第74章
エリヤナの視点
フェリシティのこと考えたら、寝てたのに目が覚めちゃった。あいつがトイレで支えてくれたんだって確信してたんだよね。夢みたいだったけど、部屋にはあいつの匂いが残ってた。
頭も痛くないし、お腹もムカムカしない。時計見たらもう10時近くだったから、フェリシティはもう帰っちゃったんだろうなって思った。
帰っちゃって、もう二度と来ないとか考えるとマジで辛かった。なんでこんなことで泣いてるのか、自分でもわかんなかったり。
あいつを探そうと階段を駆け下りた。一番下の段に着いたとき、お腹の中に赤ちゃんがいるってことを思い出した。完全に忘れてた。焦ってたけど、落ちたり滑ったりしなくてよかった。誰かに見られる前に、ゆっくり降りたからね。
リビング行ってみたけど、誰もいなかった。あのゲイのこと聞ける召使いもいないし。
次に向かったのはキッチン。もうすぐランチだし、召使いは何か準備してるだろうと思って。半分くらい行ったところで、声が聞こえたんだ。
キッチンにいた。近づくほど声が大きくなって、ある特定の声を聞いたらニヤけちゃった。その笑顔は、近づくにつれてどんどん大きくなった。キッチンには、フェリシティが立ってて、召使いの一人に話しかけてたんだ。
「やっぱり!今日もいるじゃん!」って叫んで、後ろから抱きついた。甘い香水を嗅ぎながら、部屋が静かなことに気づいたんだ。
一瞬で気まずい空気が流れた。現実に戻されて、こんなとこにいたくないって思った。
「フェリシティ様のこと、そんなに寂しかったんですか、エリヤナ様?」って召使いにからかわれた。すぐに抱きしめるのをやめて、私をかばおうともしないゲイから離れた。
「うーん、寂しかったんだよ。親友だもん。ハグするのは普通のことだって。別に悪いことじゃないし」って、気まずさを少しでもごまかそうとした。
フェリシティが何も言わないことに、ちょっとイラッとした。後ろに手を回して、あいつを小突いた。
「痛っ!」ってフェリシティが叫んだ。
「大丈夫、フェリシティ様?」
「どうしたんですか?」召使いはすごく心配してた。あいつが、私が小突いたって言うと思ったんだけど、言わなかった。
「うっかり熱い鍋に触っちゃった」って、まるで本当のことみたいに、鍋のそばにある腕を触ってた。
そのとき、初めてあいつがヘラを持ってるのに気づいた。煮立ってる鍋の中身を混ぜてたんだ。近づいてみたら、それは私の食べ物だった。
それは、ギンタアン・マイスを作ってるところだった。もち米と、甘いトウモロコシの粒を刻んだものに、ココナッツミルクと砂糖を混ぜたやつ。妊娠してから、そういう朝ごはんがお気に入りなんだ。
「そこ置いとけ。ダルダリタが混ぜ続けるから」って、料理人のローリーがフェリシティに言った。
ダルダリタがヘラを取りに行き、フェリシティは横に移動した。
「エリヤナ、色々持ってきたよ。ママが持ってけって言ったんだ。で、何だと思う?焼きたてのチーズケーキだよ!」って、フェリシティは興奮した様子で、テーブルの上の2つのバスケットと、ユージーンおばさんのチーズケーキの箱を2つ指さした。
フェリシティは指さした方へ歩いて行き、チーズケーキの箱を開けた。でも、その甘い匂いを嗅いだ瞬間、なぜか気分が悪くなっちゃったんだ。
それを隠すために頑張った。Baklaを怒らせて、帰らせたくなかったから。
「あ、ありがとう!ユージーンおばさんにも、すごくありがとうって伝えて」って、チーズケーキの箱を見ながら、変な顔で言った。
フェリシティは箱を閉じて、それに対して心の中で感謝した。
「エリヤナ様、もうすぐご飯ができますよ」って、召使いが言った。
「わかった、ありがとう。ダイニングルームにいるね。フェリシティも、持ってきて」って答えたら、すぐキッチンに戻って、他の人に私のリクエストを伝えてた。
こんな遅い時間に朝ごはん。フェリシティも一緒に食べてくれたけど、少ししか食べなかった。屋敷に来る前に朝ごはん食べたから、まだお腹いっぱいだって言ってた。
正直、あいつがいてくれてすごく嬉しかった。色々話してくれて、最近のあいつの事務所の近況報告とか、フェリックスの結婚の準備の話とか、プレッツェルが二人目の子供を妊娠してて、二人がどれだけ大変そうかとか。
でも、一番面白かったのは、クライアントの話。ほとんどが面白くて、話を聞きながらニヤニヤしちゃった。
特に、ジェスチャーとか、クルクル変わる目とか、すごく面白かった。そのうちイライラしてきたんだけど、ノスタルジーを感じてる理由がわからなかったんだ。
あいつから、フロレンティンが最近どうしてるのかも聞いた。フロレンティンと私は、子供のことで、重要じゃない限り会わないことに決めてたんだけど。
二人の間に愛情が芽生えて、問題になるかもしれないって心配だったんだ。でも、いつか子供と会う機会を奪うつもりはないけど、色んな可能性とか、色んなことが起こりうるから、良くない考えだなって感じてたんだ。
正直、二人に関係を持って欲しくない。それは、ある日簡単に壊せるようなものじゃないから。もしあいつが私たちの近くにいたら、私の子供はきっと、フロレンティンが私たちの人生で本当に何者なのか疑問に思うだろう。
考えすぎてるのは認めるけど、ある日、子供に父親のことをすぐに話さなかったことで傷つけられるよりはマシかなって。
「本当に、私って何考えてるんだろ?」って思った。そういう考えに囚われがちで、抜け出すのが難しいんだよね。
「それで、最近どう?妊娠生活はどう?」って、フェリシティが聞いてきた。その言葉で、一気に思考から引き戻されて、深呼吸してから、あいつの好奇心を満たしてあげたんだ。
「うーん、忙しくなったかな。毎日、自分のベイビーに夢中になってる。お腹に赤ちゃんがいるって、特別な感じだよね。毎日が、覚えておきたい大切な瞬間みたい。ただ、朝が大変なの。今朝みたいに、つわりがひどいんだ」って答えた。
「そうだね。今朝、見た時のエリヤナがどんな風だったか、説明できないくらいだったよ。弱々しくて、お医者さんが必要だって思ったよ」って、フェリシティは大げさに言った。
私たちの周りの人は、みんな私が妊娠してるって知ってた。私は、信用できる医者にかかってるって言ったし、精子の提供者が誰なのかは知りたくないって言ったんだ。みんな私の決断を尊重してくれて、それ以来、父親が誰なのかって質問されることはなくなった。
「それにしても、なんでそんなこと決めたの?提供者がブサイクだったらどうするの?足が臭かったり、胸毛が濃かったりしたら?」って言われて、マジで嫌なイメージが頭に浮かんだ。
「男の人に求める条件とか、容姿とか、十分伝えてあるよ」
「本当にそれ、お医者さんがあなたに入れたものなの?」って、あいつに目を向けた。からかってるのはわかってたけど、誰が私のドナーなのか知ってるから、うまくいかないんだよ。
「何言われても、赤ちゃんはもう中にいるし、この大切な瞬間を、赤ちゃんとするのを止めることなんてできないから」
「わかったよ。ただ、可能性とか、あなたの子供がどんな風になるか、考えてるだけだよ」
「そうなんだろうけど、私を困らせようとしてるだけなんだろうなって思ってる」って、私は言った。
「そんなつもりじゃないよ。もっと広い視野で見れるように手伝ってるだけ。あなたの選択を信用してないわけじゃないんだ。何が正しくて何が間違ってるか、もう知ってるでしょ。あなたを幸せにするなら、それでいいんだよ!私たちがいるし、あなたの決断の結果を喜んでる人もたくさんいるってこと、知っておいて。私もその一人だよ」って言われて、マジでビックリしたんだ。
喜んでるって言ったよ。待って、もしかしてあいつ、私の親友じゃないのかも。
「な、なんでそんな風に私を見てるの?」って、じっと見つめ返したら、あいつの顔には気まずさが滲み出てた。
ただ不思議に思ってただけなんだよね。あいつに文句言われないことに、ちょっとがっかりしたんだ。
ちょっと、え?Baklaは、よく鬼みたいだったんだ。私がちょっとしたミスをするたびに、怒ってたのに。なのに、その日はーなんで?
腕を組んで、椅子の背もたれに背中を預けた。
「どうしたの?」って、あいつは眉を上げて、私の存在全体をジャッジしてるような顔で聞いてきた。
私が何も言わないと、眉を下ろして、「そろそろ帰るわ」って言ったから、頭の中に警報が鳴り響いた。
「やだ!まだ帰らないで!せっかく来たんだから。っていうか、こんな風に話すの、久しぶりじゃん!」って懇願した。
あいつはポーカーフェイスで、私は懇願するような目で見た。「お願い?」
「わかった、もう少しだけ付き合うよ」って言うから、嬉しくて、あいつの方に飛びついて、歓喜の悲鳴をあげながらハグしそうになった。
結局、椅子に2人座れるし、一緒にいる様子を見たら、まるでハグしてるみたいだったから。でも、あいつの体が硬直してるのに驚いた。離れて見てみたら、すごくショックを受けてるみたいで、椅子の上で固まってるみたいだった。
「おい、Bakla!」って叫んで、あいつを驚かせた。
あいつはちょっと動いて、ちょっと失礼って言って、トイレに行ったんだ。
私は眉を上げて、フェリシティの視線と合った。もしかして、お腹を小突いちゃって、屁が出ちゃって、何か悪いことでも起こったのかなって考えたんだ。