第93章
エリヤナの視点
屋敷の中で、ママはフェリシティがどう変わるか、一番ワクワクしてるっぽかった。話し方とか歩き方を変えようとしてるし、話す時の手のジェスチャーも控えてた。
あの日から、フェリシティじゃなくてフェリペって呼んでくれって言い出したのも、ちょっと怪しいんだよね。だって、それより前に、ママとフェリペが屋敷のいろんな場所で真剣な顔して話してるのをよく見かけたから。何について話してたのか、全然分かんなかったんだけど。
いつも立ち聞きしにくい場所を選んで話してたんだよね。ママに、何話してたか知ってる?って聞いたけど、知らないって言われたし。
ママの答えで、ますます興味が湧いちゃった。フェリペが変わる数日前、いつものように読み始めた小説を続けようと思ってベランダに出たら、またの2人を見つけちゃったんだ。
予定を変えて、こっそり庭に忍び込もうとしたんだけど、驚いたことにバレた。フェリペとパパじゃなくて、ママに。
「何してるの、エリヤナ?」高い植物の陰に隠れようとしてたら、急にママが現れたんだもん。
慌てて近くの植物のそばに移動して、何かしてるふり。「えーっと、枯れ葉を取ってるだけ」どもっちゃったけど、バレてないかなって願ったよね。
「ごまかせないわよ。なんでパパとフェリペを覗き見してるの?」ママは信じてなさそう。
演技やめて、ママの方を向いた。
「ちょっと新鮮な空気を吸いに来ただけだよ、ママ。そしたら2人がいたから、つい見ちゃっただけ。2人が可愛くて」信じてくれなさそうだけど、言ってみた。
「エリヤナ、私はあなたのママよ。あなたの体の動きとか、表情とか、全部意味が分かるのよ。」
『また始まった』って思った。だって、ママはみんなそう言うじゃん。ママは一番良く知ってるんだから。
別の言い訳して逃げようかなとも思ったけど、私が何か言う前にママが話し始めた。「ああいう風に親友のこと見つめないで。最近、フェリペのこと、ちょっと違った目で見てるでしょ、エリヤナ。気づかないとでも思った?」もう逃げられない。
確かに、彼のこと見つめずにはいられなかった。誰だってそうだよ。親友が急に髪を切って、服を変えて、歩き方も話し方も男らしくなったら、信じられないし、理由を知りたいけど、聞くのは怖いんだよね。
「どういうこと、ママ?」そう言ったけど、もう逃げられないのは分かってた。
ママは私の皮肉を冗談だとは思わなかったみたい。なんか変な顔で私を見てるし。腕を組んだから、本気だって分かった。冗談とか言ったら、耳が痛くなるまで怒られるかもしれない。
ママの視線が気になってきた。私に何か話してほしいのは明らかだけど、フェリシ…フェリペのこと、どう思ってるのか、まだ確信が持てないんだよね。正直に話すのは難しいし、もうそんな歳じゃないのに、どうしたらいいか分からないんだ。「正直言って、ママ、分からないの」頭を下げるしかなかった。
「じゃあ、知りたくもないってこと?」そう言われて顔を上げた。
言葉が見つからなかったけど、本当は知りたかったんだ。ただ、どうすればいいのか、どんな結果になるのか分からなかっただけ。
「答えが見つからないなら、長い間知ってる人としてじゃなくて、今の彼がどんな男になりたいのか、そういう風に見てごらん。そうすれば、私の質問だけじゃなく、あなたの頭の中にある疑問も、きっと答えが見つかるわよ」ママはそうアドバイスしてくれた。
確かにそうかもしれない。私は彼を、いつものフェリシティ、私のゲイの親友として見てたんだ。彼がなりたがってるものとしては見てなかった。
パパとフェリペがいる方を見た。2人はまだ真剣に話してて、私たちがいることには気づいてないみたいだった。
フェリペをじっと見つめながら、ママのアドバイス通りにしてみた。男の人として、男らしい人として、彼が私にしてくれたことを全部思い出しながら。
あの高い植物の陰から見てると、彼はずっと頷いてた。横顔しか見えなかったけど、顔はすごく鮮明に頭の中にあった。
心臓がドキドキして、脈拍まで感じた。
「もしフェリペがもっと早く決断してたら、こんなことにはなってなかったのにね。きっともう3人か4人の孫がいたわよ」
「ママ!」思わず大声出しちゃった。そんなこと考えてたなんて信じられなくて。
鋭い視線を向けられて、唇を噛んだ。もうやめると思ったけど、そうはならなかった。
「何?事実を言ってるだけよ。もしあなたがルーカスに対する私の意見を聞いてくれてたら、結婚生活はあんなに酷くなかったのに。彼はあなたを傷つけなかったはずだし。クレイジーなダイアンがあなたの結婚生活をめちゃくちゃにすることもなかったし、離婚もなかったし、あなたは落ち込むこともなかったし、お風呂のお湯に浸かって病院に運ばれることもなかったのに…」
「ちょっと待って、ママ、私が落ち込んでたってどうして知ってたの?それに、お風呂の件も…」遮ってしまった。
ルーカスとダイアンのせいで、お風呂の件を知ってたとしても驚かないけど、落ち込んでたことは、ほとんどの人に隠してたから。
「あなたに何が起きてるか、パパと私は全部知ってたのよ。フェリペの助けを借りてね。彼は間接的に知らせてくれてたけど、あなたが落ち込んでた時は、ユージーンおばさんから聞いたのよ。彼女も、あなたの親友を説得して、あなたが立ち直れるように助けてくれたのよ…」ママは、どうやって知ったのか話すうちに、声が詰まってしまった。
「ごめんね、エリヤナ。あなたのことで何も分からなくて、落ち着かなかったの。あの頃、あなたには1人になる時間が必要だって分かってたから、手放すのも難しかった。親友に助けを求めたのは、彼ならいい仲間になれると思ったからよ」
「あの頃はもう終わったよ、ママ。みんなが私を助けてくれて、本当に感謝してる。もう過去のことだよ」
「怒ってないの?」ママは、私が怒ってるって言ったら怖がるみたいに聞いてきた。
「ううん」笑いながら返した。「なんで?」そう言って、ママに笑いかけて、怒ってないって示したんだけど、ママの顔を見たら、一瞬で笑顔が消えちゃった。
何か言いたそう。「何かあったの、ママ?」沈黙してるから、聞いてみた。
「急にルーカスのママのこと思い出したの」少し躊躇しながら答えた。
「あの可哀想な人は、私にすごく親切にしてくれたんだよね。元気にしてる?」そう言うと、ママは視線を外したから、眉をひそめた。
「知りたい?」そう聞かれて、すぐに答えた。
何かすごいニュースを受け取ったみたいだし、嫌なことみたいだった。「ママ、怖がらせないでよ。彼女に何があったの?」我慢できなくなって聞いた。
「彼女、死ぬんだって」囁くように、でも私には大声で聞こえて、叫び声みたいだった。
「まじか」そう言って、口を覆った。誰にも聞かれてないことを願った。
一瞬、何も考えられなくなって、そのニュースを受け止めようとした。ママは、私が知ってる2人の厄介な人たちのことで、連絡してくれなかった理由を全部話し始めた。
ダイアンは、両親の願いで精神病院に入院したんだって。両親は、誰かに危害を加えるんじゃないかって、特に私に。ルーカスのせいで、私をすごく嫌ってたから。
ダイアンがルーカスにどれだけ執着してたか分かった。自分が欲しいものを手に入れるためなら、人を傷つけることなんて躊躇しない。
聞いたニュースの中で、嬉しかったのは、ルーカスが彼のママを、お父さんの影から助け出したこと。結局、奥さんは長い間隠してたことに耐えてたことが分かって、もう手遅れだった。
乳がんだったみたいで、医者ももう治せないって。ルーカスは、お父さんの不動産会社から全部の資産を引き出して、お父さんとは関係のない新しいビジネスを始めることにしたんだって。
彼の行動には、すごく感心した。お母さんは、長い間、あの偏執的な夫のそばで苦しんだんだから、愛と時間を与えられるべきだよ。
医者は、あと2年しか生きられないって言ってたけど、薬を全部やめたいって言ったから、それより短くなるかもしれないって。
「彼女に会いに行きたい」決めた。
「本当に?あなたも…」
「分かってるよ、ママ、でも、彼の為に行くわけじゃない。彼のママに会いに行くの」自信を持って答えた。
「そうしたいなら」そう言ったけど、まだ私を疑ってるみたいだった。