第47章
「何を知っているか教えて。じゃないと、助けてあげられないんだから」 ケース は、できるだけ冷静な声で アダム に話しかけた。
アダム の目は、あたしの頭の上の壁に釘付けになっていたけど、反論はしてこなかった。たぶん、少しは状況が分かってきたんだと思う。
「あたしが病院にいた時、あなたが病室から出て行った後、 ドム が現れたんだ」 あたしはクッションをぎゅっと握りしめ、物語の結末がどうなるか分かっていたけれど、無理矢理聞くことにした。
「最初は彼に警戒してたんだけど、まるで一番の親友みたいに振る舞ってきたの。打ち解けない方が難しいくらいだったわ。あたしは迷子になってて、彼はあたしの灯台になりたがったんだ。彼は色々話してくれて、あたしが忘れちゃった記憶を埋めてくれた。お母さん が病気だったけど、あなたが現れるまでは順調に回復してたって」 そう言い出した時、 アダム はやっとあたしから目をそらし、あたしを見た。
その目に、少しの憎しみが見えた。あたしは感情を押し殺し、動揺しないように、弱みを見せないようにと心の中で願った。
「彼は、あたしがあなたの病室に一人で入っていくところを撮ったビデオを見せてきた。それから、あたしがお母さん の上に覆いかぶさっている写真を見せてきたの」 あたしは、良いことをしようとしたことが、こんな恐ろしい話に捻じ曲げられることにぞっとした。 あたしが持っていたビデオと写真は、たぶん あたしが カーラ の病室にお金をこっそり入れた時のものだった。 アダム が、そのお金がどこから来たのか問い詰めたり、拒否したりするだろうから、一人でやらなきゃいけなかったんだから。
自分を弁護して、 ドム が見せた証拠とされるものを説明したい気持ちでいっぱいだったけれど、あたしは黙って アダム の話を聞いていた。彼の目に憎しみが見え、あたしに言及するたびに声が辛そうになるのを聞くたびに、あたしの心は少しずつ砕けていった。あたしは、彼の話が終わるまでに、心が残っているのかどうか不安だった。
「あなたがお母さん の点滴に何かを混ぜて、 ドム に話したって。 ドム をあなたの計画に関与させたかったって。あなたは ドム と子どもの頃からの親友で、当然、彼にも協力して欲しかったんだって。 ドム はそれを断り、そんな考えに嫌悪感を抱いてあなたとの関係を断ったって言ってた。彼はあたしに警告したし、あたしはあなたを止めようとしたって。それから1ヶ月後、疑われないくらいの時間が経った頃、あなたはあたしの命を奪おうとした」
あたしの胃が締め付けられるような気がした。 アダム 自身から聞くのは本当に気分が悪かった。彼が言ったことを全部信じているという事実も嫌だった。
かつて、あたしは愛されていたのに、今ではお母さん を殺した犯人としてレッテルを貼られているんだから。
「全部知ってから、あなたを憎んだ。あなたのことを考えるのも嫌だったし、 ドム の「お話タイム」であなたの名前を聞くだけで血が沸騰した」
あたしは目を閉じ、彼の言葉に涙が止まらなかった。何を自分に言い聞かせても、 アダム の顔をして、 アダム の声で話している。あたしが愛した アダム なのに。
「 ドム が、あなたが彼の友達であることをあなたの家族に知られたくなかったのは、変だと思わなかった?」 あたしの声は少し震え、 アダム が気づかないようにと願った。
「いいや、それはあたしが家族に言わなかっただけだ。あたしは家族と一緒にいるのが好きじゃなかったんだ。彼らはまだあなたを慕っていて、あなたがうちのお母さん を殺したという事実に全く気づいてなかった。彼らはあなたの計画も、あなたの本当の姿も知らなかった。誰と付き合って、どこに行くのかを説明する義務があるとは思わなかったから、何も言わなかったんだ」 アダム は答えた。その返事には、ためらいや、これが間違っているかもしれないとか、彼が間違っているかもしれないという疑いの影もなかった。
彼が自分の言いたいことを言い終えたと感じた時、あたしは何か言おうと口を開けた。でも、何も出てこなかった。何を言えばいいのか分からなかった。
プレストン は悲しそうな笑顔を見せ、あたしは彼の支えから少しの慰めを得ようとした。
「 ドム は幼馴染だったんだ。小さい頃から知ってる。で、あたしはあなたの家族とも親しいんだ」 あたしは話し始めた。今、どう切り出すべきか分からなかった。
「少し前に、 ドム があたしの 兄弟 を殺したってことが分かったんだ。 ドム はあたしを気に入ってたんだよね。 ドム があたしに付きまとってくるのが嫌だって 兄弟 に話したら、 兄弟 ったら、例の如く「何とかした」んだ。具体的に何をしたのかは分からないし、たぶん永遠に分からないだろうけど、とにかく、 ドム が殺人をするほど怒らせたんだ」
あたしが話している間、 アダム はずっと静かに聞いていてくれて、感謝した。この言葉の嘔吐を吐き出す必要があったんだ。そうしないと、全然出てこないだろうから。
「それについて ドム に問い詰めたら、彼はあたしに「理由を理解しろ」って言ってきた。でも、まともな人なら誰も理解できないと思う。あたしは、そのことが分かってから、 ドム との関係を断った」 あたしはそう締めくくった。次の部分は、隠すのが難しいだろうと思ったけど、 アダム が聞きたがっているのは、ここだって分かっていたから。
「 カーラ は、あたしにとってお母さんみたいな存在だったの。あたしを初めてあなたの家に連れて行った時、 カーラ と ジェリー は本当に温かく迎えてくれた。彼らは、あなたのクソみたいな 兄弟 に対して、あたしをかばってくれたんだ」 あたしは プレストン をじっと見て、彼は気まずそうに笑い、「ごめん」と小さく呟いた。
「 カーラ が病気だってことを打ち明けられた時、あたし達は大喧嘩をして、たぶんそれが終わることはなかった。 友達、最近になって ドム の共犯者だと分かったんだけど、その人に、あまり合法じゃないストリートファイトの試合を紹介されたの。あたしはそれに飛び込んで、あなたはそれを気に入らなかった。あなたが見せられた写真とビデオは、あたしがその試合の賞金を カーラ の部屋にこっそり入れているところを撮ったものだったの。誰にも知られないようにやらなきゃいけなかったんだ。 アダム はお金を拒否するって分かってたから。あなたは、あたしが試合に出ることを心配しすぎただろうし。あたし達は経済的な助けが必要だったし、 カーラ がそうじゃなかったら、きっとだめだっただろうから」
自分の話が終わりに近づいていると分かっていたので、少しの間、息を吸った。 カーラ の死を思い出すのはつらかった。あたしは手を首にやり、彼女からもらったペンダントに触れた。
「 カーラ が亡くなってすぐ、あたしは試合をやめた。もう続ける意味がなかったから。でも、あなたのお母さん の葬儀の時、あたしが試合で怪我をさせた男の 兄弟 が現れて、みんなを脅し始めた。あたしが対戦するまで、あたしが愛する人すべてを傷つけると脅してきたんだ。あの車にあなたがひかれるまで、あたしは真剣に受け止めてなかった。あの夜、あなたは牛乳を買いに出かけたけど、二度と帰ってこなかった。代わりに電話が鳴って、 カリ が、あなたが事故に遭ったって教えてくれたの」 頬が濡れているのに気づくまでは、涙が頬を伝っていることにも気づかなかった。
「あの夜、あなたが目を覚ました後、あたしはあなたの病室に入り、あなたの人生から去る決意をした。あなたが、あたしがいたことを知らないまま生きていくように。それは、あたしが今までにした中で一番辛いことだったけど、そうするしかなかった。あなたを守るために、それ以上の方法が思いつかなかった」
「あなたがいない時、あたしはあなたの家族を訪ね続けた。夕食をご一緒することもあれば、子供たちや ジェリー と1、2時間過ごすためだけに車を走らせることもあったわ。それは、あたしがあなたのお母さん と約束したことの一部だったの。彼女が亡くなった後も、あなたの家族のそばにいるって。あなたが晩ご飯に一緒にいるところをあたしに見られるまで、あなたは、あたしが誰なのか、少なくともあたしが存在していることを知っているって、あたしは思わなかった」
あたしは涙を拭い、部屋を静寂に包んだ。
そして、 アダム が最初の質問をした。