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ニューヨーク、セバスチャン
バーで一人、ウィスキーをちびちびやりながら、目の前の結婚披露宴を眺めてたんだ。お祝いムード全開で、会場は笑い声と喜びで賑わってる。兄貴の結婚式ってのは、愛と絆を祝う一大イベントで、俺も楽しむべきだった。でも、正直言うと、ここにいたくなかったんだよね。
俺の唯一の兄弟、兄貴はいつも俺のことを見ててくれた。頼りになる兄貴って感じで、俺が困った時はいつも助けてくれた。だから、俺が兄貴の晴れ舞台を応援するのは当然のことだったし、お互いを愛し合った二人が結ばれる瞬間を目撃したかったんだ。
でも、幸せそうな二人を見てると、義務感みたいなもので胸がいっぱいになっちゃった。この結婚式に参加するのは、心から望んでることじゃなかったんだ。兄貴のことを嬉しくないからじゃなくて、俺が必死に築き上げた仕事とお金の完璧な世界に、無理やり入り込まれたような感じがしたから。
招待状には、プラスワン(同伴者)を連れてきてもいいって書いてあって、ほとんどのゲストはそれを楽しんでたみたい。でも、俺は一人で来た。忙しいスケジュールの中で、相応しい相手を見つける時間なんてなかったんだ。俺の人生は仕事とお金が中心で、それが俺に必要な唯一のものだって自分を納得させてた。それらは頼りになって、安定していて、いつか俺を置いていなくなることなんてないんだから。
俺のキャリアは、俺の最大限の献身を求めてて、俺はそれを喜んで与えてきた。企業の階段を冷酷な決意で駆け上がって、その過程でお金と成功を積み重ねた。でも、今、この愛と幸せで満たされた部屋に座ってると、俺は完全に部外者のような気がして仕方がないんだ。
周りのゲストは、見知らぬ顔ばかりで、新郎新婦の友人や家族で、ほんの少ししか会ったことがない人たちばかり。彼らは活発におしゃべりをして、話や笑いを共有してるけど、俺は距離を置いて、異質な世界で傍観者になってた。
夜が更けていくにつれて、俺は自分の人生の選択について考えずにはいられなかった。俺は仕事とお金を何よりも優先して、それが幸せと充実への鍵だって信じてた。人間関係、個人的な繋がり、そして自分の幸せさえも、野心の祭壇に犠牲にしてきたんだ。
俺の考えは、俺が捨ててきた失敗した関係の数々に漂った。俺は、一度も誰にも完全に尽くすことができなくて、いつも愛よりも仕事を選んでた。ガールフレンドたちは次々と現れては消え、俺の厳格に構造化された生活に合う人を見つけるのに苦労したんだ。
そんな時、彼女が視界に入ってきたんだ。
彼女は、ろうそくの柔らかな光の中に座ってて、一瞬、俺は息をするのを忘れたんだ。まるで時が止まったみたいで、その止まった瞬間。
「セバスチャン」俺は言った。彼女に聞こえるようにね。
彼女の答えは気の強そうなものだった。
彼女の目には炎が見えた。彼女の言葉の裏には、隠された意味が聞こえたんだ。燃えるような疑問がね。
この美しい女性のためなら、俺は何だってするだろう。そして、それが兄貴の結婚式のトイレで彼女とヤる事なら、それでいい。
彼女の体は俺の大きな手にぴったりと収まった。まるで、最後のピースが見つかったパズルのようだった。彼女の目は、ミステリーと弱さが混ざり合ったもので輝いてて、彼女の笑顔は数え切れないほどの語られていない物語を約束してるようだった。彼女の存在だけで、俺を中毒にして、炎に引き寄せられる蛾のように俺を引き寄せた。
彼女が懇願するのを見るのが、男が見れる最も熱い光景だってことに気づいたんだ。
彼女のボディーランゲージから、彼女が何かを求めているのが感じられた。何かが掴めないでいるんだ。何かを忘れようとしてるんだ。そしてこの瞬間、俺が彼女に忘れてほしい唯一のことは、彼女の名前だった。
そして、その瞬間、コンドームが切れたんだ。「クソったれ」俺は唸って、やめようとした。でも、ミアは俺をさらに引き寄せた。「子供はできないの」
彼女の声はか細い囁き声だった。他のどんな状況なら、謝って慰めていただろう。でも、今はただ、欲に駆られてた。だから、俺は彼女の唇を奪って、続けたんだ。
俺たちはもう一度お互いの頭をからっぽにする時に、彼女に尋ねるつもりだ。
朝の太陽がカーテンを通り抜けて、部屋に暖かく心地よい光を投げかけてた。ゆっくりと目を覚ますと、俺の手は無意識に隣の空いた空間に伸びた。そして、ミアがいないことに気づいたんだ、俺たちの情熱的な夜の響きだけを残してね。
一瞬、混乱が俺を襲った。彼女はちょっと出かけただけかな?朝食かコーヒーでも取りに?でも、時間が経つにつれて、ミアが一時的に出かけただけじゃないってことが明らかになったんだ。彼女は痕跡もメッセージも残さずに、消えちゃったんだ。
方向感覚喪失感が俺を襲った。昨夜の記憶が、断片的に、ぼんやりと、意識の中に蘇ってきた。トイレでの情熱的な出来事の後、俺たちは何故かここにいたけど、詳細はぼやけてる。俺たちがホテルまで車で来たのか、それともタクシーを使ったのか、思い出せなかった。まるで、夜が俺の記憶に魔法をかけたかのようだった。
前の晩の興奮と暖かさの半分が、俺の中で消え去ったみたいだった。一瞬灯った炎が消し止められ、空虚感だけが残ったかのようだった。
落胆の痛みを禁じ得なかった。ミアは美しかったんだ。マジでドロップデッドゴージャスだった。彼女の存在は、俺の中で何かを燃え上がらせた。長い間感じてなかった何かをね。彼女の美しさが、俺の冷たい心の周りの氷のバリアを溶かしたかのようだった。ほんの束の間だけだったけど。
でも、今、ホテルの部屋で静かに横たわってると、その心は今まで以上に冷たく感じたんだ。俺たちが共有した温かさと繋がりは、彼女と共に消え去り、憧れの痛みと不安な空虚感だけが残った。
ミアは、俺たちの一夜限りの関係以上の意図はなかったってことが明らかになった。彼女は、俺の人生における謎めいた魅力的な存在だった。夜空を短く照らして、闇に消えていった通りすがりの彗星だったんだ。
ゆっくりとベッドから出て、自分の持ち物をまとめ始めながら、俺はミアの動機について考えざるを得なかった。彼女も俺と同じように、自分の現実から逃げたかったのかな?それとも、俺たちの出会いは、人生の複雑さからのほんの一時の気晴らし以上の意味を持たなかったのかな?
多少がっかりしたけど、俺は、その出会いを束の間のロマンスとして、短く情熱的な幕間として、永続的な結果を持たないものとして、自分を納得させたんだ。