知りたくなかった
エリックとあたしは、しばらく部屋に座ってた。最初はグレイのことかなにかで外が騒がしかったのに、今は変に静かになっちゃって。あの時はまだ、ちょっとだけあたしのオオカミのクイーンモードが残ってたと思うんだけど、少し落ち着いてきたら、グレイがあいつらを攻撃させたことを後悔し始めてる。そう、あたしを傷つけようとしたのは知ってるし、グレイがいてくれたのはラッキーだったけど、ただ気絶させてガードを呼ぶってこともできたはず。あの状況には、そっちの方がもっと適切だったと思うんだよね。特に、今裁判やってる最中だし。
陪審員はまだ評議中で、そっちの方が緊張しちゃうんだよね。あたしが、デイジーが誰かを傷つけようとするような子じゃないってことを、ちゃんと伝えられたといいんだけど。エリックは、あたしがあんな一面を持ってるなんて知らなかったって言ってたし、正直、あたしも自分があんな一面を持ってるとは思ってなかった。前にも使ったから、あたしがもっとタフな面を持ってるのは知ってたけど、役人たちが床に倒れてるのを見て、あんなに冷酷になれるなんて思わなかったんだ。あたしって悪い人なのかな? デイジーに言われたことに対してまだ怒ってたから、ただそれに任せちゃったんだよね。グレイはクイーンとして、そういう風に行動しなきゃいけない時もあるって言うけど、あたしはそれでも、ああいう風になれるのは好きじゃないんだ。
ドアをノックする音がして、ガードが入ってきた。陪審員は戻る準備ができてるんだけど、グレイかあたしがいないと始められないって言ってた。これで、グレイはいったいどこにいるんだよ!? って思っちゃうよね。でも、彼らを待たせるのも嫌だし、デイジーがどうなってるのか知りたかったから、一人で行くことにした。またあの小さなバルコニーに出ると、今度はエリックとあたしだけだった。裁判所の方なんか見ないで、あたしはただドアを見つめて、グレイが入ってこないか待ってた。でも、彼は来なかった。エリックはあたしの後ろに座ってて、判事が陪審員に評決を尋ねるのが聞こえた。それがきっかけで、あたしは向きを変えて、何が起こってるのかやっと見ることができたんだ。
そこで、ジョシュがいないことに気づいた。ジョシュがこんな風にデイジーを置いていくなんて、何か悪いことがあったに違いない。まさか、グレイがあいつらを本当に傷つけたとか言わないでよね。もしかしたら、あいつらがここにいないのは、役人のせいじゃないのかもしれない、何か別のことがあったのかも。
「無罪」と陪審員の男が言うと、あたしの心配な考えからハッと我に返り、顔には笑顔があふれた。
デイジーを見ると、彼女はテーブルに頭を乗せて泣いていた。少なくとも今回は、嬉し涙だった! エリックは立ち上がって、すごいねって言って、ちょっと確認したいことがあるからって。あたしはデイジーに手を振ると、彼女は裁判所から出て行くところだった。自由になったんだ! 誰かがあたしの後ろのバルコニーに入ってくるのが聞こえた。最初はエリックかと思ったんだど、振り返ると、あたしは前に会ったことがない男だってわかったんだ。
「ここから全部見えるんだろ?」 彼は裁判所を見回しながら尋ねてきた。最初から緊張はしなかったけど、ちょっと誰だかわからなくて混乱しちゃった。「グレイがそこでやったことを見たよ。初めてじゃないんだろ?」 彼はグレイがいた場所に座り、あたしはさらに混乱し、緊張感がついに体を乗っ取ってきたんだ。
「何の話をしてるの?」 あたしはついにその男に話しかけた。彼が来てから、まだ何も言ってなかった。「
彼はあたしの顔を見つめて、微笑んだ。見覚えがあるんだけど、誰だかわからなかったんだ。
「グレイはちょっとしたことで、役人でも、アドバイザーでも、気に入らないやつなら誰でも攻撃するんだ」 彼はため息をつき、椅子に寄りかかって話した。そしてあたしの方に向きを変えて、笑顔を見せた。「知らないんだな」 彼はあたしのすごく混乱した顔を見て笑ったんだ。
「わかった、あなたが誰で、ここで何をしてるのか知らないけど、お願いだから、出て行ってもらえないかな?」 あたしが言うと、彼は首を振って、判事が裁判所から出て行くのを見てた。つまり、部屋にはあたしと彼しかいないってこと。
「自分の番になった男がどんな男か知る権利はあると思うんだが、どう思う?」 彼は尋ねてきて、あたしは部屋を見回し始めた。そしたら、マインドリンクできることを思い出したんだ。
「グレイ、あなたがどこにいるのか、何をしてるのかわからないけど、この男がバルコニーに近づいてきて、あなたがどんな男か知る権利があるって言ってるの」 あたしは彼が何とか現れることを願って、急いでマインドリンクした。
「多分、彼が来るまであまり時間がないだろうな」 彼は笑って立ち上がった。あたしは椅子から飛び出して、ドアに向かって駆け出したけど、出る前に腕を掴まれた。「ただ真実を伝えたいだけなんだ。そうすれば、彼がいかにひどい男か分かるはずだ」 彼は言い、廊下から走ってくるのが聞こえた。この人も聞こえたらしく、あたしをバルコニーの端に引っ張って行ったんだ。
数秒後、エリックがドアから走ってきた。彼の目がその男に落ちると、顔には不安が浮かんだんだ。
「ここで何してるんだ?」 彼は男を上下に見ながら尋ねた。エリックがこの男のことをどこかで知ってるんじゃないかって思うのは、あたしだけじゃないはず。
「クイーンは真実を知る必要があるんだ。彼の身に本当に何が起こったのか知らないのは、彼女だけみたいだからな」 その男はエリックをまっすぐ見て言った。エリックの顔は真っ白になったから、誰かとマインドリンクしてるんだ。
「誰に何が起こったの?」 あたしは腕を掴まれたままのその男を見て尋ねた。「あなたが何を言いたいのか聞くから、お願いだから、あたしを離して」 あたしは彼の腕を見て、それから彼の顔を見上げて言った。彼は頷いて、あたしを解放してくれたんだ。
「やめとけよ、クララ。この変な男が言うことなんて聞きたくないだろ」 エリックは冗談っぽく笑って、その男を指差した。彼の反応からすると、あたしは本当にこの男が言うことを聞きたかったんだ。
「いや、君たちみんなじゃなく、彼女はあたしの言うことを聞きたがってるんだよ!」 その男はエリックに怒って言った。エリックの顔はまた真っ白になったから、グレイと話してるんだろうね。
「聞いてるよ」 あたしは悲しそうな目でその男を見て言った。彼が知ってることを全部あたしに話したいだけだってことがわかったし、あたしもだんだん興味が出てきてたんだ。
「あたしの兄は殺されたんだ。彼はただ自分の仕事をやろうとしただけなのに、何かの手違いでやりすぎたんだ」 彼は説明し、話し始めると涙が溢れてきた。「彼しかいなかったのに、もういないんだ」 彼は泣き、エリックは会話から抜け出して、また話し始めた。
「クララ、信じてくれ。この男は自分が言ってるような人間じゃないんだ。彼が言おうとしてることは全部嘘だよ」 エリックはあたしに出て行くように懇願してきたけど、泣いてるこの男を置いていくことはできなかったんだ。彼は本当に、あたしにはあまり何も言ってないし。
「あなたの兄は、あたしとあたしのメイトに何の関係があるの?」 あたしはエリックを無視して、彼に尋ねた。エリックは明らかに不機嫌だったけどね。
「あたしの兄さんは、あなたがクイーンになったばかりの頃、あなたと密接に働いてたんだ。そして、彼はやりすぎたんだ」 彼は泣き、それが原因で考え始めた。最初にあたしと働いてて、今はもういない人って誰だ?
「あなたの兄の名前は?」 あたしはその男を見て尋ねた。すると、後ろにいたエリックがまた話し始めた。
「クララ、お願いだから」 彼は懇願し、バルコニーの端にいた男は再び話し始めた。
「彼の名前はマサ-」 彼は言い始めたんだけど、言い終わる前にエリックが彼に走り寄り、バルコニーから突き落としたんだ。彼は地面に落ちたんだ。
「エリック!?」 あたしは叫び、ドアから飛び出して、大きな階段を駆け下りた。今日、あの階段を何回も走ったと思う。
裁判所に向かって走ると、本当にドアにたどり着いた。でも、中に入る前に、誰かに捕まえられて引き止められた。振り返ると、息を切らしたグレイが、あたしを後ろから抱きしめてたんだ。
「愛しい人、それは君が見たくない光景だよ」 彼はあたしに言い、あたしが彼に抵抗しようとした。「彼は、あたしの愛しい人にはならないだろう。あの高さから落ちたら、即死だよ」 彼は言い続けて、エリックが階段を降りてくるのを見て、あたしは彼に注目したんだ。
「なんでそんなことしたの!?」 あたしは彼に向かって走り出したかったけど、グレイが今、あたしをエリックから守ってるんだ。「
「そ、それは、君を傷つけようとしてたから」 彼は言ったけど、本当のことじゃない。彼はあたしと話しながら、文字通り泣き叫んでたんだ。
「嘘よ! あたしに何か隠してることについて話そうとしてたんだよ!」 あたしは彼に叫んだけど、そして思い出した。彼はグレイがしたことについて話そうとしてたんだ。「あたしを放してよ。あなたたちは何かを隠してるし、人まで殺したんでしょ」 あたしはついにグレイの腕から抜け出すことができた。どうやったのかわからないけどね。
「愛しい人-」 グレイは言おうとしたけど、あたしは後ずさりしたんだ。
「いや! あなたたち両方とも、あたしに近づかないで!」 あたしは叫び、裁判所からドアを飛び出して、家に向かって走り出した。もう暗くなってたけど、あたしは気にしなかった。
あたしは何かを隠されてるんだ。