第15章
フリをする
ローレンスとあたしが一緒に出る時に持っていくものは、もう準備OK。彼が来るのを待ってる間、胸の不安が全然消えなくて、鏡を何度も見ちゃった。
ピンポーンって音がして、マジでビビって飛び上がるとこだった。
「ちょっと待って!」って叫んで、また鏡を見て、あたしの赤みがかったオレンジ色のドレスと、ちょっとヒールのある靴をチェックした。
「ハーイ!」って、ドアを開けて、彼にめっちゃ笑顔で挨拶した。
彼があたしを見る目が、なんか熱くて、ちょっと燃えそうだった。あたしのこと、全部見透かされてる感じもしたし。
「あ、先に上がってて。あたし、自分のものとってくるね」って言って、くるっと向きを変えた。
彼が中に入っていくのを見ながら、チラッと見た。彼のめっちゃカッコイイ顔立ちの奥にある、あの強さに、ドキドキしちゃった。彼はシンプルな白いTシャツに、色褪せたデニムのジーパン、それに茶色の革ジャンに似合うナイキの靴を履いてた。
あたしの視線に気づいたのか、彼と目が合った。「荷物、持とうか」って言って、あたしのバッグを取ってくれた。
***
移動中は、ずっとシーンとしてた。なんか、気まずい沈黙が流れてる感じ。でも、今話しかける必要はないかなって思った。
「昨日の夜は、よく眠れた?」って彼が聞いてきて、機械のスイッチを入れた。
「うん、まあまあかな」って笑った。
「よかった」って、彼はそれ以上何も言わなかった。もう車が止まったから。周りの景色に目を慣らすと、建物はどんどん薄れていって、代わりに緑の木々とか畑とかが見えてきた。
2時間くらい経って、やっとサアベドラ・リゾートに着いた。いつものように、あたしを出迎えてくれた美しい景色に感動しちゃった。
彼はあたしをホテルの中に案内してくれて、ローレンスがあたし達を見つけた時に、あたし達は従業員に挨拶するのを忘れちゃった。
「まず、君をスイートルームに連れて行くよ。それから、お昼ご飯に迎えに来るから。」
あたしはただ頷いた。エレベーターの中はあたし達2人だけだったけど、なんでこんなに彼が近くにいるのか、あたしには理解できなかった。心臓がめっちゃドキドキしてて、エレベーターの中にいる時間が長かったら、足がガクガクして倒れそうだった。
「大丈夫?」って、彼の声が左耳で優しく聞こえた。
あたしは固まって、床に視線を落とした。「大丈夫」
あたしの髪の毛を優しく撫でる彼に、目を閉じた。「ごめんね。君がここにいるべきじゃないのは分かってるけど、何があっても、あたしがちゃんと面倒を見るから」って、また囁いた。
ドアがやっと開いた時は、めっちゃ嬉しかった。やっと彼から離れるチャンスが来たんだから。
くそっ、マルゴー!ただの囁きだよ。ただ触られただけ!落ち着け!
幸い、すぐに彼が予約してくれた部屋に着いた。この部屋の隅々まで、完璧だって思った。内装は凝ってるし、この場所を美しくするために、すごく時間がかけられたみたい。
あたしの目が満足したところで、バッグを持ってるローレンスの方を向いた。
「ありがとう。あたし、ここで大丈夫だよ」って言って、すぐにバッグを取り出した。
「本当に?」
あたしは頷いた。「またね、ありがとう」って言って、ちょっとだけ笑った。
「ちょっと下にいるスタッフに話してくる。すぐ戻るよ」って言って、あたしにさよならを言った。
彼が行っちゃった後、シャワーを浴びて、同じサンダルに赤いドレスに着替えた。髪の毛はまとめてお団子にして、唇にちょっとだけ色をつけた。
しばらくして、ローレンスがまたノックして迎えに来た。
「ハーイ、ゴージャス!」って、彼はドアのフレームに手を置いて、優しく微笑んだ。
あたしの顔は、ひどい日焼けみたいに赤くなった。視線をそらすために、顔を横に向けた。あたしは他の人には褒められたことはあったけど、ローレンスにはなかった。
あたし達は階段を下りていく時、雲の上にいるみたいにも感じた。従業員とか他のゲストとかが、あたし達を見てるんだもん。
「緊張してる?」って彼が囁いて、あたしの手をぎゅっと握った。
あたしは彼を見た。「ううん、してないよ」って大胆に言った。
「よかった、楽になる」って彼はつぶやいた。
あたしは眉をひそめた。どういう意味?それがあたしの頭の中に残った疑問だった。ロビーに着いて、そこにあるダイナーの一つに直行するまで。
「こんにちは、ミスター・プレジデント!」って、ウェイターが丁重に彼に挨拶して、あったかいテンダーロインステーキをあたし達に渡した。
「代わりにジュースにして」って、ローレンスが、あたしの前に置かれたフルートグラスにシャンパンを注ごうとしたウェイターを止めた。
「かしこまりました、旦那様」って、ウェイターはあたし達に背を向けて去っていった。彼はすぐにレモンジュースを持って戻ってきた。
「ありがとう!」って言って、あたしは彼に微笑んだ。
彼はあたしに軽く頭を下げてから、仕事に戻っていった。
「従業員の人たちにも、そんな態度なの?」
あたしは彼を見上げた。「どういう意味?」って、眉をひそめて聞いた。
「あたしの従業員。彼は君のこと、好きだと思うよ」って言って、ウェイターを見ていた。
彼が指さした方をあたしも見て、あたしは肩をすくめた。「慣れてるわ」って言った。
彼は顔をしかめて首を振った。あたしの言ったことに対して、彼の口元が歪んでるのも見えた。
「怖いんだ。彼らはそれをチャンスだと思って、君に近づこうとする。あたしはそんなこと、させない」って、真剣な顔で言った。
あたしは彼の反応に笑っちゃいたくなった。「これって、あたし達の計画の一部なの?まるで恋人のように振る舞うから?ごめんね、あたし、嫉妬深い彼氏は嫌なの」って言って、ニヤッとした。
「この件については、マネージャーに話すつもりだ」って、彼は真剣な声で宣言した。
「何について?」ってあたしは聞いた。
でも、彼はまだ答えられなかった。あたしの背中に視線を集中させているから。好奇心から、あたしは後ろを振り返ってみたら、エリッセがホテルのメインドアから入ってくるのが見えた。
彼女はいつもと違う格好をしていた。髪の毛は、赤みがかったトーンで、丸い形で、キラキラ輝いていた。
ほとんど全員が、彼女の登場に気を取られてるみたいだった。
あたしは膝が震えてるのに、どうやって立ち上がることができたのか分からなかった。どうやって彼女達に近づけたのかも分からなかった。
「ハーイ、ローレンス!」彼女もまた、彼女に挨拶した人達に温かく挨拶した。そして、ローレンスの頬にキスするのを忘れなかった。
あたしはその光景からすぐに視線をそらした。あたし達はただフリをしてるだけって分かってるから、影響されるべきじゃないんだけど、なんでこんなに難しいんだろう?
「ハーイ、マルゴー!」って彼女はあたしに挨拶して、手を振ってあたしに微笑んだ。
あたしは一番無邪気な顔で、彼女に笑顔を返した。
「道中はどうだった?」ってローレンスが話を遮った。彼らは立ったままで、お互いを見つめ合っていた。
「よかったわ。サン・サイモンの街が恋しいわ」って言って、彼女は甘い笑顔を見せた。
彼女が言ったことには、別の意味があるみたいだったから、ローレンスの顎が引き締まった。
「あ、よかったら、一緒に行かないか」ってローレンスは席を勧めた。
あたしはすぐに自分の料理を見た。急に食欲がなくなった。
「もちろん!」彼女はローレンスの隣の椅子にすぐに座った。ウェイターがすぐに彼女に近づき、彼女の注文がすぐに出てきた。
あたしがいないかのように、彼女達は食事の間中、ほとんど2人だけで話していた。あたしはただ周りを漂ってるだけで、気づかれてない感じだった。