第78章 - テストする意図
ナタリーのルームメイトの言葉で、トリクシーの疑いは深まった。
「最近、ずっと出かけてるの?」
トリクシーが恐る恐る尋ねたけど、ルームメイトはそれ以上話さなくなった。他の二人も同じく黙っていて、チラッと見やった。
トリクシーの推測は当たっていたみたい。昨夜見たものは、もしかしたら本当にナタリーだったのかもしれない。
その時、盲導犬の杖が地面を叩く音が近づいてきて、トリクシーが振り返ると、ナタリーがいた。
どんどん近づいてくるナタリーを見て、道を譲ろうとしたけど、トリクシーはもっと自分勝手になって、ドアを塞いだ。
ナタリーの失明が本当なのか、自分の目で確かめたかったんだ。ナタリーは立ち止まることもなく、まっすぐ進んできた。トリクシーはついに根負けした。ナタリーが転んでしまわないように、道を譲った。
ナタリーが寮に入って盲導犬の杖を置くのを見て、自分の場所を探している。
「ナタリー、あなたの義理の母が何か届けに来たわよ」
ルームメイトの一人がそう言って、ドアの前に立っているトリクシーを見た。
さっき入ってきた時、なぜナタリーが直接呼んでくれなかったのか、疑問に思っているようだった。
「義理の母?」
「ええ、ドアのところに」
ルームメイトの話を聞いて、ナタリーはドアの部屋の方を向いたけど、その目は生気がなかった。
トリクシーはすぐに考え、中に入って、笑顔で言った。「こんにちは、ナタリー。買い物に行った帰り、あなたのために何か買ってきたの。ルームメイトの人たちと一緒に試してみて」
ナタリーはトリクシーの声だと気づき、立ち上がろうと手探りした。トリクシーは急いで近づき、買ってあげたマカロンを手渡した。
「ありがとう、義理の母さん」
彼女はトリクシーの言葉に倣って、トリクシーを義理の母と呼んだ。「ブレイデン夫人」なんて呼んだら、色々勘ぐられちゃうからね。
ナタリーは振り返り、カバンを開ける手つきで、それから三人のルームメイトに食べるように言った。みんな口々に感謝して、それぞれ一つずつ取って、自分の席に急いで戻った。
ナタリーとはあまり関わりたくないみたい。
でも、ナタリーは気にもしない様子で、マカロンを一つ取り出してトリクシーに渡した。トリクシーは食べないって言ったけど、結局食べた。
トリクシーは彼女を見て、「さっき、ルームメイトが、あなたが外出していたって言ってたけど。あなたの目は見えないんだから、フラフラしないで。何かあったら呼んでね、いい?」と尋ねた。
ナタリーは強く頷き、トリクシーは微笑んだ。
「あと数日で試験があるから、図書館を掃除しに行って、試験問題を聞いてきたんだ。昨夜はちょっと遅くに帰ってきて、お風呂にも入れなかった。ルームメイトが持ってきてくれたお湯を使ったの」
彼女は手を伸ばして、まだ耳につけていたイヤホンを外した。
トリクシーは、それがわざと自分に見せたのかどうか分からなかった。三人のルームメイトの一人が、ナタリーがそう言ったのを聞いて、仕方なく微笑んで、ちょっとした手間だったと言った。
トリクシーから見ると、四人にとって、とても調和のとれた寮生活に見えるけど、どこか同じようなものがあった。
この三人のルームメイトは、ナタリーを少し恐れているみたい。
ナタリーに疑われないように、トリクシーはそろそろ行く時だと感じた。
それから、適当な言い訳をして出て行った。
家に帰る途中も、トリクシーはナタリーのことを考えていた。彼女が本当に見えないのか、それとも偽って見ているのか、どうしても判断がつかない。
バスを降りるまで、ダリルがナタリーの目には検査報告があったって言っていたことを突然思い出した。でも、ダリルやナタリーに直接聞いたら、絶対に疑われるだろう。
突然、ある考えが頭の中に湧いてきた。
夕方、ダリルが友人と釣りから帰ってきた。ドアを開けた途端、トリクシーがキッチンで忙しそうにしているのが見え、すでにテーブルには何品か料理が並んでいた。
彼はトリクシーを見て驚き、おかゆを運ぶトリクシーの顔には喜びがあふれていた。
「今日は奥さんが僕のために料理してくれるのかい?」
釣りの道具を全部片付けてから、キッチンに行って手を洗い、箸を取って、焦げたナスを一口食べた。
トリクシーは普段あまり料理をしないけど、たまに作ると美味しいんだよな。
「すごく美味しい!」
ダリルはトリクシーを抱きしめてキスした。トリクシーは彼の子供っぽい行動に笑った。
「夕食を済ませて、キンズリーをママのところから迎えに行ってね」
ダリルはそこで止まり、部屋を見回して、キンズリーがいないことに気づいた。
「キンズリーは今夜はここで食べないの?」
「ママが彼女のために特別な漬け魚を作ってくれたの。迎えに行ったんだけど、一緒には来なかったわ」
娘の食いしん坊のことを考えて、トリクシーは思わず笑ってしまった。
「夕食後に迎えに行こう」
「スミスさんは明日から正式に就任だ。明日はニューヨークに行って引き継ぎをしないと」と、ダリルは食事をしながらトリクシーに言った。
トリクシーはこの名前を聞くと、とても不快に感じた。この名前だけでなく、その人自体も。
「彼女はニューヨークで仕事をするけど、彼女の息子はどうするの?毎日往復?」
エイデンという名前の子供のことを突然思い出し、トリクシーは思わず尋ねた。
「彼女が毎日往復するとは思わないよ。だって、ニューヨークの学校は今の学校ほど良くないだろうから、面倒だよ」
ダリルは食べ物に夢中で、トリクシーにスミスさんとエイデンについてあまり話したくなかったようだ。
トリクシーも理解できた。結局のところ、あの女のせいで、二人の結婚生活に多くの誤解が生まれ、ナタリーの脅迫もあって、誰も彼女に会いたくはないだろう。
話題が終わると、ダリルは何も言わず、二人は沈黙を守った。
聞こえるのは、箸が陶器の皿に触れる音と、食べ物を噛む音だけだった。
「そういえば、今日はナタリーの学校に行って会ってきたの」
トリクシーがナタリーに触れると、ダリルの野菜を挟む動作が明らかに硬直した。
「なぜ突然、彼女に会いに行こうと思ったんだ?」
「彼女は目が深刻で、少しチクチクするって言ってたわ」
「気にしないでくれ。それは彼女の古い問題で、昔から慣れていることだよ」
ダリルはそっけなく答えて、ナタリーの目についてはあまり気にしているようではなかった。
「彼女の目が本当に良くない状態になる前に、どの病院に連れて行ったの?明日、検査に連れて行ってあげようと思うんだけど」
トリクシーは軽い口調で言ったけど、その目はダリルの表情をじっと見つめていた。
彼は少し眉をひそめ、何かをためらっているようだった。
「何?」
トリクシーが尋ねると、彼はすぐに笑顔で首を振った。
「何でもないよ。本当に具合が悪そうなら、明日連れて行くよ。医者のことは知ってるから。そこに登録する必要はないよ」
「分かったわ」
トリクシーはそれ以上何も言わなかった。
ナタリーについて話したのは、ただダリルの反応を見たかっただけなんだ。
ナタリーの目が大丈夫そうだと気づいた瞬間から、疑っていたんだ。
ナタリーが嘘をついて同情を買って生きていたとしたら、何も言うことはない。結局のところ、ダリルの会社が始まったばかりの頃、ネイサンは多くの手助けをしてくれた。でも、もしダリルとナタリーが一緒に彼女に嘘をついていたとしたら、ダリルに残されたほんの少しの信頼も、おそらく失われるだろう。
向かいに座っているダリルを見て、トリクシーは不安になった。ナタリーの目が本当に見えないか、それとも自分が嘘をついていたことになってほしいと願っている。
もしダリルがまた関与していたら、トリクシーは本当に絶望してしまうだろう。