第15章 予期せぬ事故
「文句あるなしに関わらず、アンタには関係ないでしょ」 秦 淮蘭 が 倪裳 が近づいてくるのを見て、前に出て 蘇悦 を庇うように立ちはだかり、噛みつくように言った。
「関係ないわけないでしょ!だって、これは 羅峻 の手柄なんだから、私…」 なんだかんだ、 蘇悦 から見たら、今の 倪裳 はなんか照れてる。
恋する乙女?
ここにいる男は 羅峻 一人。 蘇悦 はすぐに 羅峻 に視線を向け、「もしこの二人一緒になったら、もう終わりじゃん?」って思ってた。
「あらあら、誰と誰? まだまだだね… 倪裳 ちゃん、死なないと気が済まない?」 秦 淮蘭 はニヤニヤしながら茶化した。
「私のこと、何だと思ってんのよ?」 秦 淮蘭 の冷やかしに、 倪裳 は顔色を変えた。
誰だってヒーローに助けられるの好きでしょ、ましてや今回は 羅峻 が絡んでるんだし。 自分の美貌を頼りに、彼女になれたら超ラッキーじゃん。
他のことは置いといて、 蘇悦 のこと片付けるのなんて、指一本でちょちょいのちょいじゃん?
今日の苦労を取り返すために、 羅峻 みたいな大物様に媚び売らないと。
倪裳 はそう思ってたけど、 蘇悦 はそんなこと気にも留めない。 彼女の一番の任務は、本能大学の試験に合格すること。
何か言いたげな 秦 淮蘭 をそっと引っ張って、 蘇悦 は小声で言った。「あのヤバい奴がまだ出てくる前に、何か食べに行く?」
「じゃないと、あいつが出てきちゃったら、もう出かけるチャンスがなくなるかもしれないし」 蘇悦 は本で読んだ、陰食悪魔の特徴を必死に思い出していた。
陰食悪魔って、まず暗くて、一時間後には本体が暗い場所に現れるんだよね。
それに、陰食悪魔が現れたら、どこにいるのかも、どれくらいいるのかも、さっぱり分かんないんだから。
だから、 蘇悦 はまずご飯の問題を解決したい。
もうカロリゼンにきてからほぼ一日経ってるのに、まだ何も食べてないし。 ちょっぴりお腹すいたし。
蘇悦 がもう一度言う前に、 秦 淮蘭 は何も感じてなかったけど、今、提案されて、 倪裳 との喧嘩をあっさり放棄した。
つまんない。
蘇悦 が 秦 淮蘭 を引っ張って何か言って出ていくのを見て、 倪裳 は得意げ。 二人がいなくなったのは、 羅峻 と二人きりになる時間を作るためだったから。
そう考えて、 倪裳 は髪を丁寧に整えて、たまたま付いてしまった埃を払って、洞窟の中で 羅峻 のいる場所へ一歩一歩向かった。
洞窟の外では、 蘇悦 と 秦 淮蘭 が並んでジャングルを歩いていた。 秦 淮蘭 は 蘇悦 の残高がなくなったことを知って、ヘビとか虫とかネズミとかが来ないように、一番安いシールドを100円で二つ買って対策してた。
「小悦悦、食べるものなんて、ネズミくらいしかないじゃん」 秦 淮蘭 は不満げに口を尖らせた。
「そんなにネズミがいるなら、地産地消しちゃおうよ!」 蘇悦 はニヤリと笑った。
「やだ!まだネズミの肉とか食べたくないし…」 秦 淮蘭 は足早に歩き出した。
この場所にはあんまり長くいないほうがよさそう。
「ちょっと待って!」 鏡 を探していたら、突然声が聞こえてきて、 蘇悦 はドキッとした。 名札があるってこと?
「小悦悦、やめてよ!マジでネズミの肉とか食べたくないんだから!」 秦 淮蘭 は振り返ることもできず、まっすぐ前に進んだ。
ずいぶん歩いても、 蘇悦 がついてくる気配がないから、意を決して振り返って 蘇悦 が何してるのか見た。
誰もいない。
「小悦悦? 小悦悦?」 何度も叫んでみたけど、返事はない。
秦 淮蘭 は焦って「 蘇悦 ? 蘇悦 ?」
「どこにいるのよ? 怖がらせないでよ!」
--
洞窟の中。
羅峻 は、空間の袋からいくつか食べ物を取り出して、みんなで分けて食べようとしてた。
蘇悦 と 秦 淮蘭 はどこに行ったんだ?
「 羅峻 様、これは特別に用意してくれたんですか?」 倪裳 が近づいてきて、地面に食べ物がたくさんあるのを見て言った。
内心ではすごいなって思ってる。さすがはトップの御曹司だよね、世界に五個しかない時空カプセルを持ってるんだから。 しかも、自分のことまで気遣って、お腹空くの心配してくれたんだ。
倪裳 の言葉に、 羅峻 は不機嫌になった。
この女、マジで空気読めないな!
「 蘇悦 はどこに行ったんだ?」 倪裳 の質問に答えず、 羅峻 は自分のペットがどこに行ったのか尋ねた。
本当に困ったな。勝手にどこか行っちゃうんだから。もし迷子になったら、大変なことになるぞ。
また 蘇悦 のことか、 倪裳 は一瞬呆然としてから、すぐに理解した。「 蘇悦 って、さっき 秦 淮蘭 に何か言ってたわよね… 私たちの悪口みたいなこと」
「私たちだけで行動したいとか、そういう話もちょっと聞こえたような…」 倪裳 は知らんぷりして答えた。
ふん、たかが 蘇悦 なのに、私と張り合う気? まったく、私みたいな女がいるのに?
絶対に 羅峻 が 蘇悦 と関係を持つことなんて許せないし、ありえない!
「単独で?」 羅峻 は眉をひそめ、大胆だな。
陰食悪魔とか、バラバラになったヘビとか、虫とか、ネズミとかがいる中で、一人で行動するなんて。「この食べ物を分けろ」 羅峻 は洞窟の入り口に向かって冷たく言った。
倪裳 と他の三人は、みんな呆然とした。
これは、自分だけのために用意されたものじゃないの? 倪裳 は口角が下がっていく。
羅峻 様、本当にすごい。他の三人はもう一日中走り回って、お腹が空いてたんだ。みんなで食べ物を探しに行きたいけど、携帯の残高もないし、外はこんなに危ないし。
今、目の前に食べ物が届けられたんだから、びっくりするよね。
「ありがとうございます、 羅峻 様!」 ピンクの服の女の子が真っ先に礼を言って、すぐに食べ物の場所に向かった。
他の三人がガツガツ食べてるのを見て、 倪裳 は 羅峻 に背を向けてムカついてた。
待ってろよ、いつか、 羅峻 を私、 倪裳 にひざまずかせてやる。
「やだ、いや!」
「 蘇悦 がいない!」 秦 淮蘭 は慌てて戻ってきた。洞窟に入ると、中が和気あいあいとしてて、まだ食べ物を配ってる?
目の前の光景に、秦 淮蘭 は一瞬にしてガッカリした。なんでこんな人たちのところに頼って戻ってきちゃったんだろ。
やっぱり、自分でジャングルの中を探すしかない。 秦 淮蘭 は肩を落とした。
一方、 蘇悦 は地面に開いた穴に落ちていった。
いや、正確には、彼女が知らないエネルギー体によってここに連れてこられたんだ。
一秒前まで、自分のいる場所に名札が隠されてないか考えてたのに、次の瞬間、 秦 淮蘭 に話す間もなく、強大な力に囲まれた。
体が動けるようになった時には、地面に開いた穴が目の前にあった。
底が見えないくらい暗くて、空気は薄くて、生臭い匂いがほんのり混じってる。
何かの悪魔の住処かな?
そんなことを考えながら、 蘇悦 はすぐに動きを止めた。
嫌な予感。
マジックモールで魔法を買うことなんてできない。今は、一番弱い魔法でも、自分の命を脅かすことになる。
「ドーン、ブーン」 蘇悦 の目の前で、次々と大きな音が響いてた。