第43章
また会う
クラレンスをベッドに寝かせたら、すぐに寝ちゃった。髪の毛を撫でてたら、抑えようとしてた涙がだんだん目尻に溜まってきたんだ。
頭から追い出そうとしてたんだけどね。でも、クラレンスを見るたびに、あいつの顔がちらつくんだ。アリッサの言う通り、ローレンスにそっくりなんだよね。
首を横に振った。なんで頭から消えてくれないんだろ?どうしちゃったんだろ?みんなのためを思って遠くまで来たのに、なんで過去にこんなに苦しめられてるんだろう?あの甘い時間でさえ、もう俺の心臓を刺すナイフになってるみたい。苦笑いしながら、まだどこが痛いのか探ってみたりして。
また首を振った。このまま生きてかなきゃいけないんだ、頭の中でぐるぐる回る嫌な思い出と一緒に。もう二度とこんな風にはならない。しっかりしなきゃ。クラレンスのためにも。
そんなことを考えてたら、ドアをノックする音がして、考えが中断されたんだ。シンディがそっと顔を出して、ベッドの横にきた。
咳払いしてから、「アリッサのこと、ごめんね。あのコの口って、ほんと容赦ないからさ」って小声で言ったんだ。
首を横に振って、眠ってるクラレンスを見た。「大丈夫だよ。あいつの息子だってことは否定できないし」
「これからどうするの?ローレンスに会わせるの?」って声が低くなった。なんか、すごく聞きづらそうだった。
「もう避けられないよ。すぐそうなるだろうね。特に、あたしたち3人にとっては、もう世界は狭いから」って答えて、クラレンスの髪を優しく撫でたんだ。
「カイザーの洗礼式、行ける?レセプション、サアベドラ・リゾートでやるんだけど」って、あたしの様子を伺うように言った。
大きくため息をついた。CDプレーヤーに近づいて、クラレンスの邪魔にならないように子守唄をかけたんだ。
「ごめんね、ベスティ。キャリックとローレンス、従兄弟なんだよね」って教えてくれた。
あたしたちがフィリピンにいるってことは、キャリックからローレンスに伝わるだろうね。胸がどろどろのタールみたいになって、ドキドキが止まらない。もう、会うことを考えると、全然落ち着かないんだ。
「行っても行かなくても、どっちでもいいんじゃない?どうせ、もうすぐ婚約するらしいし、子供もできるみたいだよ」って、嫌味を込めて言った。
シンディはすぐに顔をしかめたし、あたしも彼女の反応に戸惑った。
「子供?」
あたしは頷いた。
「マジかよ!」って大声出して、おでこを叩いてた。
「な、なんで?」って、あたしは眉をひそめて、なんだか不安になってきた。
「エリッセ、妊娠してないよ!」
彼女の言葉で、肩の力が抜けたんだ。
***
「クラレンスの物、全部大丈夫?ドリス」って、ママが連れてきたベビーシッターに聞いた。
「全部準備できてます」って答えた。
「忘れ物とかない?」って、クラレンスを抱っこしながら聞いた。
「大丈夫」って、ドリスは大きなバッグを持ちながらあっさり答えた。
部屋を出て、すぐにダイニングルームに向かったんだ。そこでママとパパがコーヒーを飲んでた。
「バイバイって、じいじとばあばに言ってあげて」って、クラレンスに言った。
「あら、うちの孫に会えなくなるのは寂しいわね」ってママが言った。それから、あたしから子供を受け取ったんだ。
「ママ、たった2日だよ」って、ママの目から涙がこぼれてるのを見て言ったんだ。
「大丈夫、遊ぼう」って、パパがママに冗談を言ったんだ。
「ルドルフ、つまんないこと言わないでよ。まだ娘はいるんだから!」ってママが叫んだ。パパの横に寄って、そこをつねったんだ。
「何が悪いの?ゴルフでもしようって言っただけだよ。まだ終わってないし!」って、パパはママに言い訳したんだ。
ママはただ黙ってパパの答えを聞いて、あたしにクラレンスを渡した。「あら、元気にしててよ。あなた」って、あたしを指して、「早く行け、夜に道に出るのは大変だから!」
「気をつけてね、ヒハ!」って、あたしたちが家の外に出る時に、パパが声をかけてくれたんだ。
頬にキスをしてから、新しく来たピーターに会いに行ったんだ。
「やあ!」って挨拶された。
あたしはびっくりしちゃった。唇の横にキスされたから、
固まっちゃったよ。まさか、両親の前でこんなことするなんて思ってもなかったから。
「おはようございます!」って、彼は丁寧にお父さんお母さんに挨拶して、握手してたんだ。
「運転に気をつけてね、息子さん!」って、パパが肩を叩きながら言ったんだ。
「はい、気をつけます」ってピーターは遠慮がちに答えたんだ。それから、あたしたちの方を向いて、子供を抱き上げたんだ。
「おはよう、キッド!」ってピーターがクラレンスに優しく言った。クラレンスの頬にキスしたら、嬉しそうに笑ってた。
あたしは微笑んで、ドリスとアシスタントを車に乗せることにしたんだ。
サン・サイモンに向かって出発した。近づくにつれて、心臓の鼓動が速くなるのが分かった。胸の奥に恐怖を感じて、体の酸素を全部燃やし尽くすような、満たされない火が燃えてるのを感じた。そこに着いたら、自分がどうなるのか全然分からなかった。
窓に寄りかかって、建物と店の木々がゆっくりと木々を飲み込んでいくのを見ていた。そして、ピーターの手が、あたしの手に触れた。
「本当に大丈夫?心配なら、やめてもいいんだよ」って、彼は優しく言った。
彼の方をちらっと見たら、優しくて暖かい目で見てた。あたしは首を振って、窓に視線を戻したんだ。
「大丈夫」って答えた。
それ以上何も話さなかった。あたしがもう話したくないって分かってたから。
リゾートに着いたのは、もう午後だった。あたしを歓迎する大きなアーチが、すぐに目に飛び込んできたんだ。
「わあ、すごい!まるで楽園みたい!」ってドリスが叫んだ。見たものに驚いて、顔が輝いてた。
あたしは微笑んだ。サン・サイモンの砂浜に初めて足を踏み入れた時の、あたしの反応もそうだった。空気は甘くて、天気は良くて、海の水は、昔みたいにキラキラと輝いてて、誘ってるみたいだった。
「予約を確認してくるよ」ってピーターが言った。
あたしは落ち着いてなきゃいけないのに、すごく緊張してた。幸い、ピーターが一緒にいてくれるから、すぐに予約してあるスイートに向かったんだ。
「あたしは隣の部屋にいるから。何かあったら——」って、彼は言葉を止めた。何を言えばいいのか分からなかったみたい。
あたしは無理やり笑顔を作った。「大丈夫だよ、ピーター。あたしたちは大丈夫!」って彼を安心させたんだ。ローレンスと会うことになって、彼も心配してるのは分かってるから。
「分かった。ここにいてね」って、彼は優しく言った。
そう言われたから、あたしは一日中スイートから出なかったんだ。ドリスは海で泳ぎに行くって言って、あたしはそれを許可した。
夜もほとんど眠れなかった。ベッドに横たわってると、胸が締め付けられるような、不安でいっぱいだった。明日はきっと大丈夫だって自分に言い聞かせたんだ。
***
ついに、あたしが一番恐れてた日が来たんだ。朝早く大聖堂に向かって出発したんだけど、予想通り教会は人でいっぱいだった。
洗礼を受けるカイザーは、ほとんど混乱してるみたいだった。クラレンスでさえ、ゲストに噛みつかれないようにするのは大変だったんだ。
「かわいい!」ってジュリアは、クラレンスを抱きながら頷いたんだ。