くのか全然わかんなかった。あたし、めっちゃ怖かった。前の席には男の人が2人いて、お父さんが運転してて、サイラスが隣に座ってた。
「なんで、うちの子どもたちをこんなとこに連れてきたんだ?」って、お父さんがサイラスの方を見て聞いたら、サイラスは嫌そうな顔をして、あたしたちの方を一瞥して、ため息をついたんだ。
「ま、お前のバカなミスのおかげで、あんなクソみたいなガキどもができたわけだし、悪い状況から何かいいことでも作ろうと思ってな。でも、あたしの会社に入る前に、もっと強くならないと、弱虫ばっかりだ!」ってサイラスが叫んで、あたしは鏡越しにお父さんがあたしたちの方を見て、首を振って、また道路の方を見てたんだ。
「カイルはいいけど、クララはまだ小さいんだぞ、サイラス」って、お父さんがあたしの震える顔を鏡越しにもう一度見たんだ。
「おいおい、そんなこと言うなよ。女の子だからって、できないことなんてないんだぞ。もし女の人が聞いたら、金属パイプで頭叩かれるぞ」ってサイラスが言うと、お父さんは目を回して「マジでそれな。でも、誰の前で何言うかってのは、ちゃんと気をつけろよ。すぐ喧嘩したがるやつもいるからな。ま、あたしは喧嘩はしたくないから」って、またシートに座り直した。
「それで、今回の仕事はどんなんだ?」って、お父さんがちょっと気まずい話題を変えようとしたら、サイラスはまた前のめりになった。
「例の金持ちのやつの仕事で、今回はちょっと違うんだ。誰か傷つくかも…多分」ってサイラスは肩をすくめて、窓を開けて、車の中に冷たい風を入れた。
「サイラス、ロバーツの件の後、人を傷つけるような仕事はしないって言っただろう。あいつの家族にしたこと、今でも忘れられないんだ。あたし、もう子どもがいるんだぞ…」って、お父さんが言いかけたけど、サイラスはすぐに遮ったんだ。
「お前のかわいいガキどもか。今回の仕事を見れば、あいつらにとってもいい経験になるだろうし、だから連れてきたんだ。それに、さっき言っただろ?誰か傷つくかもしれないって…多分。もし何かあったら、仕方なくってことだ。そういうことだってことを、お前に伝えてるんだよ、ウェス!」って、お父さんに言い聞かせようとしてたんだ。「あたしたちも有名になりたいだろ?あたしは、金持ちになって人生を楽しみたいし、お前は…あいつらのためだろうけど、なんでか知らんけど。この男と仕事すれば、名前が売れるんだ。仕事断るわけにはいかないんだよ。そうすれば、逆効果になるし、よく考えたら、国のためにもなるんだ」って、あたしのお父さんの顔を指さしながら、いつもの笑顔で言ったんだ。
「今回の仕事の内容、全然教えてないぞ」って、お父さんは一瞬サイラスを見て言った。
「細かいことは気にすんな。今回、この男は自分の土地を渡そうとしなかったから、焼き払うんだ。そいつの名前は…あったあった、ルパート・バインズってやつだ」って言った瞬間、記憶から呼び戻された。
あたしはすぐにグレイの車に戻って、ルパートのバインズって言葉を聞いて、目を見開いてしまった。サイラスとあたしのパパが、あの日、グレイのパパを助けたんだって。
そして、あたし、そこにいたんだ!