第168章 イヴァンが逃げた
イヴァンが逃げ出すのを見て、スウ・ユエはほっとしたけど、ちょっと後悔も感じた。
あーあ、イヴァンを捕まえられたらよかったのに。
もしイヴァンを捕まえられたら、空のことなんて気にしないやつらがまたアルカディアのインスティンクトカレッジを襲ってくる。
結局のところ、スウ・ユエだって認めざるを得ないんだよね、イヴァンの技術力と戦略は、本当に彼らより上だって。
スウ・ユエの顔にはまた少し落胆の色が浮かんだ。
ルオ・ジュンは最後の教授が手伝ってくれることになって、彼は無意識にスウ・ユエの方を見たんだ。すると、スウ・ユエの顔には隠せない落胆の色が見えて、ちょっと不思議に思って、スウ・ユエの肩をポンと叩いた。
「何考えてんだ?教授、何か言いたいことあるみたいだけど。」
スウ・ユエは弱々しく「あーあ」と返事して、教授の方へ歩いて行って、教授の話を聞こうとしたんだけど、ルオ・ジュンに止められた。
「そんな心配そうな顔して、どうしたんだよ?」
スウ・ユエは悲しそうで、スウ・ユエのことしか見てないルオ・ジュンは、心配せずにはいられなかった。
正直言って、ルオ・ジュン自身も気づいてなかったんだ。ある日突然、一人の女の子のせいで、自分の喜びも悲しみもコントロールできなくなってることに。
スウ・ユエが喜べば、自分も嬉しくなるし、スウ・ユエが悲しめば、すごくナーバスになる。
とにかく、スウ・ユエが幸せなら自分も幸せで、スウ・ユエが悲しいと自分も悲しい。自分の喜びも悲しみも、全部スウ・ユエに操られてるみたいなんだよね。
そう考えると、ルオ・ジュンは困ったように笑った。
いつからだろう、スウ・ユエはこんなにも大切な存在になったのは。
スウ・ユエは暗い顔でルオ・ジュンを見上げて、また暗い顔でうつむいた。
「思ってたんだ。もしイヴァンを捕まえられたらって。だって、イヴァンは悪の根源じゃん。」
そう、イヴァンは悪の根源なんだ。戦争の原因だし、絶対に必要な原因なんだ。
スウ・ユエだけじゃなく、ルオ・ジュンもそう思ってた。
もしイヴァンが空からの人間たちと一緒にアルカディアをめちゃくちゃに攻撃してこなかったら、アルカディアもインスティンクトカレッジも、こんなに寂しい場所にはならなかっただろうに。
「何考えてるか、当ててあげようか。」
まだ悲しそうな顔をしているスウ・ユエを見て、ルオ・ジュンはからかいたくなったけど、あんな顔を見ると、からかうことなんてできなかった。
「多分、泥棒を捕まえるなら、まずボスを捕まえろ、ってとこかな。」
スウ・ユエはしばらく考え込んで、渋々うなずいた。「その通り。」
彼女の考えは本当に、まずイヴァンを倒すってことなんだ。細かいことは置いといて。
でも、まさかイヴァンが逃げ出すなんて。
待てよ、イヴァンがいなくなるのは、そう長くはないはずだ。
スウ・ユエは急に元気になった。
「ルオ・ジュン、イヴァンの居場所をまず探すために、誰か行かせよう!イヴァンがインスティンクトカレッジから空に逃げ帰る前に、まずイヴァンを捕まえちゃおうよ!」
もし運が良ければ、イヴァンを捕まえられるし、それからイヴァンを使って、空の人たちと取引して、アルカディアとの平和共存条約を守ってもらって、アルカディア大陸を簡単に侵略したり、インスティンクトカレッジの生徒やスマホを簡単に傷つけたりしないように頼むんだ。
イヴァンがスマホをめっちゃ悪いことしてるって非難したことについても、スウ・ユエは信じたい気持ちの方が強かったんだ。
彼女はやっぱり、イヴァンの言葉を信じることにした。
そして、あの悪いスマホたちについては、処分したいなら、そんなに難しくはない。
まず、彼らはスマホの使い手なんだから、アルカディア大陸が管理する。自分たちの人間が何か悪いことをしたら、アルカディアが自分で対処する。もし本当に空に申し訳ないことをしたら、アルカディアは空に説明する。でも、もし空がアルカディアにでっち上げの罪を着せようとしたら、空の人たちはもう一度よく考えなきゃいけない。
ルオ・ジュンはまだスウ・ユエの計画を検討しているようだったから、何も言わなかった。
でも、スウ・ユエは我慢できなくて、教授に聞きに行ったんだ。
「教授、今すぐ兵隊を呼んで、イヴァンを止める方法を探しましょう!」
教授はまだ宇宙旅行中で、檻から出てきたばかりで、多くの人が今何が起こってるのか反応できてなくて、ほとんどの人がぼーっとしてた。
でも、スウ・ユエがイヴァンのことを口にした。
イヴァンって名前は、何人かの教授の注意を引いた。
「まさか、あのイヴァンって、君が言ってる?」
教授たちはみんな、思ってもみなかったって感じで、驚いた顔をした。
「まさか、イヴァンが自分から出てくるとはね。」
教授の様子を見て、最初はまだちょっとイヴァンの身分を確信してなかったスウ・ユエも、もう確信したよね、イヴァンは空で高い地位にいるリーダーに違いないって。
だって、こんな状況でインスティンクトカレッジの尊敬される教授たちが、あんなに驚いた顔をするなんて、それしかないじゃん。
「よし、すぐにカレッジの人たちを呼んで、誰かにイヴァンを止めさせろ。それから、上級スタッフと、色んなとこから集まってるスマホたちも呼んで、今の状況について一緒に話し合おう。」
失意から立ち直ったような教授が、その場で命令した。
みんなが順番に動き出して、教授の命令に従って、自分の仕事を手際よくこなしていく。
スウ・ユエはルオ・ジュンに引っ張られて、スマホたちのグループと一緒に、会議室のホールに向かって歩いてた。
彼女は後ろを振り返って見た。あんなに低レベルのスマホたちは、基本的に現場に残って後始末を始めてるけど、彼女は上級スマホじゃないし、ルオ・ジュンの立場と能力から、彼なら上級会議に自由に出入りできるけど、彼女はただの小さなスマホなのに、なんでこんなに力と顔があるって入れるんだろ?
スウ・ユエはちょっと緊張して、自分の手を引っ込めようとした。
「どうしたんだ?」
スウ・ユエの行動を見て、ルオ・ジュンの顔は不思議そうな顔になった。
「あなたが行って。私は入れない方がいいと思うし。先に帰るわ。」
そう言って、スウ・ユエは立ち去ろうとしたけど、予想外にも、ルオ・ジュンにまた引き止められた。
ルオ・ジュンのこの引っ張るアクションは、結構大げさで、すぐにスウ・ユエの周りにいた教授たちの注目を集めた。
スウ・ユエの顔は、一瞬にしてちょっと困ったような顔になった。彼女はルオ・ジュンをつついて、「やめてよ。」
こんなにたくさんの教授たちの前で、二人がこんな絡み方してるのを見られるなんて、どれだけ恥ずかしいことか。
ルオ・ジュンはスウ・ユエのことは無視して、一般の教授に直接言った。
「教授、この女の子は、会議室に入るべきじゃないって言ってるんですが、どう思いますか?」
一般の教授は誰かに呼ばれて、振り返って、ルオ・ジュンが引っ張ってる人がスウ・ユエだって見て、すぐに口を開いた。
「なんだ、この小さな女の子は、私たちの空との戦争で素晴らしい貢献をしてくれたし、自立心も強い。彼女が行かないで、どのスマホが行けるっていうんだ?」
一般の教授が言ったんだから、スウ・ユエは自然に服従する方がいいんだよね。
でも、ルオ・ジュンにあんなことされたから、スウ・ユエはやっぱりちょっと恥ずかしい。
一体何なの、彼はこんな場面で彼女を困らせなきゃ気が済まないのか。
怒ったスウ・ユエは、もう一度ルオ・ジュンを強くつっついた。