4. 悪い知らせ
「今日はお疲れ様!」
イベントが終わって、モデルたちの解散が始まった。アメリカファッションウィークのスタッフたちは、お互いに頭を下げて感謝の気持ちを伝えている。特に、すでに衣装を着替えたモデルたちに。
モデルたちがそれぞれのマネージャーと会ったり、散っていく中で、アクセルは人差し指で車のキーをいじって時間をつぶしていた。スタッフがちらほら通り過ぎて頭を下げていくと、アクセルも時々頭を下げて返していた。
「アクセル!」
アクセルの耳には、とても聞き覚えのある声が聞こえた。
アクセルは、笑顔で顔を上げた。少し走って近づいてくるジョナサンを見て、アクセルの眉が自然と上がった。
ジョナサンの顔には、何かあったかのような不安そうな表情が浮かんでいた。長い間、マネージャーであるジョナサンと親しくしてきたアクセルは、何かおかしいとすぐに感じた。
「おい、どうしたんだ? なんでそんな顔してるんだ?」
アクセルはジョナサンが隣に立った後に尋ねた。
ジョナサンは走ったせいで息を切らしていた。その合間に、自分の考えが口角をちょっとだけ釣り上げた。
「俺の顔がどう見えるって? かっこいいか?」
ジョナサンは自分の顔を指さしながら尋ねた。わざとらしく可愛い表情を作った。
ジョナサンのことを少し心配していたアクセルは、すぐに顔のしかめを解いた。そして、不快感と嫌悪感を表す表情に変わった。
「本気で聞いてるんだ」
アクセルは少し苛立った顔で言った。
アクセルの苛立った反応を見て、ジョナサンはただくすくす笑った。
「おいおい、そんなに真剣になるなよ。大丈夫だって。ただ…」
ジョナサンは警戒するように周囲を見回した。何かを探しているかのようだった。それからアクセルの腕を掴んで、少し離れた場所に連れて行った。
「あの、突然いなくなった件だけどさ。女の人といたのを見たんだ。誰だったんだ?」
ジョナサンはそう尋ねた。
すぐに答えは返ってこず、アクセルは眉をひそめた。少しの間考えて、ジョナサンが何を言いたいのかを推測しようとした。
「意味がわからない…」
一瞬後、アクセルの顔の混乱は消え、あることに気づいた。「ああ、あれか。メイクを直してもらうために、メイクアップアーティストの一人に声をかけたんだ」
ジョナサンの目は一瞬にして見開かれた。驚きと警告の間で、アクセルに近づき、ジョナサンはすぐに囁いた。「なんで女性のメイクアップアーティストに声をかけたんだ?」
「マジかよ。別に何でもないって、ジョナサンさん。メイクを直したかっただけだって…」
「メイクルームにはたくさんのスタッフがいるのに、お願いできなかったのか?」
ジョナサンはイライラしたような声で言った。
最初はアクセルも驚いた顔で振り返った。マネージャーが自分にそんな顔をしなければならない理由が分からなかった。それに、今見ても、その顔には得意げな表情が浮かんでいる。
しかし、これ以上問題を長引かせたくなかったアクセルは、ジョナサンの顔を押しやりながら、ため息をついた。アクセルは気だるそうに目を回して上を見た。
「マジかよ! ヒョンアにメイクをしてもらってるのに、なんで他の人に頼めるんだよ? 違う人じゃ、違う結果になるだろ」
アクセルはそう説明したが、それは不満の声にも聞こえた。
問題は、マネージャーのジョナサンがこんな風にパニックになるのはこれが初めてではないということだ。ずっと前から、女性との親密さを嗅ぎつけるたびに、たとえオリビアとのさっきの一度だけの会話のようなものでも、そうだった。
アクセルは、ジョナサンの心配をどうすれば和らげられるのか、本当に分からなかった。もう5年近く一緒にいるのに。
「オリビア?」
ジョナサンは考え込むように言った。「さっき邪魔になったメイクアップアーティスト?」
アクセルは肯定するように頷いた。「そうだよ。あの先輩はすごく怖いんだ」
「マジかよ…」
アクセルの顔を見て、ジョナサンは信じられないといった様子で腰を叩いた。「もしも先輩が知ったら、色んなこと考えそうだぞ…」
「もう知ってるよ」
アクセルはすぐに口を挟み、ジョナサンは睨んだ。「でも誤解はしないって。メイクを直してほしいだけだってことは、もう彼女に説明したから」
ジョナサンは額を叩いた。目を閉じて、神経質なため息をついた。
「もしも…ってことになったら、どうなるか…」
「大丈夫、心配しないで」
アクセルはまた言った。かすかな笑顔を見せながら、ジョナサンの肩を軽く叩い。「何も起こらないって。もっとポジティブに考えなきゃだめだよ」
ジョナサンはすぐに額から手を離し、アクセルを睨んだ。「俺がもっとポジティブに考えろって? 君が女の人と親密になったニュースが出るたびに、どれだけ後始末しなきゃいけないか、想像もできないだろうが!」
アクセルは周囲を見回し、ジョナサンの肩に手を置いた。アクセルはわざと下を見て、マネージャーに何かを囁いた。
「いつもありがとう、お気に入りのマネージャー。でも、そんなに神経質にならなくてもいいんだよ」
ジョナサンは不快そうな顔で、飲み込むようにして顔を背けた。意味深な笑顔を向けるアクセルを見て、ジョナサンはアクセルの手を払った。
「気をつけろよ。女の人とのニュースが多いんだから」
ジョナサンは忠告した。
今度はアクセルの番で、腰を縮めた。なぜか、ジョナサンの何度も繰り返される警告を聞くと、耳がピンと立った。自分の心を縛るものがあるような気がした。
「またこんな風に禁止するのか? はあ…、俺は自分の家族を持てないかもしれない」
アクセルは上を見て不満げにうめいた。
ジョナサンは、苛立ちながらも、少し同情した目でアクセルを見た。「おいおい、本当に気の毒だよ。誰が君にパートナーを持つなって言ったんだ?」
アクセルはすぐに視線でジョナサンを非難した。
非難が自分に向けられたと感じたジョナサンは、すぐに気まずそうになった。しかし、ジョナサンは冷静さを保とうとした。
「いや、そうじゃなくて。パートナーはいてもいいけど、勘違いしちゃだめだって。絶対に君のパートナーだって確信できる人じゃないと」
ジョナサンは不安そうな口調で言った。
アクセルはジョナサンの言葉に納得した様子はなかった。「まじ? じゃあ、俺のファンが確認を求めてきたとき、君は対応できるのか?」
いや、アクセルはジョナサンが、関係の確認を求める多くのパーティーやファンに疲れ果ててしまうことを知っていた。
ジョナサンはため息をついた。「俺がどれだけプロフェッショナルか、まだ分からないのか?」
アクセルは口を閉じてくすくす笑い、ジョナサンの肩を叩いた。アクセルの気のせいかもしれないが、ジョナサンの顔には徐々に不安の色が現れていた。彼の目はあちこち動き、アクセルの目をまともに見ようとしなかった。
ジョナサンを少しの間見ていると、アクセルは携帯電話のバイブレーションを感じた。彼は少しびくっとし、コートの内ポケットから携帯電話を取り出した。
「もしもし、パパ?」
アクセルは、電話で父親に挨拶した。
ジョナサンはアクセルを好奇心いっぱいに見ていた。眉をひそめたが、アクセルが徐々に不安な表情を見せると、しかめっ面は深まった。ジョナサンは、アクセルの目に鋭い光を見たとき、嫌な予感がした。
「でも、パパ、俺は…」
アクセルの声は父親に遮られた。その結果、アクセルは気だるそうに目を回し、口から息を吐き出した。「わかりました、パパ。行きます。でも、俺が何か見せるものもあるんです」
そう言ってから、アクセルは電話の画面をしまった。電話は切れていた。アクセルの目は、携帯電話の画面を見つめ、とても落胆した様子だった。
「やばいな、ジョナサンさん…」
「どうした? パパが何て言ったんだ?」
ジョナサンは矢継ぎ早に言った。彼は近づき、好奇心と心配の両方の気持ちでアクセルを見た。
アクセルは顔を上げ、理解不能な表情でジョナサンを見た。
「パパが、未来の奥さんを連れてくるからって、俺を呼んだんだ」