第28章
アイツは、いなくなった。
レヴィも、いなくなっちゃった。
いや、比喩じゃないから。マジでいなくなった。
ロープは切れてて、アイツが座ってた場所はもう冷たかった。俺が確認した時には、もうとっくにいなかったんだ。
アイツの持ち物とか、確認しとけばよかった。マジ、最悪。だから俺はマフィアとか刑事には向いてないんだよ。バカ正直すぎるんだよな。
マジで、もう一回捕まえられたら、タダじゃ済まさない。何度も何度も信頼をズタズタにされるのはもうごめんだ。もうこんなの耐えられない。辛すぎるんだよ。人を信じて、そしたら、ただのクソ野郎だってわかるなんて。
アイツがいなくなってるのを確認して、キャビンに戻った。ショックで感覚が麻痺して、一瞬、現実感がなかった。別に、麻痺を解こうとも思わなかった。現実に向き合いたくなかったし、アイツがどこに行ったのか、何をしてるのか考えたくもなかった。
その時に一番心配しなきゃいけないのは、次の試合のスケジュールだ。次の試合はいつだか知ってるけど、詳しいことはレヴィが教えてくれることになってたんだ。ってことは、誰かがアイツにメール送ったり、電話したりして教えてるってことだよな。
誰か、内側の人間と連絡とらなきゃ。試合のこと考えてたら、なんでレヴィは、俺が困ってる時に、この試合を提案したんだろって思えてきた。この試合にも、なんか裏があるに違いない。足怪我したやつとその兄弟のことだって、もしかしたら計画的なことかもしれないし。ただの運かもしれないけど。
でも、アダムにぶつかって、記憶喪失にしたやつが、俺が怪我させたやつの兄弟で、ドムがアダムを洗脳して俺を傷つけさせたってのは、出来すぎてるよな?
ドムは、チャンスだって思って利用したんだろ。今のところ、俺が知ってるのはそれだけ。残りは全部クエスチョンマークと可能性。計画的だったかどうかはともかく、俺をまたあのバカな試合に参加させることに成功したんだから。
前の事件の後じゃ、俺がまたあのクソ試合に参加することに賭けてたかもしれない。クエンティンの仲間が試合を裏で操ってたりしないといいんだけど。そんなことになったら、マジでヤバいことになるから。
絶対に、試合から生きて出られない。
そう考えたら、レヴィのことでもう一つ疑問がわいてきた。アイツは、最初から冷酷だったのか?俺たちの関係のこととか、全然気にしてなかったのか?この試合に出ることを勧めた時、マジで苦しかったのか?俺の血が流れるかもしれない試合に、俺を参加させるってわかってて、辛かったのか?本当に、俺のこと、少しでも心配してくれたのか?
その答えを知りたいのか、自分でもよくわかんない。ただ、アイツはもう友達じゃないってことと、友達とか、もしかしたら家族とかって言ってるやつらに裏切られることに、慣れていかなきゃならないってことだけはわかってる。俺が墓に入るまで、きっとこんなことの繰り返しなんだろうから。ただ、家族を遠ざけちゃいけないってのはわかってるんだ。でも、深入りしすぎるのは、避けなきゃ。
辛いけど、このクソみたいな状況を乗り越えて、人生の###章の終わりまで行かないと。それが、俺が自分に約束したこと。このクソみたいな状況から抜け出して、普通の、まともな人間として生きていくんだって。家族を作って、ちゃんとした仕事に就いて、もうストリートファイトなんてしない。
絶対に乗り越えてやる。そして、クズどもに邪魔されることなく、乗り越えてやるんだ。
こんなことをずっと考えてたら、いつの間にか、キッチンのカウンターの後ろの椅子に座ってた。フアンさんがキッチンのドアから入ってきて、俺を見てたけど、何も聞いてこなかった。静かにキッチンを動き回って、必要なものを持って、俺のために出て行った。
でも、それは思ってたより長くは続かなかったけど。