第58章
ベッドに座って、ただただ考え事を巡らせてた。今まで起きたこと全部を、ちゃんと考える時間なんてなかった気がする。マーカスとのことも、オースティンへの気持ちがどんどん大きくなっていくことも。それに、お腹の中にいる小さな命のこと。天井を見上げながら、自分の手をお腹に当ててた。
まだ信じられないんだよね、こんなことになってるなんて。他のことで頭がいっぱいで、本当に何が起こったのか、ちゃんと理解できてない。でも、その時が来たら、全部元通りになるといいな。
スマホのメッセージの音で、考えが中断された。テーブルの上にあるのが見えたから、無視しようかと思ったけど、急ぎの用かもしれないし、誰からのメッセージか確認するために、無理やり立ち上がった。
開いてみると、ジェイコブからのメッセージで、内容は「計画進行中」だけだったけど、それが何を意味するのか、すぐに分かった。もっと準備する時間があると思ってたのに、もう始まってるんだ! スパイたちが、マーカスのビジネスを一つずつ潰しにかかってる。アイツ、マジで焦ってるんじゃない?
スマホを後ろポケットに突っ込んでから、イヤリングに目がいく。ジェイコブはいつもつけてなきゃダメだって言ってたから、これで私の居場所がバレるんだよね。ため息をつきながら、イヤリングを手に取って耳につけた。どこに行っても追跡されるようになる。
笑顔を作ってドアに向かう。マーカスが焦ってたら、一番最初に電話するのはオースティンだって分かってたから、マーカスを捕まえるためにも、そうなったらオースティンのそばにいないと。部屋を出て、キッチンを見ると、オースティンが料理してた。こんな光景、本当に久しぶりだ。
「起きたんだね、嬉しいよ」って、振り返りもせずに言われた。変な感覚を持ってるのか、それとも私が思ってるより全然静かに歩いてないのか。
「マーカスから電話があって、1時間後に会うことになったんだ」って、リビングに入ってもまだ振り返らない。「ジェイコブも、俺たちがここに来る前に会いたがってたのは、合ってたみたいだな」
「なんで会わなきゃいけないの?」って、できるだけたくさんの情報を得ようと、質問してみた。ゴーサインなのかどうなのか知りたかったから。
「それは俺も分からないんだ。でも、君は来なくていいって何度も言ったんだけど、マーカスは絶対に来いって言うんだよ」って、シンクにフライパンを投げながら言った。後で片付けとこ、って思って。
マーカスに会うことを考えて、ため息をついたけど、すぐに耳にトラッカーがついてるのを思い出した。ジェイコブは私がどこにいるか分かるんだ。
「でも、こんな邪魔が入ったけど、時間を見つけて朝ごはんを作ったんだ」って、振り返って、よだれが出そうな料理を見せてくれた。目を見開いて、どれだけお腹が空いてたのか、そこで初めて気づいた。
彼が私のプレートを置いて、「座って」って言うから、笑顔を返した。言われた通り座ると、食べ物の匂いが五感を満たしてくれる。美味しいもの、楽しむぞ! 自分のプレートを持ってきて、私の前に置いた。笑顔は消えないまま。
「ありがとう、オースティン。そんなことしなくてもよかったのに」って、彼がフォークを渡してくれたから言った。すごく忙しいのに、朝ごはん作ってくれるなんて、本当に優しい。
「当たり前だろ。昨日の夜は、君が妊娠中に良いレシピをいくつか調べてたんだ。健康に気をつけないとね?」って、自分の最初のひと口を食べながら笑った。本当に色々と考えてくれたんだな、って分かって私も笑った。「だから、君が食べるべきものも、避けるべきものも全部分かったから、これからは俺が君のために料理するのは、最優先事項の一つだよ」って、言葉に詰まってる私を見て笑ってた。こんなことしてくれる人、いると思ってなかったから。
「さあ、出かける前に食べておきなよ」って、私がまだ一口も食べてないのに気づいて、笑った。笑顔を返して、一口食べたら、信じられないくらい美味しかった。
1時間くらい経って、オースティンの腕に抱きつきながら、アパートの階段を降りてた。あの朝ごはんは、今までで一番美味しかったよ。オースティンは、全部美味しくするって約束してくれた。毎日料理しなくてもいいって言ったけど、お腹に大きな赤ちゃんを抱えるんだから、俺が料理するのは当然だって。
マーカスがオースティンにくれた車に近づいたとき、彼のスマホがメッセージの通知音を立てた。彼は私に笑顔を向けて、スマホを取り出した。そこにはマーカスの名前があった。
「予定変更だってさ。10分後に海辺でマーカスに会うことになった」って、マーカスに返信しながら教えてくれた。予定変更って言われただけで、ジェイコブの計画がうまくいかないんじゃないかって不安になる。
なんでマーカスは俺たちに海辺で会いたいんだろう? 確かにどこで会うことになってたのか知らなかったけど、海辺ってなんか怖い! でもすぐに、トラッカーがあるからジェイコブは私の居場所が分かるんだって思い出して、笑顔を作って、とりあえず従うことにした。
「少なくとも、そこでスラッシュパピー買えるね」って、オースティンは肩をすくめて、スマホをポケットにしまった。笑って首を振ったけど、スラッシュパピーって言葉を聞いたら、無性に飲みたくなった。
車に乗り込むと、私のスマホがジェイコブからのメッセージで鳴った。内容は「5/15完了」だけだった。マーカスのビジネスが5つ潰れたんだってすぐ分かった。海辺って返信して、スマホをしまった。オースティンが運転中に私に質問してくるのは嫌だったから。
彼が私に笑顔を向けてきたから、私もすぐに笑顔を返したけど、本当はすごく緊張してたんだよね。