チャプター16
車での移動の前半は静かだった。どうして【ローマン】に【オースティン】が立ち向かったのか信じられなかった。【マーカス】の話をするとき、いつも「あいつには逆らえない」って言ってたのに。どうやら、【マーカス】はそういうのを嫌うらしくて、なんか陰湿なやり方で仕返ししてくるらしいんだよね。そんなことにならないといいなって思ってたんだけど、やっぱり【オースティン】には感謝しかなかった。
「ありがとう」って、ちょっと【オースティン】を見て言った。「【マーカス】にあんなこと言って、すっごい怖かったでしょ。でも、私をあいつの仕事から守ってくれた」って笑ったら、【オースティン】は首を横に振ったけど、こっちを見た。「
「【ペイトン】、別に感謝とかいいから。あいつに仕事の話をされるような状況に、君がいなきゃいけないってのが俺のせいだし」って、ちょっとしょんぼりしながら言う。「でも、君のことになると、なんだってするよ、君を守るためなら」って、真剣な顔で私を見てから、また前を見て運転を始めた。
「【マーカス】は、私たちが告げ口したかどうか試すために、警察をよこしたのかな?」って、またそのことが頭から離れなくて、考えた。もし【マーカス】じゃなかったら、一体誰なんだろう?
「まさか、あいつが警察に頼むわけないだろ」って、即答。【オースティン】は一瞬も考えなかったような顔だった。「あいつら見ただろ?あれは本物の警察だって、俺は確信してる。もし、あいつらが汚職警官じゃなくて、【マーカス】の証拠を集めてる可能性が少しでもあるなら、あいつは絶対に本物の警察なんか雇わないよ。あいつはそういうの、マジで気をつけるから」って言うから、なるほどって思った。【ジョンソン】から遠いところにいるやつは、【ジョンソン】を執行する人たちとは関わりたくないんだろうな。
「じゃあ、誰なんだろう?私が【ジョンソン】に行かないって【オースティン】が伝えたから?でも、警察にわざわざ教えるとは思えないし」って、自分の理論を数秒で否定したけど、他に思いつかない。
「ああ、別に君が行かないこと、仕事には言ってないよ。あいつが言ったのは、俺たちがいないときに事件が起きたってこと。家に帰ったら、家の中がめちゃくちゃだった。それで、その日を全部片付けに費やしたんだ」って【オースティン】が言うから、賢いやり方だなって思った。もし言ってなかったら、私が全然違うこと言ってたかもしれないし、ラッキーだった。
「じゃあ、誰なんだろうね。警察に話すような人なんて、他に思いつかないよ。もしかしたら、その時は助けようと思ってくれたのかもしれないけど」って、席に座りながら、頭の中で色んな可能性を巡らせてたら、ピンときた。
【オースティン】も同じことを考えていたに違いない。だって、私たちが話したのは、たった一人しかいないんだから。
「【ローマン】」って、二人で同時に言った。
すぐに家に着いて、【オースティン】は明らかにイライラした様子で階段を駆け上がった。【ローマン】は、自分が何を引き起こしたか、全然分かってないんだろうな。正直、誰もこんなことになるとは思ってないだろうし。車の鍵をつけっぱなしで出て行ったから、私がロックしなきゃいけなかったし。階段を上がって、開いたままの玄関に入ると、電話を持った【オースティン】がいた。
「【オースティン】、何してるの?」って、玄関を閉めながら聞いた。近所の人は、このショーを見るのが大好きだろうな。
「もしもし、ちょっと今は話せないんだ。会議から出てきたばかりで」って【ローマン】の声。まさか電話で【ローマン】と喧嘩するんじゃないよね?
「でも、起きたことを警察に電話する時間はあったんだね?」って、【オースティン】の声には明らかに苛立ちが滲んでいる。あんなに怒っているのに、電話で怒鳴らないんだな。
「ああ、それのことか」って、【ローマン】が言うと、車のドアが閉まる音が聞こえた。たぶん、プライベートな空間で話すためだろう。
「そうだよ、それのことだよ。なんで俺たちに何も見てないって言ったのに、警察に連絡したんだよ?」って、【オースティン】が聞く。コートを外してカウンターに置きながら、この状況に冷や汗が出てきた。
「俺たちが嘘をついてるって思ったとしても、俺たちが嘘をついてるって思ってたとしても、今までお前らと一緒に過ごしてきたんだから、わかるよ」って、【ローマン】は言った。本当にその通りで、すごいって思った。いつも私たちが更に質問しないのが不思議だったし、私はいつも彼のことを人間の嘘発見器って呼んでる。
「嘘だと思ったとしても、俺たちのことに首を突っ込むのはやめてくれ」って、【オースティン】が電話で大声で叫んだから、【ローマン】の電話のスピーカーが音量で壊れてもおかしくないくらいだった。
「【ペイトン】もいるんだから、これは俺の関わることなんだよ。彼女が何かの標的にされないようにしなきゃならないんだ!」って【ローマン】が叫んだ。彼は怒鳴られるのは嫌いだから、【オースティン】があんな話し方をするのに、かなりイライラしてるのが分かった。
「お前が出て行ったときに、俺は【ペイトン】を守るって言ったんだ。こんなことしてると、彼女が危ないんだよ」って、【オースティン】が叫んだ。もし【ローマン】が最近私がどれだけ危ない目に遭ってるか知ってたら、どんな顔するんだろうな。
「なんで【ペイトン】が危ないんだよ。ギャングの活動なんて、ここにはないんだろ?」って、【ローマン】はもっと落ち着いた声で言った。あ、そういうことか、って思った。これは賢いな、って認めざるを得ない。
「俺はバカじゃないんだよ、【ローマン】。この辺でギャングが活動してるって、みんな知ってるんだよ。もし【ペイトン】のことを気にかけてるなら、彼女を危険な目に遭わせるようなことしないだろ!」って、【オースティン】が怒鳴って、部屋の向こうに電話を投げそうになった。彼はもう、イライラしてるレベルを超えてる。
「【オースティン】、彼女は俺の彼女なんだよ!彼女を危険にさらすなって、俺に言うのはやめてくれ!」って、【ローマン】が電話で叫んだ。ついに我慢の限界が来たんだな。私に対しては、すごく過保護で嫉妬深いから。
「自分のことだけ考えてろ」って、【オースティン】は落ち着いた声で言って、電話を切った。たぶん、もう【ローマン】が限界だって気づいたんだろうな。
数分間、私たちは沈黙したまま立っていた。全部があまりにも早く起きたから、処理する時間がなかった。【オースティン】はポケットにスマホを突っ込んでから、私を見て、私が何か言う前に首を振って、ドアに向かって歩いて行った。
「また後で」ってだけ言って、玄関を開けて出て行った。え、起きたことについて話さないの?
私は、夕食の服から着替えて、キッチンに向かった。そしたら、ジャケットがカウンターになくて、床に落ちてるのが見えた。一瞬、あれ?って思った。さっき【オースティン】が電話してる間、カウンターに置いたはずなのに。拾おうと近づいたら、3人の男が家に飛び込んできて、私が反応する前に、殴られて気絶しちゃった。