第81章
飛行機(ひこうき)のキャビン(きゃびん)に入(はい)ったのは、みんなで、席(せき)は4つ。スターク・オリバー・ゴメスは、中(なか)の様子(ようす)を見(み)てから、みんなのところへ戻(もど)ってきたんだ。
「よし、飛行機(ひこうき)には寝室(しんしつ)が2つしかないんだけど、どうする?」
スターク・オリバー・ゴメスが聞(き)いた。
「あー、私(わたし)とロージーは1つ使(つか)うわ。マジでゆっくり休(やす)みたいし、6時間(じかん)も座(すわ)ってると疲(つか)れるし」
サミーがそう言(い)ってクスクス笑(わら)った。
「わかった。じゃあ、そっち使(つか)って」
スターク・オリバー・ゴメスはそう言(い)って、右(みぎ)を指(さ)した。
サミーはうなずいた。「さあ、ハニー(はにー)、ちょっと寝(ね)よう」
そう言(い)ってロージーの手(て)を取(と)ったんだ。
「あら、私(わたし)の旦那(だんな)になる人(ひと)って、ロマンチック(ろまんちっく)ね」
ロージーがそうつぶやくと、みんな笑(わら)った。2人(ふたり)は歩(ある)き去(さ)って、アリアナ、スターク・オリバー・ゴメス、そしてレナ姫(ひめ)だけが客室(きゃくしつ)に残(のこ)った。
「えーと…私(わたし)はレナ姫(ひめ)と一緒(いっしょ)に、もう1つの部屋(へや)を使(つか)うわ。2人(ふたり)ともゆっくり休(やす)む必要(ひつよう)があるから」
アリアナは、スターク・オリバー・ゴメスの目(め)を見(み)ずにそう言(い)った。
「あー、俺(おれ)もその寝室(しんしつ)を使(つか)おうと思(おも)ってたんだ。めっちゃ疲(つか)れてるし。今週(こんしゅう)は忙(いそが)しかったし、昨夜(さくや)はほとんど寝(ね)てないし」
スターク・オリバー・ゴメスは、がっかりしたアリアナに答(こた)えた。
「つまり、あなた達(たち)は、私(わたし)のために寝室(しんしつ)を空(あ)けたいってこと?」
アリアナは顔(かお)をしかめて尋(たず)ねた。
「いや、全然(ぜんぜん)…一緒(いっしょ)に使(つか)うのはどう?」
スターク・オリバー・ゴメスが答(こた)えた。
「一緒(いっしょ)に?」
アリアナはつぶやいた。
「そうだよ、最高(さいこう)じゃん」
レナ姫(ひめ)が元気(げんき)よく言(い)った。
「そんなの嫌(いや)だよ。あなたと一緒(いっしょ)の部屋(へや)も、一緒(いっしょ)のベッド(べっど)も嫌(いや)だから、絶対(ぜったい)に思(おも)わないで」
アリアナはそう言い放(いはな)った。
「でもママ(まま)、なんでそれがダメ(だめ)なの?」
レナ姫(ひめ)はそう言(い)いながら、ママ(まま)をじっと見(み)つめた。一緒(いっしょ)に寝(ね)ることが、そんなに悪(わる)いことだと思(おも)えなかったんだ。
「あなたまだ子供(こども)でしょ、レナ…まあ、やめときなさい。まだ分(わ)からないことばっかりなんだから」
アリアナはそう答(こた)えた。
「子供(こども)の言(い)うとおりだよ。一緒(いっしょ)の部屋(へや)で何(なに)がそんなに悪(わる)いの? 広(ひろ)いし、俺(おれ)たち2人(ふたり)入(はい)れるし、飛行時間(ひこうじかん)だけだし、永住権(えいじゅうけん)みたいじゃないんだから」
スターク・オリバー・ゴメスはそう言いながら、アリアナを見(み)つめた。
今回(こんかい)は頑固(がんこ)を貫(つらぬ)きたかったんだ。アリアナの要求(ようきゅう)に簡単(かんたん)に屈(くっ)するつもりはなかった。もし同(おな)じ部屋(へや)に泊(と)まらせることができれば、話(はなし)を聞(き)き出(だ)せるかもしれないし、この飛行機(ひこうき)で何(なに)か解決(かいけつ)できるかもしれない。
「全(すべ)ての乗客(じょうきゃく)の皆(みな)様(さま)、シートベルト(しーとべると)をお締(し)めください。間(ま)もなく離陸(りりく)します」
パイロット(ぱいろっと)の声(こえ)が、トランシーバー(とらんしーばー)から響(ひび)いた。
みんなは黙(だま)って互(たが)いを見(み)つめ、急(いそ)いで席(せき)についた。飛行機(ひこうき)はすでにタイヤ(たいや)の上(うえ)を転(ころ)がり始(はじ)めていて、すぐに上昇(じょうしょう)するだろう。
最後(さいご)にパイロット(ぱいろっと)の指示(しじ)に従(したが)わなかったとき、アリアナは飛行機(ひこうき)の中(なか)で吐(は)いてしまった。それはフランス(ふらんす)に向(む)かう途中(とちゅう)で、そんな事態(じたい)を繰(く)り返(かえ)したくなかったんだ。
スターク・オリバー・ゴメスは、レナ姫(ひめ)のシートベルト(しーとべると)を手伝(てつだ)った。しかし、後(うし)ろの席(せき)に戻(もど)ろうとしたとき、飛行機(ひこうき)が急(きゅう)に上(あ)がり、彼(かれ)はバランス(ばらんす)を崩(くず)した。後(うし)ろに倒(たお)れて、アリアナの腕(うで)の中(なか)に突(つ)き刺(さ)さったんだ。彼女(かのじょ)は後(うし)ろの席(せき)に座(すわ)っていて、彼(かれ)は彼女(かのじょ)にぶつかり、顔(かお)は彼女(かのじょ)のすぐ近(ちか)くにあった。
飛行機(ひこうき)が安定(あんてい)するまで、彼女(かのじょ)の席(せき)の背(せ)もたれに掴(つか)まっていた。キス(きす)寸前(すんぜん)だったが、彼(かれ)の目(め)は彼女(かのじょ)に釘付(くぎづ)けになっていた。キス(きす)したいと思(おも)っていたのはアリアナで、彼女(かのじょ)はずっと彼(かれ)の唇(くちびる)を見(み)つめていて、飛行機(ひこうき)にもっと倒(たお)れてほしかった。そうすれば、もう一度(いちど)あの唇(くちびる)を味わ(あじ)えるから。
しかし、飛行機(ひこうき)は空(そら)に上(あ)がり、安定(あんてい)したので、スターク・オリバー・ゴメスは手(て)を離(はな)して立(た)ち上(あ)がらなければならなかった。深呼吸(しんこきゅう)をして、服(ふく)を整(ととの)えた。気(き)まずく感(かん)じたアリアナは、彼(かれ)から目(め)をそらして俯(うつむ)いていた。
「よし、もう部屋(へや)に行(い)こう」
スターク・オリバー・ゴメスがそう言(い)った。
「うん、パパ(ぱぱ)、私(わたし)も眠(ねむ)いんだ。女(おんな)の人(ひと)たち、昨夜(さくや)はずっと起(お)きてて、ハワイ(はわい)で何(なに)をするか話(はなし)てたから」
レナ姫(ひめ)はそう言(い)ってため息(いき)をつき、腕(うで)を後(うし)ろに伸(の)ばした。
「あなただって、起(お)きてなきゃいけない理由(りゆう)なんてなかったでしょ。自分(じぶん)でそう選(えら)んだんだから…実際(じっさい)、私(わたし)はあなたに寝(ね)るように頼(たの)んだけど、あなた聞(き)いてくれなかったじゃない」
アリアナが言(い)った。
「本当(ほんとう)だよ、パパ(ぱぱ)に言(い)いたいのは、あなた達(たち)が私(わたし)を眠(ねむ)らせなかったってことじゃないんだ。ただ、パパ(ぱぱ)に知(し)ってほしいから、なんで遅(おそ)くまで起(お)きてたのか説明(せつめい)しただけ」
レナ姫(ひめ)はそう言(い)って、シートベルト(しーとべると)を外(はず)した。
「私(わたし)には言い訳(いいわけ)したくないくせに、なんで今(いま)パパ(ぱぱ)にしてるの?」
アリアナは眉(まゆ)をひそめて尋(たず)ねた。レナ姫(ひめ)が、自分(じぶん)よりスターク・オリバー・ゴメスを好(す)いているのではないかと考(かんが)え始(はじ)めていて、もしそうなら、彼(かれ)に負(ま)けてしまう可能性(かのうせい)がずっと高(たか)くなる。
彼女(かのじょ)が一番(いちばん)嫌(いや)なのは、子供(こども)の親権(しんけん)を失(うしな)うことで、スターク・オリバー・ゴメスに渡(わた)すくらいなら、まだましだった。スターク・オリバー・ゴメスが裁判(さいばん)に持(も)ち込(こ)むと、あの小(ちい)さな女の子(おんなのこ)に誰(だれ)と一緒(いっしょ)にいたいか尋(たず)ねることになり、それが判事(はんじ)の最終的(さいしゅうてき)な判断(はんだん)に影響(えいきょう)することを彼女(かのじょ)は知(し)っていた。
もしレナ姫(ひめ)がスターク・オリバー・ゴメスを選(えら)ぶと、彼女(かのじょ)は終(お)わりだ。彼女(かのじょ)はレナ姫(ひめ)なしでは生(い)きていけないと思(おも)っており、スターク・オリバー・ゴメスにレナ姫(ひめ)を失(うしな)う可能性(かのうせい)が彼女(のじょ)を怖(こわ)がらせた。
「アリアナ、なんでこの小(ちい)さな女の子(おんなのこ)の言動(げんどう)に文句(もんく)を言(い)うんだ? 余計(よけい)な問題(もんだい)を引(ひ)き起(お)こしてるだけだろ」
スターク・オリバー・ゴメスが言(い)い争(あらそ)った。
「ミスター・ゴメス、これは私(わたし)と娘(むすめ)のことなの。それに、あなたがそんなに疲(つか)れてるなら、さっさと自分(じぶん)の部屋(へや)に行(い)けばいいじゃない。結局(けっきょく)、あなたがチケット(ちけっと)を取(と)ったんでしょう。私(わたし)は娘(むすめ)と一緒(いっしょ)にここにいるわ」
アリアナはそう言い返(いかえ)した。
スターク・オリバー・ゴメスはため息(いき)をついた。もう言い争(あらそ)うことにも疲(つか)れていた。いつも彼女(かのじょ)に勝(か)たせる必要(ひつよう)はないかもしれないし、時(とき)には厳(きび)しくしてもいいのかもしれない。もし彼女(かのじょ)がここにいたいのなら、彼女(かのじょ)に任(まか)せておこう。
「分(わ)かったよ。じゃあ…君(きみ)がそうしたいなら、ここにいてもいいよ。俺(おれ)もできる限(かぎ)りは説得(せっとく)してみた」
スターク・オリバー・ゴメスはそう言(い)って、諦(あきら)めた。
「ちょっと待(ま)って、パパ(ぱぱ)、私(わたし)も行(い)く」
レナ姫(ひめ)はすぐさまそう言(い)った。
「え?」
アリアナは驚(おどろ)いてつぶやいた。レナ姫(ひめ)がまた彼女(かのじょ)を捨(す)てたなんて信(しん)じられなかった。レナ姫(ひめ)は彼(かれ)のことをまだ1週間(しゅうかん)と数日(すうじつ)しか知(し)らないのに、いつも彼女(かのじょ)より彼(かれ)を選(えら)ぶなんて、もし彼(かれ)に何(なん)ヶ月(かげつ)も一緒(いっしょ)にいたら、永遠(えいえん)に娘(むすめ)を失(うしな)うかもしれない。
「うん、ママ(まま)、私(わたし)も休(やす)みたいんだ。さっきそう言(い)ったとき、冗談(じょうだん)を言(い)ってたわけじゃないから」
彼女(かのじょ)はそう言い、再度(さいど)注意(ちゅうい)した。
「あなた、私(わたし)をここに残(のこ)して行(い)くなんてできないわ」
アリアナはキャビン(きゃびん)を見渡(みわた)しながら言(い)った。
スターク・オリバー・ゴメスはクスクス笑(わら)った。彼女(かのじょ)は彼(かれ)をきつく睨(にら)みつけ、彼(かれ)はすぐにゴクリと唾(つば)を呑(の)み込(こ)んだ。まあ、アリアナは日(ひ)ごとにロージーみたいに攻撃的(こうげき)になってきてるな。結局(けっきょく)、「同(おな)じ羽(はね)の鳥(とり)」っていうのは本当(ほんとう)だったんだな、何年(なんねん)も経(た)ったけど。
「まあ、なんでパパ(ぱぱ)とケンカ(けんか)しないで、一緒(いっしょ)に中(なか)の部屋(へや)に行(い)かないの? そんなに悪(わる)いこと?」
レナ姫(ひめ)がそう尋(たず)ねて、ふくれっ面(つら)をした。
アリアナはもう一度(いちど)周(まわ)りを見渡(みわた)し、ため息(いき)をついた。「分(わ)かったわ、じゃあ、あなた達(たち)は行(い)きたいところに行(い)けばいいわ。私(わたし)はここにいるから」
彼女(かのじょ)はそう断固(だんこ)として言(い)、席(せき)に座(すわ)り直(なお)した。彼(かれ)らがまだそこにいるかどうかも気(き)にせず、シートベルト(しーとべると)を締(し)めた。
スターク・オリバー・ゴメスはため息(いき)をつき、レナ姫(ひめ)の小(ちい)さな手(て)を取(と)った。「さあ、レナ、寝(ね)よう」
そう言(い)って、彼(かれ)は彼女(かのじょ)を連(つ)れて歩(ある)き始(はじ)めた。
彼(かれ)らは真ん中(まんなか)のドア(どあ)に達(たっ)し、スターク・オリバー・ゴメスは止(と)まった。アリアナの方(ほう)を振(ふ)り返(かえ)ると、彼女(かのじょ)が彼(かれ)らの方向(ほうこう)を見(み)つめているのが目(め)に入(はい)った。彼(かれ)を見(み)た瞬間(しゅんかん)、彼女(かのじょ)は顔(かお)をそらした。彼(かれ)は落胆(らくたん)して頭(あたま)を振(ふ)り、レナ姫(ひめ)と一緒(いっしょ)に入(はい)っていった。
アリアナはまた振(ふ)り返(かえ)ると、彼(かれ)らがいないことに気(き)づいた。彼女(かのじょ)はため息(いき)をつき、席(せき)のヘッドパッド(へっどぱっど)に頭(あたま)を預(あず)けた。早(はや)く結婚(けっこん)を終(お)わらせて、娘(むすめ)をスターク・オリバー・ゴメスから遠(とお)ざけなければならないと考(かんが)えた。彼(かれ)の周(まわ)りにいるのは、どんなに中毒性(ちゅうどくせい)があるか知(し)っていたし、自分(じぶん)も娘(むすめ)も、そこに戻(もど)りたくなかったんだ。
続(つづ)く!!