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CHAPTER THIRTY-NINE: 何が起きたの?
**イーサン**の視点
耳がキーンってなり始めて、ゆっくりと目を開けたんだ。最初に目に飛び込んできたのは、めちゃくちゃ綺麗な女の人。金色の髪が顔の横にサラサラって落ちてて、表情は見えない。
もしかして、俺の最期の時に来てくれた、あの天使?俺の最後の姿を見てくれた人?すごく真剣な顔で、眉間にシワ寄せて、自分の人生で一番大事なことみたいに俺の胸を洗ってくれてた。ずっと、この光景と彼女を記憶に焼き付けたくて、動くのも怖かったんだ。
全部終わるって思った時、自分の目的とか、自分の手でぶっ壊せなかった奴らのことなんて、何も考えなかった。考えられることって言ったら、何年も俺のこと嫌ってたあのクソ女が、ようやく俺に心を開いてくれたってことくらいかな、って都合よく解釈しただけかもしれないけど。
彼女は一人で生きてて、世間から遠ざかって、自分の世界に他人を入れないようにしてた。それが、俺は嫌だったんだ。マジで反対。俺がいなかったら、彼女は誰にも寄りかかることができなくて、この世界で一人ぼっちになっちゃうんだから。
心の底では、もう彼女を守るって誓ってた。彼女のためだけに例外を作るって、すでに決めてたんだ。
俺だけのものになるのは、彼女だけ。
腕を動かすだけでも、ものすごい力が必要なんだ。手のひらに彼女の髪の毛があって、指でそれをすりながら、金色の髪を撫でた。
**ローズ・アマラ**は顔を上げて、俺を見た。時々、夢に出てきて、俺を冷や汗だく目覚めさせた、あの青い瞳。俺の人生の目標は、彼女が持ってるもの全部をぶっ壊すことなのに、なんであんなに惹かれるんだろう?
でも、彼女が何のために生きてるかなんて、どうでもいいんだ。俺は一度も、彼女のこと嫌いになったことなんてない。彼女だけなんだ、こんなに近くにいるのを許したのは。彼女の唇が少し開いて、そして、悲しそうな顔で俺を見てる。ゆっくりと、すごくゆっくりと口が開いて、まるで初めて俺を見るみたいに笑った。
俺が戻ってきた時に、こういう反応が欲しかったんだと思うけど、彼女は俺に罰を与えたがってたんだ。俺を殺したかったんだ。なのに、俺が起きたから笑ってる。
この女の人、マジで理解不能。
「起きたのね。」
俺は頷いた。そのちょっとした動きで、もう動けなくなった。胸が痛くて、全身に広がっていく。
「気分はどう?医者を呼んだ方がいい?」
「いや」って、声がガラガラで、聞こえたかどうかも怪しい。「大丈夫だ。」
「もう二度と、絶対に、そんなことしないで!」
彼女の声には、色んな感情が混ざってた。安堵、絶望、そして何よりも、泣きそうな感じだった。
「何のこと?」
「なんで**レイブン**おじさんの前に飛び出したのよ!」
「お前がやろうとしてたからだよ。自分を盾にしてさ。俺に、お前を犠牲にさせると思ってたの?」
「俺は、仲間として、そうしなきゃいけないんだ。」
「自分が死ぬのは、お前の役目じゃない。」
「お前もだろ。いつからお前は**レイブン**おじさんのこと気にするようになったんだよ?」
「してないよ。俺が気にしてるのは、お前だけだ。」
彼女の唇が開いて、何か言い返すのかと思ったけど、いつものように反論するのかと思ったら、彼女は俺の胸を拭き続けてる。真剣な顔で、目には涙が見える。
「またいなくなったんだと思った。」彼女は俺の手とか、二の腕まで拭き続けてる。優しく触れてるけど、顔は全然優しくない。「もう戻ってこないんだって。」
「俺がそんな簡単にいなくなると思った?だって、まだお前を妊娠させてないし。少なくとも、公式には。」
「黙ってろ、クソ野郎。」
「舌は相変わらずみたいだな。そんなに心配してないんだな。俺は怪我してるんだぞ。」
「冗談はやめて!」彼女の顎が震えてる。「どれだけ辛かったか、お前にはわからないのよ。昨日の夜、熱が出て、上がらないように、一睡もできなかったんだから。」
「ごめん。」
彼女は手の甲で顔を拭った。「とにかく、元気になって。」
しばらくの間、沈黙が続いた。彼女の存在を噛み締める。こんな風に彼女がそばにいるって、こんなに満たされることだったなんて、知らなかったな。
「昨日の夜、何があったんだ?」俺は聞いた。
「わからない。武装した男たちに襲われたの。**ヴラド**はアイルランド人だって言ってたけど、本当かどうかはわからない。アイルランド人には見えなかったし。」
「お前、アイルランド人のこと、どうやって知ってるんだよ?喋ってるの聞いたの?」
「違うわよ。でも、アイルランド人は、**父**の家を襲撃するほどバカじゃないの。宣戦布告みたいなもんで、そんなことしないはず。」
「昔はしなかったかもしれないけど、今は考えが変わったんじゃないか?」
彼女は肩をすくめた。否定も肯定もしない。疑われるのも嫌だから、俺も深入りするのはやめた。他の男たちが**ローズ・アマラ**の言うことを真に受けないのは、今回だけはありがたい。アイルランド人じゃないって疑わないだろうし。
「どっちにしろ…」**ローズ・アマラ**は話しながら、俺の肌を拭き続ける。「**レイブン**おじさんが**父**に、戦闘準備しろって言ってたわ。きっと、今回のことで一番喜んでるのは彼だね。戦争って言葉を聞くと、どうなるか知ってるでしょ?」
「お前は、この件でどんな役割なんだ?」
「今は、資金の調達だけ。全部には参加できないわ。」
「なんで?」
「だって、お前の面倒を見てるんだから、バカ。」
「お前が面倒見る必要ないんだ。**パーカー**っていう護衛がいるだろ。あの使えないガキはどこに行ったんだ?」
「嫌。」彼女の口調は、反論を許さない。決意に満ちた目で俺を見た。「私が面倒を見る。」
「マジで?」
「私はお前の妻よ。それが私の役目だもん。」
「まさか、誓いをそんなに真面目に受け止めてたとはな。それに、愛し、慈しむって部分もあるだろ。」
「調子に乗らないで。」
「まあ、努力はしたけどね。」
彼女の目にはまだ涙が溜まってて、それが嫌だった。あの綺麗な青い瞳が、涙で滲んでるのが嫌なんだ。だって、**ローズ・アマラ**は、自分の感情を簡単に見せるような人間じゃないから。ちょっとのことで泣くような女じゃないんだ。むしろ、自分の弱さを必死に隠そうとするタイプだ。だから、今、彼女がそれを抑えられないってことは、感情が強すぎて、コントロールできないってことなんだろう。
「痛い。」俺は呟いた。
彼女は作業を中断して、俺の傷と顔を確認した。「え?どうしたの?何かできることある?」
俺は、怪我してない方の腕を伸ばして、それで頭を指した。「こっちに来いよ。」
「嫌よ。怪我してるんだから。」
「こっちに来い、**ローズ・アマラ**。」
「なんで?」
「近くにいてほしいんだ。」
「なんで近くにいてほしいの?」彼女の声は小さくて、どう聞けばいいのかわからないって感じだった。
「全部終わるって思った時、それが唯一、欲しかったことだったから。」
彼女は濡れたガーゼを離さずに、ゆっくりと俺の横にやって来て、怪我を邪魔しないように慎重に、俺の体に寄り添った。俺の二の腕に頭を乗せて、お腹に手を回して、俺の顔を見てる。
少しの間、彼女は俺のことを見てて、俺も彼女のことを見てた。涙の跡が、彼女のメイクを崩してる。それに、まだ昨日のドレスを着てる。俺を置いていく時間がなかったんだな、きっと。
「何考えてるの?」俺は聞いた。
「肩にもう一発、銃弾の跡があるわね。」
「姫様、俺に不適切に触ってるんじゃないのか?」俺はからかった。
彼女の頬が赤くなったけど、動じない。
「何の話?私はお前の妻よ。不適切に触れるなんてこと、できるわけないでしょ。」
彼女が自分のことを俺の妻って呼ぶのが好きだ。ようやくその事実を受け入れてるみたいで。
「撃たれたんだよ。」
「二発も撃たれて生き残ったのはすごいわね。」
「今回はお前がいたから、あの世に行かずに済んだんだよ。」
「死のことについて、冗談はやめて。もう、ほとんど死んでたんだから。」
「俺はここにいる。」
少し前に止まってた彼女の呼吸が、また落ち着いて、俺のお腹を撫で始めた。そして、指先が俺の胸まで上がり、銃弾の跡をなぞった。「何があったの?」