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ニューヨーク、ミア
息が止まりそうになった。だって、目の前に【セバスチャン・ソーントン】が現れたんだもん。しかも、めっちゃキメキメのビジネスファッションで。あいつが、私が知ってる中で一番イケメンな男だってことは、疑う余地もなかったね。シュッとした顔つき、彫刻みたいなアゴのライン、それから人を射抜くような青い瞳。いつだって、ちょっと息苦しくなるくらいドキドキさせられるんだけど、今日もまさにそうだった。
「何か用?」
って、何とか絞り出したんだけど、聞くまでもないんだよね。だって、あいつが何しに来たのか、私には全部分かってたから。ついつい視線が、あいつの手にある封筒に吸い寄せられて、お腹がぎゅーって締め付けられるような不安が襲ってきた。
【セバスチャン・ソーントン】は、得意の片方の眉毛をクイッと上げて、私を見てきた。その表情は、彼独特のものだった。それから、私を通り過ぎてリビングの方を見たんだ。そこには、【キーラン】と【ベラ】が、気まずそうに【セバスチャン・ソーントン】を見ていた。顔にはっきりと罪悪感が滲み出てたよ。
「会議を中断させられたんだ」
って【セバスチャン・ソーントン】は言い出した。その声には、苛立ちと不満が入り混じってる。私をどけて部屋に入ってくるなんて、ちょっとムカつくけど、何も言わなかった。
「自分が父親になるって知るために」
って、皮肉たっぷりに続けた。私は振り返って彼を見た。胸がドキドキする。こんな風に彼に報告するなんて、想像もしてなかった。でも、運命ってやつは、違うシナリオを用意してたみたい。
【セバスチャン・ソーントン】は、腰に手を当てて、私をじっと見つめて言った。
「俺をハニートラップにかけたのか?」
その言葉が重く空気に漂って、私は恥ずかしさと怒りで顔が赤くなった。
「【セバスチャン・ソーントン】、違うの」
って、震える声で言い訳しようとした。「こんなことになるなんて、思ってなかったの。ただ、その…」
言葉に詰まってしまった。どう説明したらいいのか、この状況に至った複雑な事情を。
「ただ、その…何なんだ?」
って【セバスチャン・ソーントン】が苛立ちを隠さずに聞いてきた。そして、封筒をコーヒーテーブルに置いた。「金が欲しいのか?結局、そういうことか?」
私の怒りが爆発して、頭から湯気が立ちそうな感じ。「ちょっと、あんたね」
って、キツい口調で言いかけたんだけど、またしても【セバスチャン・ソーントン】に遮られた。
「この俺がお前の子供の父親になるんだぞ」
って、彼はイライラした口調で言った。
「勘違いしないでよ」
って、私も同じくらいムカつきながら返した。「私、不妊だって思ってたんだよ。医者のカルテにもそう書いてあったし。でも、問題は私じゃなかったみたい。私の元旦那だったんだ。だから、こんな状況になっちゃってごめんね。あなたが関係者になる必要はないから」
【セバスチャン・ソーントン】は、苦笑いした。慰めるような笑いじゃなくて、むしろ不気味な感じ。「俺をなんだと思ってんだ?子供の面倒も見ない父親かよ!」
って、怒りと傷ついた気持ちが入り混じった声で叫んだ。それから、視線を【キーラン】に向けた。「お前は俺をそう思ってるのか?」
【キーラン】は、厳しい表情で【セバスチャン・ソーントン】の視線を受け止めた。「妹と赤ちゃんのことを一番に考えてるだけだ」
って、彼はきっぱりと言った。それが本心だってことは明らかだった。
【セバスチャン・ソーントン】は歯ぎしりして、イライラを隠せない様子。「俺たちの子供だ」
って、彼は訂正した。トーンは少し優しくなったけど、まだ緊張感が漂ってる。色んな感情でいっぱいになってるのが分かったし、責める気にはなれなかった。この状況は、私たち全員を驚かせたんだから。
【セバスチャン・ソーントン】は、テーブルから封筒を手に取ると、一瞬それを見つめていた。それから、部屋にいる私たち全員に視線を移し、その眼差しは揺るがない。
「よく聞け」
って、彼はきっぱりと言った。「俺は、お前らがどう思おうと、この赤ちゃんの人生に関わる」
そして、素早い動きで封筒を四つに引き裂いた。それは、象徴的なジェスチャーだった。私たち全員が、一瞬呆然としてしまった。彼が私に視線を向けるのを見ていると、その視線は鋭く突き刺さってきた。
「今、何週?」
って、【セバスチャン・ソーントン】は、驚くほど優しい口調で聞いてきた。
「もうすぐ6週」
って、私はか細い声で答えた。引き裂かれた紙切れが、私たちの周りをひらひら舞う。それは、私たちの人生が予期せぬ方向に進んだことを、はっきりと物語っていた。
【セバスチャン・ソーントン】はうなずき、表情を和らげた。状況を理解したように見えた。「次の検診はいつ?」
って、彼は尋ねてきた。妊娠の細部にまで興味を示してることに、私は驚いた。
「3週間後」
って、私は答えた。まだ、彼の突然の関与を理解しようとしていた。
「携帯を貸して」
って、彼は手を差し出した。私は彼の要求に困惑して、「え?」って聞き返した。
「携帯を貸せ」
って、彼は繰り返した。もう我慢できないって感じだった。不安だったけど、従うことにした。携帯を渡すと、彼は何かを素早く打ち込んでいるのが分かった。そして、私に返してくれた。連絡先に彼の番号が登録されていた。「検診の時は、教えてくれ」
って、彼は指示した。その声には、予想外の心配の色が含まれていた。
私はうなずいた。短時間の間に起きた感情と行動の嵐で、まだ心臓はドキドキしていた。彼がここにいること、この旅の一部になりたいと思っていることが信じられなかった。受け止めるには、あまりにも多くのことがあったし、頭の中は無数の疑問でいっぱいだった。
【キーラン】が前に出て、いつものように妹を守る姿勢を見せた。「妹を傷つけるようなことは考えないでくれ」
って、彼は【セバスチャン・ソーントン】を睨みつけた。「彼女は、色んなことを経験してきたんだ」
【セバスチャン・ソーントン】は、【キーラン】をじっと見つめて、真剣な表情で答えた。
「心配するな」
って、彼の言葉には誠実さがこもっていて、私は安心した。
そして、【セバスチャン・ソーントン】は、入ってきた時と同じくらい素早く部屋を出て行った。私たち全員を、ショックと不安の中に置き去りにして。
【セバスチャン・ソーントン】が急に去った後、リビングには、一瞬の静寂が訪れた。引き裂かれた封筒が床に散らばっていて、私たちが目の当たりにした予期せぬ出来事を思い出させている。最初に沈黙を破ったのは、【ベラ】だった。
「マジ、やばくない!?」
って、彼女は興奮した声で叫んだ。目はキラキラ輝いている。「あー、私、あなたのベイビーの一番最高の叔母さんになるんだから!」
【キーラン】は、彼女の興奮に耐えきれず、彼女の頭を軽く叩いた。「みんな落ち込んでる時に、何浮かれてんだよ」
って、彼はからかった。
【ベラ】は、ちょっとだけ不満そうな顔をして頭を撫でた。でも、すぐに満面の笑みになった。
「良くないことなんて、何もないじゃん!」
って、彼女は興奮した声で言った。「赤ちゃんは、祝福なんだよ。しかも、その赤ちゃんが【ソーントン】家の一員になるんでしょ。ちょ、マジかよ、その赤ちゃん、人生勝ち組じゃん!」
彼女の言葉は、軽薄だけど、どこか真実味があった。この状況の混乱の中で、希望と興奮を感じないのは難しい。子供をこの世に迎えるっていうのは、すごく意味のあることだし、【ソーントン】家の名前を背負うってことは、さらに特別な意味を持つ。
【ベラ】の感染力のある興奮を聞きながら、私はかすかに笑みを浮かべた。彼女の言う通り、この子は、どんな状況であろうと、本当に祝福なんだ。でも、心の奥底では、この旅が簡単にはいかないだろうって感じてた。予想できない試練や困難、そして不確実性があるだろうって。
【キーラン】は、いつもみたいに現実主義者で、深呼吸をして、心配そうな目で私を見た。
「大丈夫か?」
って、彼は優しく尋ねた。「これは、受け止めるのが大変なことだし、あなたが大丈夫だって確認したいんだ」
私は彼の心配りに感謝して、うなずいた。でも、私の感情はまだ混乱していた。
「大丈夫だよ、【キーラン】」
って、私は優しく答えた。「ただ…全部、すごく早く起こったから。【セバスチャン・ソーントン】があんな風に反応するなんて、思ってもなかった」
【キーラン】はため息をつき、私を抱きしめるように腕を回してくれた。
「誰も思ってなかったよ」
って彼は言った。「でも、私たちは一緒だし、れからどうすればいいのか、見つけていくよ。あなたは一人でやらなくていいんだ」