第32章 ウェディングスタジオ
名前を聞いた時、トリクシーはフランクの顔にちょっと変な顔つきが見えたんだよね。ほんの一瞬だったけど、トリクシーはちゃんと気づいちゃった。
フランクは眉をひそめた。「なんで急にそんなこと聞いたの?」
「昨日、色々調べてたら、たまたま見つけちゃったんだよね。」トリクシーはうっかり言っちゃった。ま、この言い訳じゃ、ごまかしきれないかもしれないし、怪しまれる可能性もあるけど、幸いフランクは深くは追及してこなかった。
「ウェディングフォトのスタジオなんだけど、写真のスタイルがちょっと特殊でさ。一般の人には…受け入れられないかもしれないね。」
フランクの言葉は、トリクシーの頭にガツンときた。
まさか、そんなことだとは思わなかった。
そのウェブサイトは、ウェディングフォトのスタジオだったんだ!
つまり、彼と他の女の人たちが、あんなに気持ち悪いウェディングフォトを撮ってたってこと?!
突然、トリクシーは立ち上がってトイレに駆け込んだ。
さっき食べたものは全部吐き出してしまった。トリクシーは、洗面台で震える手で鏡の中のやつれた自分を見つめた。
今すぐダリルのところに戻って、問い詰めたい。裏切ったのか、結婚を裏切ったのか、浮気したのかって…
でもすぐに、トリクシーは思いとどまった。
ダリルより先に焦っちゃダメだ。少なくとも、写真に写ってるのがダリルだってことを、まず確認しなくちゃ。もし大きな誤解だったら、二人の関係が完全に壊れちゃうかもしれないし…
もし本当に離婚することになったら、キンスリーはどうなるんだろう?
色々考えた末、トリクシーは落ち着いた。顔を洗って、薄化粧もせずに、やっと落ち着いてトイレから出た。
「大丈夫?具合悪いの?」
やっと出てきたトリクシーに、フランクはすぐに駆け寄ってきて、心配そうな顔をした。
トリクシーは首を振って、大丈夫、食べすぎただけかもしれないって言った。
フランクは明らかに信じてない様子だったけど、仕方ないよね。まだ、彼女の個人的なことに口出しできるほど、親しい関係じゃないし。
計画を変えて、もう夜の9時過ぎ。
いつもなら、この時間にはダリルが迎えに来てくれるか、キンスリーかトリクシーに電話をかけてきて、トリクシーがキンスリーを連れて帰る準備ができるまで待ってるはずなんだよね。でも、ダリルはトリクシーに電話してこなかった。
トリクシーの心は冷たくなった。
ダリルは今まで、こんなことしたことなかった。いつも忙しい時でも、トリクシーに無事を知らせるために電話してくれたのに。でも今回は、まるで空気みたいに、トリクシーは彼と連絡が取れなかった。
家に帰ると、すぐにキンスリーのために何か料理を作った。義理の母に、しばらくキンスリーを見ててもらうことにした。
やっぱりダリルのことは信じられない。今まで何があったとしても、彼はまだ夫だし。こんなに連絡が取れないのは、心配しないって言う方が嘘だ。
エリンにもう一度電話をかけたけど、まだダリルをかばってて、今日は会社に来てないし、連絡も取れないって言うんだよね。
トリクシーは、ダリルに詳しく説明してもらう必要があった。そこで、エリンに直接話をして、解雇すると脅してみた。
そう言ったら、エリンはすぐにパニックになって、色々矛盾したことを言い始めたんだけど、最終的にダリルの居場所をトリクシーに教えた。
バンケットクラブ。
このクラブの名前を初めて聞いたのは、ジェッサの口からだった。リックが愛人を探しているのを見つけた後、トリクシーに愚痴をこぼした時に、たまたま口にしたんだよね。
もう考えられない。絶対にこの場所に行って、彼が他の女の人と寝てるところを捕まえてやる。
クラブの正確な場所は、オンライン地図で調べて、トリクシーはタクシーで直接向かった。
やっとその場所に到着した時、トリクシーはお金を払って、急いで車から降りた。お釣りをもらうことさえ忘れて。
クラブのドアの前を2歩も歩かないうちに、トリクシーはハドソン夫人と出会った。
奥さんの本名はアーリー・フリン。ご主人のハドソンさんは、ダリルと同じような仲間らしくて、トリクシーも彼女のことを知ってた。
ハドソンさんは奥さんより若くて、30代前半くらい。アーリー・フリンは40歳くらい。ちょっと年上だけど、まだまだ魅力はあるんだよね。周りのボスたちは、ムーアさんと結婚できたんだから、奥さんは本当に幸せだって冗談を言ってる。
トリクシーは、ハドソンさんはダリルみたいに、こういうクラブにはあまり来ないはずなのに、なんでここにいるんだろう?ダリルはハドソンさんと一緒なのか?
トリクシーは考えを脇に置いて、アーリーに挨拶して、なんでここにいるのか尋ねてみた。するとアーリーは、嫉妬を隠せない様子だった。
「結局、私はもう年を取りすぎて、彼をコントロールできないわ!今日は一日中家に帰ってこないし、電話にも出ないのよ。色々聞いて回ったけど、どこにいるのか誰も知らないし。最終的に、ダリルがここにいるって…もう耐えられないわ!本当に素敵な男性だわ!リックの古い女たらしと一緒だと思うわ!」アーリーはどんどん興奮してきたけど、トリクシーは止める気にもなれなかった。
ダリルの携帯は電源が切れてるんじゃなくて、ニック・ハドソンの電話には出られるってこと?!
トリクシーはちょっと混乱した。
自分の電話番号が、他人より重要じゃないってことある?
「ところで、ブレイデン夫人、なんでここにいるの?」アーリーは泣きながらトリクシーに尋ねた。トリクシーは気まずそうに微笑んで、ダリルが迎えに来てって電話してきたって言った。
トリクシーは、浮気してる夫のイメージと評判を保ちたか��たんだよね。夫が浮気してる現場を見に来たなんて、言えるわけがない。
「あなたの家はまだ頼りになるわね。私は何年も家族を気遣ってきたのに。彼はあなたと娘さんのことを愛してる。本当に羨ましいわ。」アーリーは言った。
アーリーの言葉は、トリクシーの心にナイフを突き刺すようだった。
いつも秘密を抱えてるって、こんなに辛いことなんだって、初めて実感した。みんなが話題にするたびに、笑顔で隠すしかないんだもん。
「ハドソンさんもあなたにとても優しいわ。あまり考えすぎないで。彼らのビジネス上の付き合いは避けられないでしょうし。ある程度は…仕方ないわ。」
アーリーを慰めるためにも、自分を慰めるためにも、そう言ったんだよね。最終手段は、現実と向き合わないための言い訳にすぎない。ジェッサが言ってたように、男は誰でも浮気するものなんだから。
その後、トリクシーはアーリーと一緒にクラブに入って、ダリルを探しながら歩いた。
クラブの中ではみんな踊っていて、うるさい音楽がトリクシーの耳を叩いた。ダリルと一緒に何度も出入りしたことがあるけど、やっぱり慣れないんだよね。
アーリーに付き添われながら、クラブ中のすべてのブースを探したけど、まだダリルは見つからなかった。
トリクシーはもう一度ダリルに電話をかけたけど、やっぱり電源は切れたまま。トリクシーは少し落ち込んだ。
テーブルの上に立ってポールダンスしてる若い女の子を見て、トリクシーは力が抜けた。頭の中はダリルのことでいっぱいだったし、そういう女の子たちとベッドにいるダリルの姿がちらついて、不安と落ち着かなさで、頭が爆発しそうだった。
アーリーに話す時間もなくて、トイレの個室に駆け込んで、ドアを閉めて、便器に座って、頭を抱えた。
「ボス、動かないで、隣に誰かいる…」
突然、隣の個室からうめき声が聞こえてきて、トリクシーはすぐに我に返った。
誰かいるの?
考えもせずに、トリクシーは立ち上がって、出ようとした。ちょうど立ち上がった時、携帯電話を落としてしまった。
慌てて拾おうと屈んだ瞬間、隣の個室の床に、男ものの革靴がちらっと見えたんだ。
その靴は、トリクシーがダリルのために買ったものと、そっくりだった。