第55章
「こっち来てよ」
「ううん、自分でやるから。すぐだから」
エドワード・ブッシュはナターシャ・クインのことを見つめて、手にタオルを持ったまま、何も言わずに動かない。ただじーっと見てる。
「はいはい、そっち行く」ナターシャ・クインはエドワード・ブッシュに見られるのはもう無理!って感じで、彼のそばに座って顔を出した。
優しく髪を拭くその手。ナターシャ・クインは、この時間がすごく素敵だって思った。
「もう乾いたよ。十分」ナターシャ・クインは、エドワード・ブッシュはずっとやってくれてる気がした。
「髪乾かさないと、エアコンで風邪ひくよ」
「大丈夫だって。エドワード、マジ頑固者だね」
「俺が頑固だって思われるようになったんだから、もうダメかも」
「いやいや!エドワード、めっちゃいいよ!」
エドワード・ブッシュはナターシャ・クインの髪が完全に乾くまで、拭いてくれた。そして、彼女の前で、真剣な顔をした。
「ナターシャ、俺はさ、ほとんどの場合、押し付けがましくて、傲慢なんだ。俺の言うことちゃんと聞いて、反論とかしないでほしい。お前の気持ちとか考えないで言っちゃうような奴なんだ。だから、お前は俺に合わせるように、すぐに対応してくれ」
「ううん、エドワード、私は今のエドワードが好きだよ」
ナターシャ・クインは、風邪をひかせないために髪を拭いてくれるのが、エドワード・ブッシュの優しさだって分かってる。弟の前で恥ずかしい思いをさせないように、こっそりお金をくれたりもしたし。
全部お前のためにやってるんだ、ってこと、お前もちゃんと分かってるだろ?
日曜日に、二つの家族で夕食を食べる予定だった。
ナターシャ・クインはここ数日、全然眠れなくて、両親のこと考えると頭痛がした。もしお母さんが何かやらかしたら、その場どうなるんだろ?
朝早くから、彼女は家の前に待ってた。「」
やっと両親が現れた。彼女は挨拶をした。
「来たね。入って」
ナターシャの母、メイシーを見たナターシャの母は、あの時のことを思い出して、心の中でモヤモヤしてた。結婚のこと、私には言ってなかったし。
ナターシャ・クインは、母の真剣な顔を見て、不安が募った。
「見てよ、お母さん。笑ってよ」
「嬉しいの?私たちに何も言わずに結婚したくせに」
「ごめん。こんなに人がいるんだから、もっといい態度で」
エドワード・ブッシュの両親は優しくて思いやりがある。エドワード・ブッシュの両親に同情しちゃう。
すぐ連絡するって、マジで便利だわ。
ナターシャ・クインは怒りがこみ上げてきた。
「チェン家の人たちのこと、少しは尊敬しなさいよ!半分くらい丁寧でもいいのに」
「私たちに何も言わずにこんな状況にさせといて、どんなに恥ずかしいか分かってるの?」
「正直に言ってるだけ。言わないで後で知る方がもっと恥ずかしいし。それに、もう全部終わったことじゃん」
その時、ナターシャ・クインの携帯が鳴った。エドワード・ブッシュのだ。
「もう両親迎えに行った?レストランで待ってるよ」
「正確に言うと、もう着いてる。すぐ行くね」
ナターシャ・クインは、エドワード・ブッシュが予約したレストランでの食事について、何も言ってなかった。クイン家の人たちが変に心配しないように、高くない普通のレストランを予約したんだ。
レストランに入ると、ペニー・ブッシュが優しい笑顔で迎えてくれた。
「ハーイ!こんにちは、ペニー・ブッシュです。一緒に入りましょう、ご案内します」
メイシー・クインはペニー・ブッシュのことを見てたけど、何も言わない。
ペニー・ブッシュはただニコニコしてるだけ。
ナターシャ・クインは、母の手を掴んで、優しく服を引っ張って、何か言ってほしいってアピールした。
ドアを開けた途端、エドワード・ブッシュの両親は興奮して立ち上がった。今日は、ナターシャ・クインの両親に、息子のことを悪く思われないように、控えめに振る舞ってる。
「遠いところから大変でしたね。早く座って」
メイシー・クインはエドワード・ブッシュの両親を見て、頷いた。
母に近づき、ナターシャ・クインは小声で「笑って」って言った。
ナターシャ・クインは恥ずかしかったけど、母や父にどう話せばいいか分からなかった。
ナターシャの母は周りを見渡すと、車椅子に座っているエドワード・ブッシュに気づいた。
エドワード・ブッシュはナターシャの母に気づき、「おじさん、おばさん、こんにちは」って言った。
ナターシャ・クインの両親はエドワード・ブッシュに会ったことがなくて、興味なさそうだった。
「こんにちは」ナターシャの父はそう言って座った。
色々あったけど、表面上はまあまあ穏やか。
ナターシャ・クインは椅子に座る時、ドキドキしたけど、試験の時よりは落ち着いてた。
エドワード・ブッシュが隣に座ってるのを見て、ナターシャ・クインの心拍数は落ち着いた。
彼がいれば、心の中に拠り所があるみたいで、一人じゃないって感じがした。