第91章
ものすごい、ものすごい建物(たてもの)の前(まえ)に車(くるま)が止(と)まって、みんなびっくりして口(くち)をあんぐりさせちゃった。こんなすごいもの、たぶん初(はじ)めて見(み)たんだろうね。
「これがあの、ロイヤル・ハワイアン・センター?」 スターク・オリバー・ゴメスは、そこに視線(しせん)を釘付(くぎづ)けにしてた。
「はい、そうです。ここはワイキキで一番(いちばん)のショッピング、お食事(しょくじ)、エンターテイメントの場所(ばしょ)です」 ツアーガイドが答(こた)えた。「それから、ロイヤル・グローブに入(はい)って、ヘルモアの豊(ゆた)かな遺産(いさん)を発見(はっけん)することをお勧(すす)めします。ロイヤル・ハワイアン・センターの中心(ちゅうしん)にある、ワイキキの歴史的(れきしてき)なココナッツの森(もり)です」 デイモンもそう言(い)った。
「すげー」 レナ姫が小声(こごえ)でつぶやいた。
「もういいって、デイモン。俺(おれ)はもう、よだれが止(と)まらないよ」 サミーもそう言(い)った。
「よし、試(こころ)してみよう。でも、その前(まえ)に全部(ぜんぶ)見(み)て回(まわ)らないとな。俺(おれ)たちは観光(かんこう)に来(き)たんだったろ? 食(た)べる前(まえ)に、まずは見物(けんぶつ)」 スターク・オリバー・ゴメスは、決(き)めつけるように言(い)った。
「わかった」
「うん」
「ま、どーでもいいけど」 みんな同時(どうじ)につぶやいた。
「デイモン、お前(まえ)は車(くるま)に戻(もど)って、駐車場(ちゅうしゃじょう)でスペースを探(さが)すのを手伝(てつだ)ってくれ」 スターク・オリバー・ゴメスが指示(しじ)した。
「あ、ちょうど言(い)おうとしたところです…あの、駐車場(ちゅうしゃじょう)がちょっと問題(もんだい)でして、もしスペースが見(み)つかっても、1時間(じかん)ごとに2ドル払(はら)わなきゃいけないんです」 ツアーガイドが答(こた)えた。
「オーケー、それは問題(もんだい)ない。それ、会計(かいけい)に加(くわ)えといて」 スターク・オリバー・ゴメスが指示(しじ)すると、リムジンから降り(おり)た。他(ほか)のみんなも、言(い)われなくてもそうするしかないのは分(わ)かっていた。
デイモンと運転手(うんてんしゅ)を除(のぞ)いて、みんな車(くるま)から出(で)た。「あの、これが必要(ひつよう)かもしれません」 デイモンがそう言(い)、手(て)を車(くるま)から出(だ)した。そこには、一枚(いちまい)の紙(かみ)があった。
「ん…これは何(なに)?」 スターク・オリバー・ゴメスはそう言(い)って、彼(かれ)から紙(かみ)を受(う)け取(と)った。
「あ、ロイヤル・ハワイアン・センターのショップリストです。何(なに)が必要(ひつよう)か分(わ)かるように」 デイモンが答(こた)えた。
「おお…サンキュー」 彼(かれ)は感謝(かんしゃ)の気持(きも)ちを込(こ)めてそう言(い)、建(た)て物(もの)に向(む)き直(なお)り、リストをじっと見(み)つめた。
「誰(だれ)も車(くるま)に何か忘(わす)れてないよね?」 サミーがそう言(い)、運転手(うんてんしゅ)は駐車場(ちゅうしゃじょう)に向(む)かって車(くるま)を発進(はっしん)させた。
みんな自分(じぶん)の持(も)ち物(もの)をチェックし、大丈夫(だいじょうぶ)だと確認(かくにん)すると、スターク・オリバー・ゴメスが先頭(せんとう)に立(た)ってセンターに入(はい)った。ドアでは、スタッフが温(あたた)かい笑顔(えがお)で迎(むか)えてくれた。
「ガイドは必要(ひつよう)ですか?」 女性スタッフの一人(ひとり)がスターク・オリバー・ゴメスに尋(たず)ねた。
彼(かれ)は微笑(ほほえ)み、頭(あたま)を振(ふ)った。「いや、もう一人(ひとり)いるから大丈夫(だいじょうぶ)だよ、ありがとう」
「ハンサムなお客様(きゃくさま)のためなら何(なに)でも」 彼女(かのじょ)は笑顔(えがお)で答(こた)え、アリアナは鼻(はな)で笑(わら)った。すぐさま彼女(かのじょ)の表情(ひょうじょう)は変(か)わり、気(き)づいたのだ。「すみません、失礼(しつれい)なことを言(い)いました」 彼女(かのじょ)はそう付(つ)け加(くわ)えた。
「いいんだよ、何(なに)も悪(わる)いことしてない。特(とく)に独身(どくしん)のゲストを褒(ほ)めるのは悪(わる)くない」 スターク・オリバー・ゴメスが答(こた)えると、彼女(かのじょ)はクスクス笑(わら)った。
「褒(ほ)めてくれてありがとう、そろそろ行(い)くね」 アリアナがすぐさま割(わ)り込(こ)み、スターク・オリバー・ゴメスを建物(たてもの)の中(なか)に押(お)し込(こ)んだ。
「ちょっと待(ま)って、お客様(きゃくさま)、まだアクセスステッカーを受(う)け取(と)ってないじゃないですか?」 その女性(じょせい)は言(い)ったが、アリアナは彼(かれ)を引(ひ)きずり続(つづ)けた。
「あ、それ、全部(ぜんぶ)僕(ぼく)がもらうよ」 サミーが彼女(かのじょ)に言(い)うと、彼女(かのじょ)は微笑(ほほえ)んだ。彼女(かのじょ)はみんなに個々(ここ)のステッカータグを渡(わた)し、みんなはスターク・オリバー・ゴメスとアリアナに追(お)いつこうと歩(ある)き始(はじ)めた。
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入口(いりぐち)から少(すこ)し離(はな)れたところで、アリアナはスターク・オリバー・ゴメスを引(ひ)きずっていたのを止(と)め、彼(かれ)の腕(うで)を荒(あら)っぽく離(はな)した。彼女(かのじょ)は本気(ほんき)で怒(おこ)っていた。
「うわっ! 一体(いったい)何(なに)があったんだよ?」 スターク・オリバー・ゴメスは眉(まゆ)をひそめ、手(て)の一方(いっぽう)を腰(こし)に当(あ)てて尋(たず)ねた。彼女(かのじょ)はそれも可愛(かわい)いと思(おも)ったけど、今(いま)はそんなこと考(かんが)えてる場合(ばあい)じゃなかった。
「マジでそう聞(き)く? 私(わたし)があなたに聞(き)きたいわ、ミスター・ゴメス?」 アリアナが言(い)い返(かえ)した。二人(ふたり)は人通(ひとどお)りの多(おお)いホールにいたけど、みんな自分(じぶん)のことしか考(かんが)えていないようだった。
「わかんないんだ、何(なに)か悪(わる)いことした?」 彼(かれ)は尋(たず)ねた。
「やば、何(なに)が悪(わる)かったか分(わ)からないの? 彼女(かのじょ)はあなたにちょっかい出(だ)してたのに、止(と)めるどころか、もっとやらせてたじゃない」 彼女(かのじょ)はまくし立てた。
「でもなんでだよ? 彼女(かのじょ)がしてたことで何(なに)がダメなんだ? 俺(おれ)は独身(どくしん)だろ? それに、あれはただの冗談(じょうだん)だったんだから、なんでそんな真剣(しんけん)に受(う)け止(と)めてるんだ?」 彼(かれ)もそう尋(たず)ねた。
他(ほか)のみんなは二人(ふたり)に近(ちか)づき、少し離(はな)れたところに立(た)っていた。燃(も)え盛(さか)る炎(ほのお)に巻(ま)き込(こ)まれたい人(ひと)はいなかったんだ。
「マジで? あなた独身(どくしん)だからって、娘(むすめ)の前(まえ)で女(おんな)の人(ひと)とイチャイチャしてもいいってこと? レナのことだって忘(わす)れちゃったの? あれは本当(ほんとう)に必要(ひつよう)だった? 正(ただ)しかった? 私(わたし)だって過去(かこ)7年間(ねんかん)はずっと独身(どくしん)だったけど、誰(だれ)にも越(こ)えちゃいけない一線(いっせん)は越(こ)えさせなかったわ!」 彼女(かのじょ)はまくし立てた。
「ああ、なるほど…あなたは何(なに)もさせなかったんだ、いいね! でも、それと何(なに)の関係(かんけい)があるんだ? つまり、なんで人(ひと)にちょっかい出(だ)させてあげちゃいけないんだ?」 スターク・オリバー・ゴメスは、彼女(かのじょ)の口(くち)からある言葉(ことば)を引(ひ)き出(だ)そうと、またも尋(たず)ねた。
アリアナはため息(いき)をついた。「もう、いい? 分(わ)からないわ、わかった?」 彼女(かのじょ)はそう言い返(かえ)し、その場(ば)を去(さ)った。
「何(なに)やってんだ、スターク・オリバー・ゴメス? 彼女(かのじょ)を怒(おこ)らせてるぞ」 サミーが近(ちか)づいてきて言(い)った。
「分(わ)かってるよ。彼女(かのじょ)にそう言(い)ってほしいだけなんだ。俺(おれ)のこと愛(あい)してるって。そしてまた一緒(いっしょ)になろうって」 スターク・オリバー・ゴメスは尋(たず)ねた。
「彼女(かのじょ)にとって、そんな簡単(かんたん)じゃないんだ。彼女(かのじょ)の立場(たちば)になって考(かんが)えてみなよ」 サミーが答(こた)えた。
「待(ま)って…じゃあ、今(いま)はお前(まえ)は彼女(かのじょ)を応援(おうえん)してるってこと? やばい、サミー!」 スターク・オリバー・ゴメスは弱音(よわね)を吐(は)いた。
「いや! いや! 彼女(かのじょ)を応援(おうえん)してるわけじゃないよ。ただ、彼女(かのじょ)に優(やさ)しく接(せっ)してやれって言(い)ってるだけなんだ。彼女(かのじょ)を追(お)いかけて、謝(あやま)ったらどうだ?」 サミーは提案(ていあん)した。
「分(わ)かったよ。まあ、この7年間(ねんかん)、他(ほか)に何(なに)もしてないけどな」 彼(かれ)はつぶやき、彼女(かのじょ)に会(あ)うために走(はし)り去(さ)った。
「俺(おれ)たちも、追(お)いかけようか?」 サミーが言(い)った。
「んー…いや、このバケーションは、みんなのためでもあるんだから、楽(たの)しむことだけに集中(しゅうちゅう)して、二(ふた)人(り)の問題(もんだい)は二(ふた)人(り)で解決(かいけつ)させたら?」 レナ姫が提案(ていあん)した。
「え? 私(わたし)たちが両親(りょうしん)を仲直(なかなお)りさせたいって言(い)ってたのに?」 ロージーは訝(いぶか)しげにそう尋(たず)ねた。
「そうだよ、おばさん。だからこそ、今(いま)は二人(ふたり)から離(はな)れて、手伝(てつだ)ってるんでしょ? ほら、ママとパパは、自分(じぶん)たちの問題(もんだい)を解決(かいけつ)するために、二人(ふたり)だけの時間(じかん)が必要(ひつよう)なの。邪魔(じゃま)するよりは、そっとしておくのが一番(いちばん)だよ」 レナ姫は賢(かしこ)く答(こた)えた。
「なるほど…で、具体(ぐたい)的(てき)にはどんなプラン?」 ロージーが尋(たず)ねた。
「うん、オリバーとあんたは、いつも俺(おれ)たちに秘密(ひみつ)にしてるよな」 サミーがつぶやいた。
「それは、秘密(ひみつ)を守(まも)る方法(ほうほう)を知(し)らないからよ、サムおじさん」 レナ姫がそう答(こた)えると、女性陣(じょせいじん)はクスクス笑(わら)った。
「え? 誰(だれ)がそんなこと言(い)ったんだ?」 サミーはそう言(い)、不満(ふまん)げに顔(かお)をしかめた。
「あら! 本当(ほんとう)よ、サム」 ロージーが賛成(さんせい)すると、サミーは落胆(らくたん)した表情(ひょうじょう)で彼女(かのじょ)を見(み)た。「そんな顔(かお)しないで。アリアナがあんな顔(かお)をしたら、すぐペラペラしゃべるってことは、二人(ふたり)とも分(わ)かってるでしょ」 彼女(かのじょ)はそう言(い)った。
「分(わ)かったよ。たぶん、アリアナの前(まえ)では秘密(ひみつ)を守(まも)れないのかもしれないけど、それなら、二人(ふたり)はロージーに、どんなプランか教(おし)えてあげたらいいんじゃない?」 サミーが尋(たず)ねた。
「だって…ロージーおばさんは、あなたの婚約者(こんやくしゃ)でしょ? あなたから秘密(ひみつ)にされるのは、ロージーも嫌(いや)だって思(おも)うかもしれないし。それに、ママの味方(みかた)じゃないと、ママは思(おも)うかもしれないから、ママにバラして、俺(おれ)たちの計画(けいかく)を台無(だいなし)しにするかもしれないでしょ?」 レナ姫はそう説明(せつめい)した。
「なるほど、そういうことか」 サミーはつぶやき、ロージーに向(む)き直(なお)った。「お前(まえ)、彼女(かのじょ)が子供(こども)だとは思(おも)ってないだろ? ロボットだと思うよ」 彼(かれ)はそう言(い)、みんなは笑(わら)った。
「ボスが、娘(むすめ)をロボットって呼(よ)んでるのを聞(き)いたら、喜(よろこ)ばないだろうから、謝(あやま)った方(ほう)がいいよ」 レナはにやにやしながら言(い)った。
「え?」 サミーは弱音よわね)を吐(は)き、うめき声(ごえ)を上(あ)げた。「彼女(かのじょ)に脅(おど)されてるんだ、ロージー」
「そーね。言(い)う通(とお)りにしなさいよ。私(わたし)、貧(まず)しい男(おとこ)と結婚(けっこん)したくないんだから」 ロージーは冗談(じょうだん)を言(い)い、みんなは大爆笑(だいばくしょう)した。
自分(じぶん)たちが千(せん)人(にん)もの人(ひと)の中(なか)に立(た)っていることさえ忘(わす)れてしまったみたい。でも、これがバケーションってものだよね? 楽(たの)しくて、ストレスフリーで、幸(しあわ)せになる。
続(つづ)く!!