チャプター41
みんな、朝起きたら彼の車のことですごくびっくりしたよね。あたしの頭の中は「なんで?」って疑問でいっぱいだった。マーカスがあんなことするってことは、彼を怒らせるようなことしちゃったってことだし、お仕置きしたいってことだもん。でも、何が原因なのか全然わからないんだよね。ジェイコブを手伝ったのがバレたってことじゃないはず。そんなことしたら、オースティンの車を燃やすだけじゃ済まないだろうし。それに、オースティンとあたしがホントのカップルじゃないってこと、彼は知らないはず。だって、ローマンと二人でいるところは、家以外じゃ絶対に見られないようにしてるから。
でも、あたしの頭の中は、昨日聞いたこと思い出しちゃうんだよね。マーカス、友達に「会社のためにすごい計画があるんだ。それは、あたしとオースティンが関わるんだ」って言ってたんだ。でも、オースティンの車を燃やすことが、会社の役に立つわけないじゃん! 疑問がいっぱいあって、答えが全然見当つかないんだよね!
あたしは寝室を出た。オースティンが電話で叫んでるんだ。最初は、誰と話してるのかちょっとわかんなかったけど、車の話をしてるのを聞いて、ああ、ってなった。保険会社と話してるんだな、って。あたしはソファに座って、彼のことを見てた。
「なんでお前らは払ってくれないんだよ! ちゃんと払ってきたし、一度も請求したことないだろ!」 怒りで声が震えてる。電話の相手、かわいそうになっちゃった。オースティンがあたしを見て、スピーカーにしたから、あたしも聞こえるようになった。
「お支払いの問題ではなくて、お住まいの場所の問題です」って、変なこと言うやつ。オースティンも混乱したみたいで、なんでだ! って電話でまくし立ててる。「1ヶ月前ならよかったんだけど、今は犯罪が増加してるから、もっとお金払ってもらわないとお支払いできません」って、あの男は言った。ローマンが寝室から出てきて、あたしの後ろに立って、あたしのことを見ながら、何が起きてるんだって聞いてきたんだ。
「オースティンの保険会社が、保険金を払ってくれないんだって」 あたしはローマンを一瞬見て、オースティンの方に戻って言った。電話の男は、お金はもらえないって言って、オースティンは部屋の反対側に携帯を投げつけて、窓に当たったけど、割れなくてよかった。
「保険金もらえないからって、窓を割ることはないだろ!」 あたしの後ろからローマンが叫んだから、あたしはびっくりしちゃった。オースティンは腕を上げて、あたしたちの方を振り向きもしない。
「昨日の夜、何があったか知ってる?」 少し落ち着かせたくて、そう尋ねてみた。それに、昨日の別れの後、何か見つけたんじゃないかって思って。
オースティンは深呼吸をして、あたしたちの方を見て、あたしはちょっと微笑んでみた。
「火が消されてから、消防士が報告書をくれたんだけど、それによると、故意に火をつけたって」 カウンターの上に置いてある紙を指して、犯人が誰か教えてくれたんだ。
「車の炎上は、事故じゃなかったってことだね」 ちょっと明るくして、そう言ってみた。二人とも笑って、首を振ってる。
「そんなに悪いことじゃないだろ。別の車を手に入れるまで、あたしの使って」 ローマンがオースティンを見て言った。でも正直、ローマンはあんまり車使わないんだよね、家からあんまり出ないし。
でも、誰も動いたり話したりする前に、玄関のドアが開いて、マーカスが笑顔で入ってきた。あたしの心臓は一瞬で沈んだ。ローマンがあたしのすぐ後ろに立ってるのに! 彼はあたしを見てにやりとして、あたしがびっくりしたのを知って、ポケットから鍵を取り出して、指で回してる。
「心配いらないよ。昨日のこと聞いて、助けなきゃって思ったんだ。一番優秀な人が仕事に行けないなんて、困るでしょ」 オースティンに笑顔で話しかけた。あたしも何が起きてるのか、すごく混乱した。「車をあげるよ」 マーカスは鍵をオースティンに投げて、オースティンは受け取ったけど、まだマーカスを怪しんで見てるんだ。
「何かあるんでしょ?」 疑わしそうに鍵を見ながら言った。マーカスが何かしてくれるときは、いつも何かあるんだもん。マーカスは胸に手を当てて、ショックを受けたふりしてる。
「まさか、何かあるなんて思ってるの? 君は会社を助けてくれたんだから、これはボーナスだよ」 マーカスは嬉しそうに言ってる。オースティンは手の中で鍵をいじってるけど、マーカスはすぐにあたしの方に振り向いた。「ペイトンは元気? あたしが噂に聞いてるルームメイトかな?」 あたしの後ろにいるローマンを見て、あたしは居心地悪そうに下を向いた。
「やあ、ローマンです。はじめまして」 ローマンはあたしの後ろで言った。マーカスがどんなに居心地悪くしてるか、多分気づいたんだと思う。でもホントに、いつもそうなんだよね。
「こちらこそ」 マーカスは、ローマンを軽くあしらうように言った。なんだかマーカスは、ローマンのこと嫌いなんじゃないかって思っちゃった。「あ、忘れてたけど、今度夕食があるんだけど、一番優秀な人とその素敵なガールフレンドに来てほしいんだ」 あたしを見てるけど、まるで全身を品定めしてるみたいで、また視線をそらしてしまった。
「そんな夕食じゃないだろ? 100人とかいるようなの」 オースティンがちょっと笑いながら言ったけど、冗談じゃないって分かってた。あたしは、マーカスと夕食に行った時の二の舞は嫌だったんだもん。
「もちろん、そんなのはしばらく遠慮してるよ。前の2回がどうなったか、みんな知ってるでしょ」 彼はちょっと笑ったけど、あたしとオースティンの間で何が起きたか、彼が話題にしなかったのはすごく嬉しかった。「君たちの協力がすごくほしいんだ」 あたしとオースティンの間を交互に見て言ったけど、本当は質問じゃなくて、行かなきゃいけないんだよね。でも、ストレートに言えなかったんだ。
「行きます」 オースティンが、あたしの代わりに答えた。でも、どっちみち、あたしたちには決定権なんてなくて、オースティンが同意するしかないって分かってた。「それは嬉しいね。夕食は9時くらいからで、スマートな格好で来てほしいな」 あたしに目を向けて、何考えてるか分かってる。「ペイトン、君はいつも期待を裏切らないからね」 あたしをじろじろ見て、ローマンが後ろのソファをつかむのを感じた。マーカスがあんなこと言うのは、慣れてるけどさ。
「もう行かなきゃ。でも、今夜の夕食で会おう。ローマン、会えてよかったよ」 最後にローマンを見て笑顔で言った。
「こちらこそ」 ローマンはマーカスの真似をして言った。マーカスはそれだけで笑っちゃって、玄関に向かって歩いて行って、出て行ったんだ。
最後の挨拶をして、ドアを開けて、出て行って、閉めた。オースティンは窓まで行って、マーカスが出て行ったのを確認してから、あたしとローマンがいるリビングに戻ってきた。
「まあ、家にいるときも、ドアを閉めとかないとな。なんで、あんな男があんなことするの、平気なの? ペイトンのことじろじろ見てたのに!」 ローマンがオースティンに文句言ってる。あたしは、誰に電話しようか考えて、携帯を取り出した。
「もちろん、あたしも嫌だよ。でも、マーカスのことだから、何を言っても無駄なんだ! 前にあたしがそうしようとしたら、どうなったか見てみろよ!」 オースティンは、ローマンがあんなこと言うのが気に入らないみたい。「ローマンは初めてマーカスに会ったから、あたしたちが大げさだって思うかもしれないけど、この男がどれだけ悪いか、君には分からないんだよ。そのうち、彼が君にも慣れてくるから、本当のマーカスを見ることになるよ」 オースティンは椅子に座り直した。マーカスのことになると、彼の言うことがホントだって分かってるから。
「お前が自分のこと守れないから、ペイトンがまた危険な目に遭うことになるんだよ!」 ローマンが言ったから、ジェイコブに電話することにした。少なくとも、彼は何か計画してくれるだろうから。
「電話しなきゃ」 そう言って、あたしはソファから立ち上がって、寝室に入ってジェイコブに電話した。またこんなことになるなんて、信じられないわ。