第50章
「T&Tの本社にズカズカ乗り込んでって文句言うわけにもいかないし」ってデリックがニヤリと笑いながら言った。「それに、俺らは逃亡中だしさ。街に入った瞬間、警察がどこにでもいることになるし」
誰かが言った。「そうでもないかも」って、後ろから声がした。マーサがドアのところに立って腕を組んでて、みんなの目を釘付けにするような決意した顔つきだった。
「T&Tの中にコネがあるの? 何か関われそうな人とか、捕まらないようにできる人とかいないかな?」ってサラがちょっと期待しながら聞いた。
マーサは小さくうなずいた。「昔、あそこで警備員やってたの。まだ、ちょっと頼りになる人が何人かいるのよ」
デリックは口を開いた。「つまり、俺が理解してる限りでは、君が言ってるのは…」って、顔に少しずつ笑顔が広がっていった。
「誰か内部の人間に協力してもらえるかも」ってマーサは、ゴツゴツした声で言った。「状況を監視して、ブリッグスの行動を報告してくれるような」
「でも、誰?」ってサラは聞いた。「俺らを助けるために自分の仕事を危険にさらす気があって、土壇場で裏切ったりしないような人って誰?」
マーサはサラの目を見て、何か知ってるような光を瞳に宿した。「恨みがある人。ブリッグスの帝国が内側から崩壊していくのを全然気にしないような人」
サラの顔にゆっくりと笑顔が広がった。「それ、最高じゃん。でも、どうやってこの…不満を持ってる従業員を見つけるの?」
タイガーが身を乗り出して、目に決意をきらめかせた。「それは俺に任せて」って言った。「俺は、街のちょっと怪しい場所にいつもいる連中と顔見知りなんだ。きっと、ブリッグスに何か文句があるやつがいるはずだよ。彼は嫌われてるからな。彼に弱みを握られてるやつらにだけ恐れられてるんだ」
その新しい情報に、重苦しい静けさが部屋に広がった。前にはほとんど打ちのめされそうになっていた絶望感が、今は抵抗の光に変わった。逃亡者ではあったけど、無力ってわけじゃなかったんだ。
「OK」ってサラがしっかりと言った。声には新たな決意がこもってた。「状況が変わったわ。もう隠れてるだけじゃない。反撃するんだ」
デリックは、いたずらっぽい笑みを浮かべながら、「作戦名:家をぶっ壊せ、なんてどう?」って言った。
オリビアは両手を叩きながら興奮した。「始めましょう!」
マーサですら、少しだけ口元に笑みを浮かべて、小さくうなずいた。
新しい決意を持って暖炉の周りに集まって、みんなで戦略を練り始めた。簡単なことじゃないし、自分たちに有利な状況でもなかった。
でも、街を出てから、自分たちの未来を決められるように感じたんだ。
ボビーとマーシャル・ブリッグスを暴いて、T&Tを守り、自分たちの人生を取り戻すんだ。
戦いはまだ終わってないけど、古いロッジの揺らめく火の中で、希望が灯り始めた。
サラは電話をかけたまま、ロッジの風化した木壁の上で燃え盛る炎が踊っていた。深く息を吸い込み、ブラック氏の番号に電話をかけた。2回鳴ってから、彼のいつもの、しわがれ声が彼女の耳に響いた。
「サラ? 大丈夫か?」
「ブラック氏」ってサラは話し始めた。声には切迫感と不安が入り混じってた。「ちょっと、事態が進展がありまして」
彼女はすぐに、詳細を彼に説明した。デリックとサムの会話、ボビーがマーシャル・ブリッグスに所有権を譲渡する計画、T&Tに内部の情報源を確保しようとしていること。
彼女の説明の後、思慮深い沈黙が続いた。最後に、ブラック氏が口を開いた。
「このマーシャル・ブリッグスってやつは」って彼は低いゴツゴツした声で言った。「危険な男だ、サラ。これでゲームが完全に変わるな」
「わかってます」ってサラは答えた。「ここで座って、彼らがT&Tを解体していくのを見てるわけにはいかないんです」
「もちろんそうだな」ってブラック氏は同意した。「だけど、気をつけろよ。ブリッグスってやつは舐めちゃいけない相手だ」
「リスクは承知してます」ってサラは彼を安心させた。「でも、チャンスでもあるんです。ボビーがいないなら、これを利用できるかもしれない」
「何を利用するんだ?」ってブラック氏は尋ねた。
サラは、ボビーに対する証拠を集める計画を説明した。彼のオフィスからの不利なファイル、脅迫の録音、そして、自分たちが雇おうとしている不満を持っている従業員からの証言。
「素晴らしい」ってブラック氏は、声のトーンを強めた。「持っているものを全部集めろ。すべてのファイル、テープ、ボビーの不正行為につながるすべての証拠を。彼の熱心な支持者でさえ現実を認めざるを得なくなるような、説得力のある主張をしなければならない」
一瞬の沈黙の後、電話の向こうから深い笑い声が聞えた。「君は頭がいいな、サラ。そうだ、できる限りのものを集めろ。ボビーが詐欺師だってことを暴け。メディアを利用して、世間の怒りを生み出せ。彼の所有権の譲渡を毒杯にするんだ」
「それも考えてました」ってサラは、少し安堵した声で言った。「でも、かなり難しいと思います」
「そうかもしれない」ってブラック氏は認めた。「だけど、それが君にとって一番のチャンスだ。進捗状況を教えてくれ」
「デリックのことは?」ってブラック氏は尋ねた。「彼は…家族と連絡を取ったか?」
サラはデリックを見た。デリックは部屋を歩き回っていて、深い皺が顔に刻まれていた。彼はスマホを抱きしめ、怒りと悲しみが入り混じった表情をしていた。
「彼は…今、お父さんと話してます」ってサラはためらいがちに答えた。
「いいだろう」ってブラック氏は言った。「デューク氏が、この戦いにおいて、予想外の味方になるかもしれないな」
「そうします」ってサラは約束した。「ありがとうございます、ブラック氏。すべてに」
電話を切って、サラは他の人たちに向き直り、顔には新たな目的意識が刻まれていた。「ブラック氏も賛成よ。ボビーに対する証拠をできるだけたくさん集める必要があるわ。多ければ多いほど、私たちの主張は強くなる」
一方、デリックとお父さんの会話は、スムーズとは程遠かった。
「待て、ボビーが俺の実の息子じゃないってことか?」ってデューク氏の声は、痛みとショックが混ざり合って、電話から響いた。
「捜査官がそう言ってたんだ」ってデリックは緊張した声で答えた。「それに、ボビーには全然違う父親がいるらしくて、マーシャル・ブリッグスって言うんだって」
重苦しい沈黙が回線に降りた。デリックはまるで、お父さんが椅子に崩れ落ち、その衝撃に押しつぶされているような気がした。
「でも…どうして?」ってデューク氏は、やっとのことで絞り出すように言った。声には感情がこもっていた。「俺はボビーを赤ん坊の頃から育ててきたんだぞ。あいつは俺の息子だ」
「わかってるよ、お父さん」ってデリックは同情した。「これはきっとショックだろうね」
「ショックだって? そんなもんじゃないぞ!」ってデューク氏は叫んだ。「すべてが変わっちまう。あんなに長い年月…嘘に無駄にしたのか」
デリックは、お父さんの声の痛みに悲しさを感じた。二人の関係はギクシャクしてたけど、それでも彼は裏切られたことの痛みを感じたんだ。
「お父さん」ってデリックは慎重に提案した。「もしかしたら、この状況を俺らにとって有利にできるかもしれない。ボビーがお父さんの息子じゃないなら、もう守ってやる必要はないんだから」
また長い沈黙が続いた。それから、デューク氏が口を開き、声は決意で固まっていた。「そうだな、デリック。これで状況が変わる。俺は真実を知りたい。DNA鑑定を受けたいんだ、本当のやつを、改ざんできないやつをな」
デリックの心は高揚した。もしかしたら、もしかしたら、お父さんは心を動かせるかもしれない。真実が、どんなに苦くても、ボビーの支配を打ち破る鍵になるかもしれない。
「お父さん、必ずやるよ」ってデリックは保証した。「結果が出たら、次の行動を決めよう」
電話を切った後、彼の目には希望が宿った。作戦があって、味方が増えてきて、そして、ボビーが丹念に作り上げた世界を粉々にするかもしれない真実があったんだ。
重苦しい沈黙が部屋に降りた。オリビアは、ぎこちなさを感じて、サラに寄り添った。
「デューク氏は…まだボビーを自分の息子だと思ってる」ってサラはついに言った。声は柔らかかった。
「彼はボビーを赤ん坊の頃から育ててきたんだから」ってデリックは、感情のこもった声で答えた。「それは彼にとってはショックだろうな」
火をじっと見つめていたタイガーが口を開いた。「もしかしたら、このショックを俺たちに有利に利用できるかもしれない。動揺したデューク氏は、ボビーに対する強力な武器になり得る」
サラは考え深げにうなずいた。「そうかもね。でも、デューク氏の感情を操るようなことはしちゃダメよ」
「そうだね」ってデリックは言った。「お父さんは今、怒ってるかもしれないけど、冷酷な人間じゃないんだよ。すべての情報を彼に提示して、彼自身で決断させてあげないと」
自分たちの将来の計画について話している間、慎重な希望の感情が部屋を包み込んだ。
まだ勝利には程遠いけど、戦略があって、意外な場所に支持者がいて、ボビーに対する証拠もどんどん増えていたんだ。
戦いはまだ続いてるけど、古代のキャビンの薄明かりの中で、彼らは自分たちの人生を取り戻すために、元気を取り戻したように感じていた。
デリックはロッジから出て、父親との緊張した会話の後に、夜の新鮮な空気の心地よさに感謝していた。スマホを取り出して、よく知っている番号をプッシュした。
「サム? デリックだ」
「デリック! 奥地の状況はどうだい?」ってサムの声が聞こえてきた。いつもの気さくなユーモアが混じっていた。
デリックは乾いた笑いを漏らした。「奥地ってのは、まあそんな感じだな。聞いてくれ、新しい任務があるんだ、かなり緊急なんだ」
彼は爆弾発言について説明し始めた。ボビーの本当の素性とデューク氏のDNA鑑定に対する願望について。