第9章
いきなり、電話越しで口撃されたんだよね。なんで電話でこんな嫌がらせされなきゃいけないのか、さっぱりわかんなかったから、質問してみた。「番号、間違ってない?」って。眉間にシワ寄せてたら、いきなりの中傷で、マジで気分悪くなった。
「番号間違えた? 私がナターシャ・クインを怒ってるの! 学校じゃあ、そんなにイライラする子だとは思わなかったけど。今ならわかるわ、あんたってマジでビッチよね。人の彼氏を奪っただけじゃなくって、シアの悪口まで言ってたんでしょ!」 電話の向こうの女の子は激怒してた。スマホから飛び出してきて、首絞めようとしてるみたいだった。
相手はシア・ランダーだった。マキシン経由で電話番号をゲットしたらしい。やっとナターシャの連絡先を手に入れて、スマホにメッセージを連打してきたんだって。すぐに電話もかけてきたけど、その時ナターシャのスマホ、電池切れで、あいつらが送ってきた怒号とか着信とか、全然届いてなかったんだよね。
ナターシャ・クインはよくわかってた。マキシンは、マジで諦めてないんだって。裏で人の悪口ばっかり言って、嘘ばっかり広めて、みんなに嫌われようとしてる。
「そんなこと、やったことないし、別に怖くないし。」 ナターシャ・クインは、個人的な攻撃してくるやつらと話すのはめんどくさかった。結局のところ、みんなが冷静に真実の説明を聞けるわけじゃないし、そういうやつらに時間使うの、無駄じゃん? ってことで、その言葉を言い終わると同時に、ナターシャ・クインは相手の罵倒には目もくれず、電話を切って、シアをブロックリストに追加した。
せっかくの良い気分が、電話で台無しになった。美味しいケーキも、全然食欲わかないし。ナゾだった。
なんで、あんなに仲良かったはずのマキシンが、あんな風になっちゃったんだろ? 喧嘩しただけじゃなくって、わざと人の前で自分のイメージを悪くしようとしてるし。親友に裏切られたって考えると、ちょっと、ムカムカする。
「どうしたんだ?」 風呂から上がってきたばっかりのエドワードは、なんか不機嫌そうだった。さっきお風呂入る前は、あんなに楽しそうだったのに。一体なにがあったんだ?
旦那に聞かれて、今まで我慢してたものが全部爆発したみたいで、めっちゃ辛くなっちゃった。鼻の奥がツーンとしてきて、もう泣きそう。
「ちょっと、気分悪いの。親友に裏切られたみたいで。」 涙は出てないけど、目に涙が溜まってて、今にも落ちそうだった。
「何か解決できないことあったら、俺に言ってくれ。助けてやるから。」 男って、女心のことはよくわかんないけど、彼女が何か困ってて、俺が必要だって言ってくれれば、すぐに駆けつけて守ってあげられるってことはわかってた。
旦那の言葉を聞いて、心臓がドキドキし始めて、気分も落ち着いてきた。
彼の優しさのおかげで、気分もだいぶ良くなって、一緒にケーキ食べ終わって、部屋に戻って寝ることにした。
でも、彼はまだ寝なかった。サムに、奥さんがその日どこに行ったのか聞いたんだ。彼女にパートの仕事とかしてほしくないのは山々だけど、ずっとあんな感じでいたら、奥さんも辛いだろうってことはわかってた。だったら、彼女の好きなようにさせてあげた方がいい。
「ナターシャさんは、ヘンドリックス家が経営してる高級ブランドショップで働いてるみたいですよ。」 サムは彼女の最近の行動を彼に教えて、心の中で彼女の強さに感心した。だって、彼は彼女にパートの仕事とかしてほしくないって、はっきり言ったのに。それでも、彼女は彼に内緒でパートの仕事を見つけて、しかも、物怖じしない性格なんだから。
彼はその報告を聞いて、特に何も言わなかった。車椅子を押して、自分の部屋に入っていった。
朝起きたら、エドワードはすでに外出していて、気分も完全に回復。気合い入れて頑張ろう! あの日受けた酷い電話での嫌がらせとか、親友に裏切られたこととか、もう忘れちゃったみたい。
ナターシャが高級ブランドショップで働いてるって知ったマキシンは、あの手この手で嫌がらせをしてきた。幸い、ナターシャは前もって言い訳してマキシンを避けてたんだけど、その日、お店の従業員が休みで、ナターシャも言い訳できなくなって、渋々対応することに。心ではめっちゃ嫌だったけど、もう仕方ない。
「ナターシャ、今すぐ辞めた方がいいわよ。ここで何か壊したら、弁償できないでしょ。」 マキシンの本性が完全に露わになってて、前とは全然違った。
ナターシャは、マキシンみたいなやつにいちいち腹立てるのもめんどくさい。結局、この高級ショップの仕事は、楽だし、給料もいいし。たまにマキシンみたいなやつに会うことさえなければ、最高。だから、ナターシャは辞める気なんてなかった。「もし何も買わないんだったら、他のお客様の対応をします。」 ナターシャはマキシンと喧嘩したくなくて、店員としての態度を崩さなかった。
「ここで高いもの買ったら、あなたに嫉妬されちゃうかもしれないからね。だって、今の私はマスター・ジェイクの彼女だし、あなたの何倍も身分が高いんだから。」 マキシンはすごい自信満々だった。
あの時、まだジェイクの彼女じゃなかったけど、何一つ不自由なく暮らしてた。
それに、マキシンは、ジェイクの名前をナターシャの前で出すと、ナターシャの心に傷ができて、ナターシャが辛そうな顔をするのを見て喜ぶって思ってた。
ナターシャはもちろん、マキシンがなんでジェイクの名前をちょくちょく出すのか知ってた。ただ、ナターシャを刺激するためだけじゃん?
ナターシャは、ジェイクと喧嘩した時に、もう二度とよりを戻すことはないってハッキリしてた。それに、今はエドワードの奥さんだし、他の男のことなんか考えられるわけがない。ナターシャは、もうこれ以上話したくなかった。
マキシンは、そんなに長い間、買う気配ないし、ナターシャは他の客の対応を始めた。それは、まさに正しい選択だった。
ナターシャがいなくなったのを見て、マキシンはナターシャに新しいバッグを取ってくるように頼んだ。それから、ナターシャをわざと困らせる方法を色々考えてた。ナターシャがバッグを取りに行った時、マキシンは、正装したマスター・ジェイクがお店に入ってくるのを見た。なんであいつがここにいるのかわかんなかったけど、もしジェイクとナターシャがヨリを戻したら、今まで自分がやってきたことは全部無駄になるってこと? そこで、マキシンはまた何か考えた。
「このバッグはオーストラリア製の手作りで、国内には5つしかないんです。」 ナターシャは、お店のルール通りにバッグの説明をした。マキシンはバッグをじっと見て、手を伸ばした。それで、ナターシャはバッグを渡した。当然、バッグはマキシンの手に届くはずだったけど、ナターシャには、マキシンがどんな風の吹き回しでわざとバッグを落としたのか、わからなかった。そのバッグが床に落ちた。
「あら、どうしてこの貴重なバッグが床に…!」 そう言いながら、床からバッグを拾い上げて、すごく困った顔をした。ナターシャは、マキシンがアホみたいだって思って、なんでバッグをちゃんと持てなかったのか聞こうとしたけど、マキシンが口を開いた。