6. 彼の肯定の言葉
オリビアとアクセルの間の空気、なんか気まずくなったよね。
家族会議が終わって、アクセルはオリビアを車で送ることになったんだ。マネージャーのジョナサンも一緒で、アクセルの車でね。オリビアとアクセルの間で、アクセルの父の最後の言葉が響いてた。「結婚しなさい」って言ってたやつ。
オリビアは、まさかこんな日が来るとは思ってなかった。どう反応していいか分かんないんだよね。一方では、アクセルの近くにいれるのが嬉しくてしょうがない。でも、もう一方では、なんか変だなって思ってた。
アクセルの家族は、息子の嫁を選ぶのにめっちゃ厳しいらしいから。
てか、待って、アクセルは結婚相手として見られてるってこと!?
「オリビア」ってアクセルが話し始めた。「今日は変なことになっちゃってごめん。何もバラさないでって頼んだでしょ。」
オリビアはしばらくアクセルを見てた。なんか罪悪感みたいなのが伝わってきて、無視できなくなっちゃったんだよね。しかも、アクセルの顔には、悪意とか全然感じなかったし。
「私が誰にバラすって言うの?」オリビアは平静を装って、軽い笑顔を見せた。「そんなことしないよ。」
アクセルはクスクス笑った。その笑い声が心地よくて、オリビアの心は落ち着いた。
「お前の仕事も、エンタメの世界と繋がってるじゃん。まさか、メディア関係の人と仲良いなんて、誰にも分かんないからね。」アクセルはわざと挑発するように顔を作った。
オリビアは首を振って、クスクス笑った。「じゃあ、いくらギャラをもらえて、いくら慰謝料を払わなきゃいけないの?」
「事務所の優しさ次第かな。」アクセルは答えた。
オリビアはベンチの背もたれに頭を預けて、にっこり笑って、大きくため息をついた。
「あんたは大スターなんだから、事務所のお気に入りでしょう。許してもらえないでしょ。」オリビアはアクセルの冗談に意地悪く言い返した。
二人の会話を聞いていたジョナサンがクスクス笑った。
「おい、オリビア、彼は事務所のお気に入りだけど、何か知ってるか?」
アクセルはすぐにビビった顔でジョナサンを見た。アクセルと違って、オリビアはジョナサンが何を言いたいのかすごく興味津々だった。
「ジョナサンさん、何を言いたいんですか?」アクセルは警戒した口調で言った。「余計なこと言うなよ。」
オリビアの眉毛は一瞬で上がって、アクセルとジョナサンを交互に見つめた。ジョナサンは、アクセルのパニックな反応を見て笑ったんだ。
「何だと思う?」オリビアは聞いた。
「あいつは、画面で見てる姿とか、今お前さんの前で見せてる姿とは全然違うんだよ。本当のあいつがどんなやつか、お前は知らないでしょ?」
「本当の?」オリビアは混乱した。
マネージャーのジョナサンが何か企んでるような笑顔を見せたから、オリビアはさらにドキドキしちゃった。アクセルはすぐに前に出て、運転席と助手席を両方とも強く掴んだ。
「ジョナサンさん、俺をからかうのはやめてくれ。」アクセルはジョナサンを警戒するように言った。「なんか俺に仕掛けようとしてるんでしょ?」
なんだか、オリビアにはジョナサンとアクセルの行動が面白く感じられた。オリビアは、二人がこんなに親しい仲だったってことに初めて気づいたんだよね。もう、マネージャーと隠れモデルって感じじゃない。
「アクセルを困らせるようなことは言わないで。」オリビアは、アクセルの懇願するような視線の間を縫うように言った。
「あー、そうそう、お前は今、アクセルの本当の姿の一つを見たんだよ。」
オリビアはまた眉毛を上げたけど、面白くて笑わずにはいられなかった。ジョナサンの余計なお節介に諦めて、アクセルは大きくため息をついた。
「マジで…マジで人間じゃないんだな。」アクセルはそう言って、すぐに片手で顔を覆った。
「まあ、」ジョナサンは指を鳴らした。「ほら、オリビア、もし本当に結婚することになったらさー」
「やめろ。」アクセルはジョナサンを遮った。
三人の間の空気は一瞬で静かになった。オリビアの顔の楽しそうな笑顔がゆっくりと消えていく。オリビアは、すぐに顔を上げたアクセルを見て、混乱した。アクセルは顔色が悪かった。
「あの、今夜は、ただ家族に連れて行くだけなんだ。」アクセルはすぐに態度を改めて言った。「オリビアは何もあって欲しくないんだ。
もし、俺のファンがこれを知ったら、きっと受け入れられないやつもいるだろうし。そしたら、オリビアを攻撃したりするかもしれないし。」
ジョナサンは顔をしかめて、一瞬呆然とした。アクセルがこんなに早く拒絶するとは思わなかったんだよね。それに、ジョナサンは、アクセルのこの反応がオリビアを怒らせるんじゃないかってちょっと心配だった。
前に起きたみたいに。アクセルがたまたま写真を撮りたくないってポロッと言った時、ファンの一人が怒ったんだよね。アクセルはファッションウィークのイベントでめっちゃ忙しかったから、疲れ切ってたんだけど。
それに、アクセルと契約してるブランドの撮影とか。国内、海外問わず、CM撮影とかもあったりして。
「あー、そうだ…君のファン。」オリビアは気まずそうに笑った。オリビアは、アクセルが自分と同じレベルじゃないって思ってるから、こんな態度をとってるんだって考えちゃって、動揺したんだよね。そりゃ、ファンとアイドルの間には、全然違う身分があるし、ね?
「もし、私たちが付き合ってるってことを知られたら、たとえそれがただのフリだったとしても、あなたのファンは反対するだろうね。」オリビアは続けた。「だって私もただのあなたのファンだし。他のファンにも申し訳ないし。ファンとアイドルってのは…」
オリビアは、右手と左手のひらを使って、重さを測るような仕草をした。でも、どっちも微妙。
右手のひらのほうが上だった。
「すごく一方通行だよね。」オリビアはそう言って、最後に小さく笑った。
アクセルはオリビアの真ん丸な瞳に視線を長く、そして激しく落とした。なんだかオリビアの目に悲しそうな光を見て、気分が悪くなったんだ。
「お前が俺と同じレベルじゃないって言ってるわけじゃないんだ。」アクセルは、罪悪感たっぷりの表情でオリビアを見た。
「大丈夫だよ。そんなこと思ってないから。」オリビアは、何気なく手を振って言った。
「でも、お前の目つきがそう言ってる。」アクセルは露骨にオリビアに視線を合わせ、オリビアは気まずくなった。「それに、お前は他のファンとは違うみたいだし。」
オリビアは眉をひそめた。「どういうこと?」
運転席で、ジョナサンは首を振って、歪んだ笑顔を見せた。ジョナサンは、アクセルの突然の出発を予想してたけど、結果的にオリビアに会うためだったんだよね。
アクセルにとって、何かメリットがないとおかしいでしょ?
「いや、ただ…お前は面白いって思っただけ。」アクセルは本題に入った。「お前は仕事ができる。自分の仕事ができるやつってのは、俺の目にはいつももっと価値があるんだ。
それに…お前はヒステリックに叫んだり、キャーキャー言ったり、俺に近づこうとしたりもしない。他人の居心地の良さに配慮してるんだよ、オリビア。」
オリビアはアクセルがそう言ったことに呆然とした。アクセルの言葉を否定したい自分がいた。でも、アクセルの目に映る誠実さを見て、オリビアは躊躇した。
「マジで…本気?」オリビアは聞いた。「なんで、そんな冗談みたいなこと言うの?」
アクセルは落ち着いて笑った。「冗談みたい?俺も真面目なセリフが冗談みたいに聞こえるってこと、今気づいたよ。」
ちょ、ちょ、ちょ。何が起きてるの?
オリビアの心臓は一瞬ドキッとして、すぐに緊張した。全身が硬直して動けなくなっちゃった。アクセルの言葉を消化する時間が必要だったんだよね。その言葉は、胸をくすぐるようなものだったから。
オリビアは、本当にどうしたらいいか分かんなかった。どうしてアクセルは、こんなに影のある場所で、自分を見てる時でさえ、もっと魅力的に見えるんだろう!?