第45章
「あと何時間か歩くことになる」タイガーは、申し訳なさそうにそう言った。「でも、今のところ、安全なのはそれしかないんだ」
自分たちの状況の重みが、再びのしかかってきて、重苦しいものになった。オリビアを見つけられた安堵感はすぐに薄れ、今は自分たちの不安定な状況を考えると、気が滅入る現実しかなかった。
彼らは逃亡者で、怒れるボビーとその手下たちが、きっと彼らを必死に探しているんだろう。
でも、恐怖と不安にも関わらず、サラの中に反抗心が燃え上がっていた。ボビーには負けたくない。彼らに壊されたくもなかった。ここまで来れたんだから、諦めたくなかった。
サラは深呼吸をして、肩を上げた。そして、「わかった」と、妙に落ち着いた声で返事をした。「昼寝しよう。明日の朝は、長い道のりが待ってる」
夜の残りの時間は、浅い眠りの連続で、古い小屋のきしみや外の葉のざわめきで何度も目が覚めた。
サラは、最初の光が入り口を突き抜け、濡れた床に長い影を作ったときに、動く時だと悟った。
オリビアはサラの手を握りしめ、まだ眠気まなこで、地下室から出てきた。彼女は冷たい朝の空気に震えたけれど、太陽が昇り、空をオレンジとピンクの筋で彩るのを見て、希望の光が差していた。
サラは、決意に満ちた眼差しで、自分たちの小さなグループを見回した。オリビアは、青ざめて震えていたけれど、無事だった。デリックは、顔に心配の色を浮かべていたけれど、心は折れていなかった。彼らの不本意な案内人、タイガーは、過去を手放すことのできない男だった。
逃亡者の多様な集団であることに加えて、彼らは家族でもあり、愛、忠誠心、そして自由への渇望において団結していた。
サラは、「私たちならできる」と、新たな決意を込めた声で言った。「ここを出る。助けを求める。ボビーのやったことの責任も問う」
北への困難な旅は、彼らの感情と体力の試練となった。旅の途中、彼らは濃い植生の中を歩き、急流を渡り、食料を探さなければならなかった。
隠れ家のイメージは、彼らの心に重くのしかかり、逃げている危険を常に思い出させた。
しかし、恐怖と疲労のさなか、予期せぬ友情の瞬間もあった。サラとデリックは、生き残るために互いに頼らざるを得なくなり、絆の中に新たな強さを見つけた。
当初は引っ込み思案で怖がっていたオリビアは、彼らの世話のもとで花開き始めた。彼女は食べられる植物を見分けることを覚え、捨てられた小屋から盗んだ針と糸で、彼らの間に合わせの服を繕うのを手伝い、デリックが作った粗末な罠で小さなウサギを捕獲することさえできた。
やっと罠師の小屋にたどり着き、疲れ果てたけれど興奮したサラは、タイガーが火をつけた小さな火の周りに集まった。
借りたジャケットをまとい、細い体にだぶだぶのオリビアは、先に捕まえたウサギで作った熱いスープをすすった。
デリックは、荒削りの丸太の壁に寄りかかり、慣れた手つきで彼らの間に合わせの武器を磨いていた。
骨をむしばむような疲労にも関わらず、サラの胸に温かさが灯った。彼らは、今のところ安全だった。
罠師の小屋は、地下室にはなかった安心感を与えてくれた。頑丈なドアがあり、閉めることのできる小さな窓があり、原始的な暖炉さえあった。
突然、タイガーの手が上がって、パチパチと音を立てる火と会話のざわめきを静止させた。彼の心配そうな表情が、小屋の周りの森にちらついた。
彼は、声を絞り出して、「聞こえたか?」とつぶやいた。
サラが聞こえたのは、風の中の木の葉のざわめきだけで、耳を澄ましても何も聞こえなかった。「何が?」
「かすかなエンジンの音だ」とタイガーは答え、眉をひそめた。「何でもないかもしれないけど…」
その言葉は、言外の恐怖を孕んだまま、空中に重く漂った。ボビーの執拗な追跡の記憶は、まだ彼らの心に鮮明だった。
サラが自分の不安を口に出そうとしたまさにその時、デリックが以前の隠れ家からかろうじて救出した小さな、使い古されたラジオからノイズが走った。彼はダイヤルをいじり、顔をしかめた。
「これは… ブラックさん?」彼は、かろうじて聞こえるほどの声でつぶやいた。
サラの心臓がドキリとした。おじいさんが?どうして…?彼女が質問する前に、荒々しいけれど聞き覚えのある声が小屋に響き渡った。
「デリック?サラ?聞こえるか?」ラジオがパチパチと音を立てた。
「おじいちゃん?」サラは涙を浮かべながら、深呼吸をした。息を切らしながら、突然、激しく安堵感が押し寄せてきた。
少し心配そうな様子で、ブラックさんは言った。「私だよ、ダーリン」。「ディディが連絡してくれたんだ。何があったのか聞いたよ」
サラはデリックとタイガーを見て、言葉にしない質問が空中に漂っていた。ディディがどうやっておじいちゃんと連絡を取ったんだろう?でも、どうやって?
「僕らは、あの施設の北にある、古い罠師の小屋にいるんだ」とデリックは、声を詰まらせて説明した。「今のところ安全だけど…」
「でも、ボビーの手下が追ってるんだな」とブラックさんは言葉を継ぎ、声は厳しい。「心配するな、助けを送る。すぐに家に帰れるぞ」
安堵感がサラを圧倒しそうだった。家。その言葉は、彼女の心にこだまし、慰めと安全の灯台となった。家、おじいちゃんと、双子たちと。
「私たちと一緒に、もう一人いるんです」とサラは、感情で声が詰まりながら言った。「私の妹、オリビア」
少しの沈黙が続いた。それから、ブラックさんの声が戻ってきた、今度は柔らかく。「もちろん、彼女も連れて帰ってくれ。みんな」
サラの喉に塊ができた。彼女のおじいちゃんは、ためらいもしなかった。彼はみんなを受け入れる、質問なしで。視界がぼやけ、涙が溢れてきた。
数時間後、午後の太陽が沈み始めると、森の静けさはエンジンの轟音によって破られた。黒い大きな車が、後ろに砂埃を巻き上げながら森から現れた。背の高い、屈強な男が運転席のドアの後ろに立っていた。
「ブラックさん!」サラは叫び、飛び起きた。オリビアは彼女の腕にしがみつき、驚きで目を大きく見開いた。
ブラックさんは、顔に心配と安堵の入り混じった表情を浮かべ、彼らに近づいてきた。彼の力強い腕が安全な場所となり、サラを力強く抱きしめた。
彼は、「もう大丈夫だ」と、荒々しいけれど熱のこもった声でささやいた。
オリビアは、よそよそしく横に立っていたが、彼が彼女に向き直ると、彼女の前に立っていた。「そして、オリビアさんだな」と彼は付け加え、手を差し出した。「家族へようこそ」
控えめな挨拶で、オリビアはブラックさんの手を受け入れた。彼女の最初の躊躇は、彼の視線の温かさの中で消え去った。「ありがとうございます」と彼女は、ほとんど聞こえない声でつぶやいた。
家への帰り道では、安堵と疲労が混ざり合っていた。サラは、彼らが子供の頃の家に到着し、よく知っている私道に到着したとき、緊張が解き放たれるのを感じた。彼女は家にいた。彼女は安全だった。
玄関のポーチに立って、乳母を待っていたのは、双子たちで、彼らの顔は好奇心と心配が入り混じっていた。彼らは突然、家にいる見知らぬ人であるオリビアを見つめた。
オリビアは、ポーチでつま先立ちで跳ね回っている二人の小さな姿に、恥ずかしそうに微笑んだ。サラはひざまずき、心の底から安堵と保護心が沸き上がった。「イーサン、レオ」と彼女は優しく言った。「こちらは、あなたのオリビアおばさんよ」
双子たちは、同じ大きさの青い目と金髪の乱れの中で、オリビアを魅惑と警戒心の入り混じったまなざしで見つめた。
彼らは、自分たちの小さな家族の新しいメンバーにどう反応すべきか分からなかった。
「こっちにおいで、みんな」とブラックさんは促し、体をかがめて腕を広げた。「オリビアおばさんに、大きな歓迎のハグをさせてあげよう」
ためらいがちに、イーサンがよちよちと前に出て、ふっくらとした腕を伸ばした。オリビアは、顔を和ませ、優しく彼を抱きしめた。彼は彼女の肩に顔を埋め、最初の不安は、彼女の慣れた匂いから安心感に変わった。
レオは、決して仲間外れになりたくないように、よちよちと歩み寄り、オリビアの足を掴んだ。彼女はくすくす笑い、もう片方の腕を彼に回した。「オリビアは、新しいファンを二人獲得したようだね」とブラックさんはにこやかに言った。
サラは、その光景を見て、喉にこぶができた。すべてを経験した後、彼らはついに家にいた。
双子たちは、幸せなことに混乱に気づかず、必要な気晴らしを与え、彼らが一生懸命に戻そうとしている正常さを思い出させてくれた。
それからサラとオリビアは、お互いの隣のソファの端に寄り添った。双子たちの規則正しい呼吸は、ランプの暖かい光で満たされた、安らかな空間のように、心を落ち着かせる旋律を奏でた。
オリビアの手を握りしめ、サラはつぶやいた。「まだ、ここにいるのが信じられない」
オリビアは叫んだ。「私もだよ」彼女の声は少し震えた。「逃げられるとは思わなかった」
サラは手を伸ばし、オリビアの顔から一本の髪の毛を取り除いた。彼女は、情熱的な声で宣言した。「私達、やったね。もう大丈夫だよ」
オリビアは、涙を目に浮かべ、サラのハグに身を寄せた。「ありがとう」と彼女は震える声で言った。「すべてに」
サラは妹を抱きしめ、感謝の気持ちで胸がいっぱいになった。想像もつかない困難を経験したけれど、彼らはチームとしてそれを克服した。今、彼らはブラックさんと双子たちをそばに置いて、やり直す機会を得た。
サラは、「私たちは乗り越えられる」と、決意の固い声で言った。「一緒に」
最後に、サラは暖炉で火がパチパチと音を立て、壁に渦巻く影を作っているのを見て、自分自身を解放した。長い間、初めて楽観主義が現れた。これから先の旅は困難で長引き、再建と癒しを伴うだろうけれど。
彼らは安全だった。彼らは一緒だった。そして、今のところ、それがすべてだった。