第76章 - 同定の理由
夫と娘が出かけた後、トリクシーは家を片付け始めたんだ。
最近さ、トリクシーはDNA鑑定とかで忙しくて、ナタリーが仕事から逃がしてくれたんだよね。マジで、全然家のこととかできなかったんだ。
ソファカバーとか、各部屋のベッドスプレッドを引っ張り出して、洗濯機にぶち込んだんだ。んで、また家を掃除機かけて、ちょっとだけモップがけした。
300平米の部屋をトリクシーが片付けたら、まじ疲れた。
全部片付いて、時計見たら、もう夜の10時なんだよね。ダリルとキンスリー、まだ帰ってこないし。
トリクシーは、リビングに飾ってある時計をもう一回チラッと見て、おばあちゃんが孫に会いたがってるから、ちょっとくらい遅くなっても大丈夫かな、って思った。
服に着替えようとしたら、携帯が急に鳴ったんだ。
ダリルからだった。
トリクシーは電話に出て、「もしもし」って2回言ったんだけど、誰も出ないんだよね。
眉間にシワ寄せて、不思議に思って携帯見たら、繋がってるんだ。めっちゃ疑問に思ってたら、突然電話の向こうから声が聞こえてきたんだ。
「ちょっと聞きたいんだけどさ、この前話した時、すごく急いでたじゃない?なんであんな感じだったの?誰だったの?」
義理の母の声を聞いて、トリクシーは眉をひそめ、洗濯物を洗っていた手がピタッと止まった。彼女は電話の向こう側の声を聞き続けたんだ。
「あー、お母さん、もう聞かないで。もう終わったことだし、色々聞いても意味ないでしょ?」
「あたしはあんたのお母さんなんだから、最近どうしてるかくらい知ってるでしょ?本当のこと言いなさいよ、結婚してるのに他に子供いるんじゃないの?」
トリクシーの目は、一瞬にして見開かれた。この言葉はまるで強烈な一撃みたいで、トリクシーは半日くらいポカーンとしてた。
DNA鑑定…嘘なの?
ダリル、他に子供いるの?
この2つの質問には答えはなかったんだけど、トリクシーは全身震えが止まらなかったんだ。
まさか、夫が義理の母と共謀してDNA鑑定を偽造したとか、そんなことある?ありえないでしょ。
つまり、電話で話してたのは、義理の母と夫だったんだ。
トリクシーは、なんで電話してるのか分かんなかったけど、聞こえてくる言葉全部が心に刺さるんだ。
あそこに行って、2人に向かって問い詰めて、何隠してるんだって聞きたい。トリクシーが知っちゃいけないこと、何があるの?
この考えが頭に浮かんだ瞬間、トリクシーはそれを抑えたんだ。落ち着かなきゃ。今までも、ダリルと義理の母は、わかってくれなかったかもしれないし。それに、この電話も不可解だし、変な行動はできない。
トリクシーは、電話での会話を聞き続けたんだけど、トリクシーの手は震えが止まらず、手のひらに深い跡がついてた。
「何言ってんの、お母さん?俺の心にはトリクシーしかいないって知ってるでしょ。他の女と子供なんて、いるわけないじゃん」
「前に見せてくれたDNA鑑定は、一体なんなの?」
「前にさ、女が子供連れてきて、その子が俺のだって言ってきたんだよ。俺は全然知らないのにさ。後で警察に相談したら、DNA鑑定を勧められたんだ。それで、子供と鑑定したんだけど、血縁関係なかったんだよね。警察がその女と子供を連れて行ったよ」
「隠し子いないなら、なんでトリクシーのことそんなに怖がってるの?」
ダリルは、お母さんの質問にホッとしたんだ。
「たださ、トリクシーがどう思うか心配なんだよ。あいつ、仕事でめちゃくちゃプレッシャー感じてるし、俺が浮気してるってずっと思ってたからさ。最近、やっと良くなってきたんだよね。これのせいで、あいつのメンタルにまた悪影響与えたくないんだ。あの会社でさ、エディソンがDNA鑑定書が捨てられてるところ見たって言ってたからさ。あいつ、色々考えすぎちゃうから、キンスリーを連れてDNA鑑定に行くこともできなくて、それで、お母さんにちょっと手伝ってもらったってわけ…」
お母さんと話した後、ダリルの目は、まるで娘の携帯をチラッと見たみたいで、真剣に、お母さんの質問に答え続けたんだ。
一方、電話の向こうのトリクシーは、彼の言葉を聞いて、ボロボロ泣いてたんだ。少なくとも、彼の心はきれいだったんだ。
まさか、キンスリーのDNA鑑定が、こんな風に進んでたなんて、思ってもみなかったよ。
ただ、ダリルが、トリクシーがどう思うか心配だったから…
それを考えると、また涙が止まらなくなっちゃったんだ。
トリクシーが、涙を拭こうとリビングにタオルを探しに行った時、ダリルはもうキンスリーと一緒に帰ってきたんだ。
ドアを開けた瞬間、トリクシーの目と、頬を伝う涙を見て、ダリルはすぐに眉をひそめ、急いでトリクシーのそばに歩み寄り、彼女の涙を拭いて、尋ねたんだ。「どうしたんだ、トリクシー?なんで泣いてるんだ?」
トリクシーは激しく首を振り、彼の腕の中にしなだれかかったんだ。「なんでもないよ。ただ、あなたと結婚できて、本当に幸せだなって思って。」
それから数日、トリクシーのダリルに対する悪い感情は完全に消えたんだ。前みたいに、毎日一緒に朝ごはん食べて、キンスリーと学校行って、仕事終わりには娘と散歩した。
金曜日まで、ジェッサが夕方に突然トリクシーに電話してきて、会わないかって誘ってきたんだ。前回はちょっと嫌な思いをさせたから、食事に誘って、ついでに謝りたいって。トリクシーは行きたくなかったんだけど、ジェッサがどうしてもって言うから、承諾したんだ。
トリクシーは出かける前にダリルに言ったんだ。「ジェッサは、バーで上品で大人しかったよ。」
待ち合わせの場所に着いた時、トリクシーはまだ心の中でつぶやいてたんだ。トリクシーとジェッサは、悲しい時に飲む場所として2人で部屋を予約したはずなのに。なんで急にバーに行きたくなったんだろう?
トリクシーはついに、ジェッサから送られてきた住所にたどり着いて、騒音の中で、ジェッサが一人で隅っこに座ってるのを見つけたんだ。席に座ると、テーブルの上に余分なグラスがいくつかあって、全部ワインが入ってるんだよね。
トリクシーが来る前に、誰かいたみたいだけど、もう帰ったみたい。
「この間はごめんね、トリクシー。あなたがさ、『禁断の愛』について調べてるって知ってるんだけど、クラブは、どんなことがあっても公開しないでくれって頼んでて。そうしないと、罰があるんだって。あなたも知ってるでしょ、私にはまだリトル・ジョンがいるから…」
ジェッサの謝罪の顔を見て、トリクシーは笑顔で首を振り、ジェッサの手を握ったんだ。「別に大したことじゃないよ。気にしないで。ちょっとしたことで、私たちの友情に影響が出たりしたら、それは必要ないことだし。」
「そう、本当に、ちょっとしたことでも、あれこれ言うのは必要なんだよね。あなたのアドバイス通り、ダリルがあなたをどう扱おうとも、子供の親権と会社の資産は、自分の手で持っておかないと。」
「分かってる。」
トリクシーが怒ってないのを見て、ジェッサはほっとして、ため息をついたんだ。ウェイトレスを呼んで、新しいカップを持ってきてもらい、自分のワインを注いだんだ。
「トリクシー、こっちに来て。乾杯しよう。」
カップの中で揺れるカクテルを見て、トリクシーはためらったけど、結局手に取って飲んだんだ。
カクテルだったけど、他のワインとかも混ぜてあるみたいで、なんかスパイシーだった。トリクシーは顔をしかめた。
トリクシーが、水を探してウェイトレスを呼ぼうとしてた時、偶然、ステージで踊ってる男女のグループが目に入ったんだ。
みんなすごくイッちゃってて、まるで悪魔に取り憑かれたみたい。でもトリクシーの視線は、彼らじゃなくて、真ん中のポールでポールダンスしてる女の子に釘付けになったんだ。
ホットなボディ、魅惑的なポーズ、男を誘う後ろ姿。
トリクシーは突然顔を上げて、ステージのライトが彼女の顔を照らしたんだ。
その瞬間、トリクシーはゾッとした。
その女の子は、ナタリーとそっくりだったんだ。