15. 「会いたい」
アクセルから9件の着信。
オリビアは、未着信のリストが表示されたスマホの画面を見た。 全部、オリビアがわざと出なかったアクセルからの電話だった。
電話だけじゃない。 アクセルはいろんなメッセージも送ってきた。 それら全てに、オリビアは返信してない。
今夜になっても、アクセルはまだメッセージを送ってきてる。
まさに今も。
[アクセル: オリビア、心配だよ。 電話出て]
[アクセル: 大丈夫?]
オリビアは深くため息をつき、メッセージをぼーっと見つめた。 アクセルを無視したいわけじゃない。 でもオリビアは、落ち着く時間が必要だって感じてた。
今の心はざわざわしてる。 オリビアが無理にアクセルと話したら、嫌な感じになるだろう。 自分の心は話したいって思ってるのに。
「オリビア」 後ろから誰かが声をかけた。
オリビアは視線を動かし、声の元を見た。 カットネスが2つのお皿を持って近づいてくる。 カットネスが近づくにつれて、ベーコンのいい匂いがオリビアの鼻をくすぐった。
「大丈夫?」 カットネスがオリビアの隣に着くと尋ねた。
オリビアの目は、カットネスが持ってるベーコンを見た。 彼女は咳払いをして返事をした。
「ありえないでしょ。 大丈夫なわけないじゃん」 カットネスは答えた。 彼女は息を切らしながら、オリビアの隣に座った。 「あー、スマホの画面をぼーっと見てる人に、なんでそんなこと言っちゃうんだろ」
それに面白くて笑いながら、オリビアは軽く首を横に振った。 スマホは横に置かれた。 ただそこにあるだけ。
「まだお腹すいてるの? もう2食も食べたのに」 オリビアは、親友を見て楽しそうに尋ねた。
見てみよう。 カットネスは、出来合いのベーコンもすごい勢いと手際で食べてる。
オリビアの質問に答えて、カットネスはうなずいた。 「もちろん。 食べる?」
「ううん、いらない。 カットネスだけで」
「え、まだ何も食べてないじゃん」 カットネスは皮肉っぽく返事をして、顔に苛立ちの色を見せた。
オリビアは、それでも温かい甘いお団子を持っていた。
「もうカットネスのラーメン、一杯分だけど食べちゃった」
カットネスは、口の中の食べ物を飲み込んだようで、食べ物のお皿を置いた。 イライラしたような、急いだようなジェスチャーで、キムチラーメンのボウルを手にとった。
少し前、カットネスはたくさんの料理を作った。 彼女は、この食べ物は全部オリビアのためだって言ってた。 でも残念ながら、オリビアは食欲がなかった。 その結果、カットネスはお皿とラーメンのボウルを2杯たいらげた。
「もう一回、これ食べなきゃ」 カットネスは、ラーメンのボウルを渡しながら諭した。
オリビアは顔をしかめ、それを避けるように後ずさった。 「えー、いらない、いらない」 彼女はすばやく首を振った。
カットネスの口からしかめっ面がこぼれた。 諦める気はない。 カットネスはオリビアにラーメンのボウルを押し続けた。
「ダメ、ダメ。 食べなきゃ。 ね、悲しい人は、もっと悲しくなるためにエネルギーが必要なの、知ってた?」
なぜか、オリビアはカットネスの言葉に面白くて笑ってしまった。 時々、彼女の親友は、ただただ面白いジョークを言う。 だからオリビアは、カットネスの純粋さに笑うのを止められなかった。
「いつから悲しい人はもっと悲しくなるように言われるようになったの? 逆のこと言うべきじゃない?」 オリビアはカットネスを露骨にからかった。
幸いなことに、カットネスは全く気にしなかった。 彼女の言葉がジョークだと思ったことに、まだイライラしてたけど。
ついに、カットネスは立ち上がり、オリビアの方に身を乗り出した。
親友を、丸めた宣伝チラシで叩いた。 ウーラは、2人でスーパーで食べ物を買ったときに手に入れたもの。
「あー…」 ヒョンアはこめかみを押さえながら顔をしかめた。 「なんで叩くの? もっと優しくしなきゃ」
「私が料理して、食べなさいって言って、あなたのために一部残しておいたのに。 それを優しさって言わないの?」 ウーラはためらわずに叱った。
ヒョンアはまだ、唇を丸めながらこめかみをさすっていた。 しばらくして、ヒョンアはウーラが自分のために特別に用意したラーメンのトッポッキのボウルを取った。
「そうだね。 悲しい人は、もっと悲しくなるためにエネルギーがたくさん必要だね」 オリビアは、ボウルを近づけながら言った。
「悲しいときは、体のエネルギーを無駄にして、弱く感じたり、めまいがしたりするでしょ。 だから、エネルギーを補給するために食べなきゃいけなくて、それからまた悲しくなれるんだよ」 オリビアはラーメンをかき混ぜながら付け加えた。
カットネスは、オリビアがラーメンを食べ始めるのをじっと見ていた。 イライラしながらも、カットネスはオリビアが気の毒で仕方がなかった。 もちろん、彼女はオリビアが、アクセルとの関係の噂の後で何があったか知っていた。
カットネスの心は、ひそかに痛みでどきどきしてるように感じた。 ただのファンとして、彼らはあまり多くのことができなかった。 あんなに大きなモデル事務所に対して抗議することもできなかったし、まだ確認も出てない。
オリビアは、アクセルのファンからすでにたくさんの非難を受けていた。 全部じゃなくて、一部かもしれない。 でもそれでも、彼女が受けた全ての悪口は傷ついた。
カットネスは本当にオリビアが気の毒だった。 彼女はただ、静かな関係を望んでいただけなのに。
「ねえ、本当に悲しいの?」 カットネスは、今度は前よりもずっと柔らかい視線で尋ねた。
オリビアは、ラーメンを口に運びながら、カットネスをちらりと見た。 彼女はしばらく返事をしなかった。
「そんな風に見える?」 オリビアは、口角を上げて笑顔を作ろうとした。
「ああ、まじか。 演技下手すぎ。 映画事務所の選考に通らなかったわけだ」
カットネスは深くため息をついた。 「選考に通るなんて大したことないよ。 見てよ、もう仕事でかっこよくやってるじゃん。 しかも前の事務所ではさー、ああ… ひどい扱いを受けても生き残ったんだもん」
それを聞いて、オリビアはくすくす笑った。 彼女は、カットネスが何を言ってるか分かってた。 確かに、オリビアは前の事務所ではすごくバカだったんだ - アクセルのマネージャーが彼女を拾って契約する前は。 オリビアは、自分がいつもひどい扱いを受けたいと思っていたのを覚えてた。
「あの頃、何考えてたんだろ、カットネス?」 オリビアは、少し微笑んで尋ねた。 悲しさが彼女の笑顔からにじみ出ていた。 「私を引き受けてくれる場所はないと思ってただけ」
「分かんない。 オリビアはバカだよ。 でも本当にアンラッキーだね、オリビア。 あなたが、あの高い鼻の先輩社長からやっと逃げられたのは嬉しいよ。 残念ながら、新しい仕事でもまたトラブルだね」
「しかももっと大きい」 オリビアは言った。
「うん、あなたの気取り屋の先輩リーダーに対処するより大きいよ。 あなたの人生はなんて悲しいんだ、オリビア」
オリビアはくすくす笑った。 なぜか、こうやって話してると、問題が面白く思えてくる。 自分の問題だけじゃなくて、自分の人生全体が。
オリビアの人生の不幸と悲しみが、どうして面白くなり得るのか? なんでオリビアは、これらの問題を乗り越えながらこんなに泣いてるんだろう?
「ねえ、アクセルと話すべきだよ」
オリビアは両方の眉を上げた。 「ん?」
「きっと、何度も電話してきてるはずだし、一連のメッセージも送ってきてるでしょ」
「両方同時にやってくる」 オリビアは、文末で少し笑って答えた。
カットネスは指を鳴らした。 「そうだよね? とにかく、彼女のせいじゃないし、彼女も追い詰められてるはずだよ。
二人で問題を抱えてるなら、一人で乗り越えるべきじゃない。 一緒に乗り越えるべきだよ」
オリビアの声はもう聞こえなくなった。 オリビアはラーメンで忙しかったけど、頭の中は考え始めていた。 実際、オリビアの心には避けられない心配があった。
アクセルはどうしてるだろう? 一人で泣いてるのかな?
ヒョンアは、アクセルにあたたかい家族がいないことを知っていた。 彼の友達でさえ、不健全な競争をしたがる傾向がある。 じゃあアクセルは、今どうやって自分を落ち着かせられるんだろう?
その結果、オリビアの心は動かされた。 オリビアはスマホを再び手に取ると、ちょうどアクセルからの着信があった。 ヒョンアがカットネスと話している間に、何回電話がかかってきたのか分からなかった。
「出て、ためらわないで」 カットネスは優しく促した。
オリビアはイライラを振り払い、緑色の電話アイコンをスワイプした。 彼女はゆっくりと画面を耳に押し当てた。
「オリビア! うわー、大丈夫? 今どこにいるの? 本当に心配したんだ」
オリビアの心は痛みでどきどきした。 オリビアがアクセル自身が傷ついていることを知っているのに、どうしてジョングクは彼女を心配してるんだろう?