チャプター43
そろそろディナーに向かう車の中、妙に静かだった。窓の外を眺めて、通り過ぎる木々や車、人々に目を奪われていた。一人きりの時間、最近の出来事について頭の中でぐるぐる考えを巡らせていたんだ。今夜何が起こるのか不安で仕方なかった。だって、いつもあのローマンの家にいる時はロクなことにならないんだから。でも、ジェイコブがどんな指示を出してくるのかも心配だった。もちろん、彼とチームが僕らを守ってくれるって信じてる。でも、もし間に合わなかったら…?
それだけじゃなかった。なんか、ローマンがいない方がいいって思ってる自分がいて、それが頭から離れないんだ。オースティンと二人きりの時間がすごく良かったのは否定できない。でも、どうしてなのか全然わからなくて。すぐにそんな考えは振り払った。きっと、ローマンが戻ってきたせいで、マーカスとの事が少し面倒になっただけなんだろう。
オースティンがちらっと僕を見てから、また道路に目を戻し、ため息をついた。
「ローマンが戻ってきてから、こうやって二人で話すのは初めてだね」
その言葉に僕の注意は向く。彼が言ったことは、僕も思っていたことと一緒だったから少しドキッとした。「あいつがいない間は、好きな時に好きなだけ楽しめたのに!ローマンが急に帰ってくるって決めたから、全部ぶち壊しだよ!」
またしても、彼に同意せざるを得なかった。ため息をつき、彼に頷いて、なんとなく彼の意見に賛成する素振りを見せた。
彼の顔を見ると、いろんな感情が入り混じっているのがわかった。怒り、そして悲しみ。その表情に、また僕はため息をついてしまった。窓の外に目をやると、彼がまた僕の方を見ているのを感じた。
「僕が君のことをどう思ってるか知ってるから、そう言ってるだけだって思うかもしれないけど、今はローマンが邪魔なんだ」
その言葉に、僕は彼を見た。そんなこと、全然思ってないよ。「二人一緒になる前から、ローマンが邪魔になるのはわかってたんだ。ある意味、それを仕方ないことだって受け入れてた。でも、ローマンは僕がいない間に何があったのか知って、ものすごい嫉妬深い奴になったんだ」
彼がローマンのことをそう呼ぶのを聞いて、笑いをこらえるのが大変だった。今は笑う時じゃないってわかってたから。
「ローマンと仲直りしたんだと思ってた」
少しでも雰囲気を和ませようと、そう言って彼を見たけど、彼は首を横に振って両手をハンドルの上に置いた。
「ああ、もちろん」
彼は皮肉な声で言った。僕は彼に、もっと詳しく説明しろと目で訴えた。「もちろん、仲直りしたし、すぐに殴られることもないだろうけど、もう前と同じじゃないってことはわかってる。もう二度と、あの頃には戻れないんだ」
その言葉に僕は落ち込んだ。こんなことがあった後じゃ、元には戻れないってわかってたけど、なるべく考えないようにしてたんだ。
「あの頃に戻れたらいいのに」
僕は自分の膝を見てため息をつきながらそう言った。もし過去の自分と話すことができたら、きっと僕の言うことなんて信じないだろうな。
「今回は、君に賛成できないな、ペイトン」
彼は僕を見て言った。どういう意味かわからず、僕は彼を見つめた。彼は、マーカスとの今の状況が良いって言うのか?「こんなことになったのは、君に本当の気持ちを伝えられる良い機会だったんだ。絶対無理だって思ってたことだよ。もちろん、僕らの関係は変わらないだろうけど、肩の荷が下りたんだ。この状況に至るためにこんな経験をする必要があったなら、それはそれでいい」
彼の言葉に、僕は言葉を失った。オースティンがこの前言ったことについて、ちゃんと考える時間がなかったんだ。
「ローマンと僕はもう二度と、同じじゃいられない。これは、全部のせいでも、僕が君に言ったことのせいでもなく、彼の本当の姿が見えてきたからなんだ」
彼の苛立った口調がまた聞こえてきた。
「どういう意味?」
僕は混乱して彼を見た。ローマンが変わった、気に入らないって言ってるけど、一体どういうことなのか全然わからない。
「みんながしばらく距離を置いてたから、今は彼の本当の姿が見えるんだ。正直、ムカついてきた」
それは、僕の質問に対する答えにはなってなかった。「君をコントロールしようとするんだよ!何か話そうとすると、いつもあいつがそばにいる。僕らが何かするって思ってるのかよ、いきなりそこでアレでもするってか?!」
彼は大げさにそう言って、僕は思わず笑ってしまった。
彼も僕を見て、笑顔が顔を明るくした。彼の演技が面白くて、笑いが止まらなかった。ローマンがそんなこと考えるわけないの!いや、そうであってほしいんだけど。
「その声が聞きたかったんだ」
彼は僕をちらっと見てから、また道路に目を戻した。彼のその言葉に、僕は混乱した。
「オースティン、なんかやってるの?」
僕はまだ笑いながらそう聞くと、彼は首を振って笑い始めた。
「いや、君の笑い声がまた聞けて嬉しいってだけだよ。ローマンが戻ってきてから、それが聞けなくなってたから」
彼の言葉で、笑いは少しずつ消えていった。彼の言ってることは、全然真実じゃない。
「ローマンがいた時も、いっぱい笑ってたよ」
僕は、自分とローマンを守ろうと、そう言った。彼はローマンのことを、みんなが恐れて小さくなるような、怖い存在みたいに言ってるんだから。
「ローマンと笑ってたのか、それともローマンを笑ってたのか?」
彼は僕を眉を上げて見てきた。でも、その質問は意味がわからなくて、僕はめっちゃ混乱した。
でも、彼が何を言いたいのか聞く前に、マーカスの巨大な家の門が見えてきた。オースティンは門の前に車を停めた。すると、二人の警備員が出てきて、一人は彼の側に、もう一人は僕に話しかけてきた。
最初は緊張したけど、その男の目を見て、すぐに誰だかわかったんだ。
「こんにちは、お名前をこちらにご記入ください」
そう言って、彼は僕にクリップボードと紙を渡した。僕は笑顔で受け取って、一番上の注意書きを見た。
「イヤホンを渡します」
それを見て、僕はオースティンからクリップボードを遠ざけた。彼に読まれたくなかったから!
僕は名前を書いてクリップボードを返した。それを渡している間に、彼は誰にも気づかれずにイヤホンを僕の手に滑り込ませた。僕はニヤリとして彼を見た。スムーズな渡し方だったな。でも、今度はそれを誰にも気づかれずに耳に入れるっていうミッションがある。今までも何度かやったことはあるから、まあなんとかなるだろうけど。
「準備はいい?」
門をくぐって家に向かう途中、オースティンが聞いてきた。僕はイヤホンを隠すように、髪の毛で隠しながら、手でしっかりと覆った。
僕は彼に頷き、笑顔で答えた。彼はすぐに僕に笑顔を返してきた。そして、僕はドアを開けた。
車から降りる時に、少し髪の毛で隠しながらイヤホンを耳に入れたんだ。
「あくびが聞こえたら、って言ったよ」
ジェイコブの声がすぐに聞こえた。僕は言われた通り、上手にあくびをして、できることを示した。「上手になってきたな」
僕は同意せざるを得なかった。一体、同じことを何度繰り返さなきゃいけないんだろう。
「疲れてるのがわかるよ、マーカスにはあんまり長くいないようにしてもらうよ」
オースティンは僕のあくびを聞いて笑顔になり、その優しさに僕は笑顔になった。
「君も演技うまいね」
ジェイコブもそう言って、僕は二人の言葉にまだ笑顔だった。