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ニューヨーク、セバスチャン
ミアと車に乗って、彼女のあのデカい「イヤ!」って声が頭から離れなくてさ、もうマジで自分にツッコミ入れたくなった。結婚の申し込みを断られるのは男にとって最悪の悪夢だってよく聞くけど、今、俺はまさにその悪夢の中にいるんだよ。名前を変えて、別の国、いや、別の星にでも行きたくなるような経験だった。
でも、もちろん、そんなことになっちまうのは俺、セバスチャン・ソーントン。人生の障害なんていつも優雅に、そして魅力的に乗り越えてきた男だよ。でも、今回は違うんだ。だって、俺の子供を身ごもってるミアが関係してるんだから。
ミアに断られたのは、プライドが傷ついただけじゃない。俺たちの状況がいかに複雑か、ってのをまざまざと見せつけられたんだ。ほとんどお互いのこと知らない二人が、誰も予想も望んでもいなかった、人生を変える出来事に放り込まれたんだから。
ちらっとミアを見たら、怒りと不安が入り混じった顔をしてた。一番気になったのは、その不安。ミアは何が怖いんだ?俺のこと?まさかね。もっと深いところで何かが起きてる。ミアが言いたがらない何か。
彼女のスマホはメッセージでブーブー鳴りっぱなしで、俺は彼女をじっと見てたんだけど、顔色が悪くなっていくんだ。ついにメッセージを読んで、彼女の表情が一変した。顔は青ざめて、目はショックと恐怖で大きく見開かれてた。
思わず近づいちゃった。変な空気とか、そんなのより心配が勝っちゃって。「ミア、どうしたんだ?」って、本気で心配そうな声で聞いた。
彼女は俺を見上げて、唇が少し震えながら、言葉を探してる。「両親が…知ってるの」って、すごく辛そうな声でささやいた。
その言葉は、まるでレンガの塊が落ちてきたみたいに俺を打ちのめした。ミアの両親は、俺たちが置かれてるスキャンダラスな状況を知ってしまったんだ。そして、彼女の反応からすると、それは彼女にとってとてつもない大惨事なんだろう。
俺は彼女に同情せずにはいられなかった。俺の両親も、最近の俺の状況を全く喜んでるわけじゃないけど、ミアの家族よりはよっぽど理解がある。ミアの家族は、間違いなく、娘の妊娠を取り巻く状況に深く落胆するだろうから。
「そんなにヤバいのか?」ってミアに聞いた。本当に知りたかったから。彼女の置かれてる状況がどれほど深いのか、彼女の不安がどれほど大きいのか、全部知りたかったんだ。
彼女の唇から、笑い声とも言えないような、乾いた笑いが漏れた。彼女の中で渦巻いてる感情とは全く違う。「ヤバい?最悪よ」って、彼女はささやくように、弱々しい声で認めた。「特に、まだ離婚のこと、言ってないし。」
その告白に、俺は一瞬言葉を失った。「離婚?」って、驚いて眉を上げた。
ミアはうなずいて、視線を落としたまま、俺に打ち明けてきた。「そう。数か月前まで、ギャビン・キャンベルと結婚してたの。でも、離婚のこと、両親には言ってない。だって、ギャビンが悪くても、たぶん彼らの味方するだろうし。私って、彼らが思い描いてた理想の娘、っていうわけでもないし。」
その言葉に込められた痛みに、俺は心が痛んだ。「君はすごく成功してるファッションコンサルタントだろ?」って、彼女を安心させたくて言った。「君の功績は、それ自体が物語ってる。」
ミアはなんとか笑顔を作って、俺の言葉を受け止めた。「そんなこと、私の両親に言ってよ」って、皮肉っぽく言った。「それに、この妊娠と結婚スキャンダルがニュースになってるし、遅かれ早かれバレると思う。もうちょっと後がいいんだけど…もっとずっと後。」
彼女の苦しみに心を動かされて、俺は手を伸ばして優しく彼女の手を握った。彼女が振り払わないでくれて、ほっとした。「俺たち、一緒だ」って、俺は真剣に言った。「俺の両親も、全然喜んでないし、正直、結婚を勧めてきたのはあいつらなんだ。」
彼女の反応はすぐだった。頭を上げて、信じられないって顔で目を見開いてる。「嘘でしょ」って、驚いて言った。
俺は首を振って、真剣な顔で言った。「いや、嘘じゃない。彼らはすごく宗教的で、彼らにとっては、それが正しいことなんだ。」
ミアはうんざりしたようにため息をついて、窓の外に視線を向けた。俺たちは車で進み、彼女の家の前に着いたんだけど、そこで俺たちを待っていたのは、二人ともゾッとするような光景だった。
「外に、すごい数の車がある」ってミアが不安そうな声で言った。
俺は窓の外を見て、彼女の疑いを確信した。「ああ、そうだね」って俺は答えた。「裏口から行こう」って運転手に言って、パパラッチの執拗な視線を避けようとした。
運転手が振り返って、申し訳なさそうに俺を見た。「すみません、先生。そこも塞がれてます。」
「クソッタレが。」
車の中で、パパラッチに阻まれ、どうやってミアを安全に家に入れるか、俺の頭はフル回転した。でも、どんな計画を立てても、うまくいかない。カメラマンは執拗だし、選択肢は限られてるみたいだった。
「俺のところに行くか?」って俺は、焦りを隠せない声で提案した。「パパラッチがいなくなるまで。」
ミアは疑わしげに俺を見て、明らかに困惑してる様子だった。「あなたのマンションに?」って、不安そうに聞いた。
俺は真剣にうなずいた。「ああ、それが一番安全かもしれない。朝まで泊まれるよ。パパラッチはきっとめちゃくちゃ質問攻めにするだろうし、それは避けてほしいから。」
彼女はしばらく考え込んでいたけど、ついに折れた。「わかった」って、諦めたような声で言った。「ベラに、そっちに泊まるって連絡するわ。」