第92章
エリヤナのPOV
騙されるわけないじゃん。最後のチェックって感じで、頭からつま先までキョロキョロ見ちゃった。あんな風に騙すためにコンタクトレンズとかしてないって確信したし。
「エリヤナ?何してんの?なんでフェリックスのことそんなに見てんの?」 ママが私の行動を見て、慌てた。「また何か勘違いでもしたの?」 ママは続けたけど、私は誰にも返事するつもりなかった。
ただ彼のこと見てた。彼も同じように私を見てるし。結局、ギブアップするのはあいつだって分かってたんだ。絶対に負けないけどね。
頭の中で数え始めて、10まで半分も行ってないうちに、目の前の男がニヤリとして、大声で笑い出したんだ。
「マジで、お前には敵わないよ。フン!」
やっぱり!負けたね。いつもの甲高い、呂律の回らないクレイジーボイスに戻っちゃったよ。
「ちょ、ちょっと待って…何が起きてんの?」 ママが困惑した様子で私たちに尋ねた。
「えー、マジで、おばさんったら!鈍すぎ!」 フェリシティがママに言った。
ママの目が大きく見開かれて、何が起きてるのか理解したみたい。
「もう、あなたってば!」 って叫んだ。フェリシティの腕を掴んで、すごい音がした。
「いて!」 フェリシティが泣いた。ママがまた殴ろうとする前に、すぐに距離を取ったんだ。ママはムカついて、彼を追いかけてまた殴った。
「騙されたわ!」 また殴ろうとしたけど、フェリシティは逃げ切った。ママはもう彼に追いつけなかったみたい。膝がガクガクでしょ。
「マジで、おばさん!そんなつもりじゃなかったのに。おばさんが私をフェリックスって呼んだから、ついノッちゃっただけなんだよ」 って説明してた。
見てて、心の底から笑いが止まんなかった。まるで子供みたいで、周りのこと全然気にしてないし。あんな風にママをからかうなんて信じられないし、ママは誰と話してるのか全然分かってないみたいだし。
ママは最初の被害者ってわけ。
疲れ果ててから、彼らは話して、今度はパパと召使いの人たちにも同じことしようって決めたみたい。でも、キッチンに向かうときも笑いが止まらないから、バレちゃうかも。
私も笑いながら、彼らに付いて行った。キッチンに着いたら、シーン…って静かになっちゃった。いつも陽気で騒がしい召使いの人たちが、真顔になっちゃったよ。ダルダリタが、全然汚れも汗もついてないのに、エプロンで顔を拭いてるの見て、思わず吹き出しそうになっちゃった。
あいつが髪の毛を短くするなんて、マジで信じられないし、その日は化粧も全然してなかったし。いつもの格好とも違うし。何があったんだろって思ったけど、意外と似合ってたんだよね。
彼はフェリックスのフリを続けた。一緒に朝ごはんを食べてたんだけど、私は彼から目が離せなかった。隣に座ってたから、時々視線が合っちゃって。目が合うと、何でもないふりしてそらしたりしてた。
もう1時間くらい経つのに、まだドキドキが止まらない。すごい別人みたいだし、男らしい声で双子のフリしてるの聞くと、なんか膝から崩れ落ちそうになるんだよね。変な感じだけど、まさにそんな気分だった。無視しようとしたんだけど、パパと話してる時も、めちゃくちゃ近かったし。パパはフェリシティだってことに全然気づいてなくて、彼がフェリシティだって言うまで、ずーっと話し続けてた。
「フェリシティはまだ上にいると思うよ。昨日セブに行ったんだけど、今日は帰ってこないと思ってたんだ。まさか夜遅くに帰ってくるとはね。本当にありがたいよ。アキは昨夜もずっと起きてて、泣き止まなくて。でも、お父さんが抱っこしたら、すぐに寝ちゃったんだ」 ってパパは言ってた。
昨夜のこと、知らなかったな。パパと同じように、私も彼が帰ってきてくれて感謝してたけど、いつになったら、彼は私のために、こんなことしてくれるんだろう?
そのことを考えると、また胸が重くなるような気がした。彼なしの生活なんて考えられないけど、彼に頼りすぎるのも嫌なんだよね。前にも言ったけど、彼には自分の好きなように生きてほしいんだ。縛られたりしないで。
「上にいる彼をちょっと見てきてくれないか?弟が来てるって伝えて、もし寝てたら起こさないで」 パパが召使いの一人に命令した瞬間、私はすぐにママの方を見て、彼女が大声で笑い始めたから。
「どうしたの、あなた?」 パパがママに尋ねた。
「私たちって本当に…運命の…赤い糸で結ばれてるわね」 ママはそう言って、くすくす笑った。
「それは知ってるけど、なんでそんなに笑ってるんだ?」 パパは困惑した様子でママに尋ねた。
本当に、彼がフェリシティと話してるなんて、全然気づいてないんだ。正直、見分けるの難しいし。そっくりだし、初めて会った人が、もう一度会ったとしても、じっくり見ないと違いが分からないと思う。
「フェリシティって呼ぶのはやめて、ヒハ。もうここにいるんだから」 ママがそう言うと、パパの眉毛がピクって動いた。
「どういうこと、あなた?」 パパがママに尋ねた。
「ここにいるよ、おじさん」 フェリシティが甲高い声に戻って、いたずらっぽく笑った。
パパの目が、フェリシティを見て大きく見開かれるのが見えた。彼をじっくり観察して、信じられないって顔をしてたし、何回か悪態ついてた。面白いから、私も唇を噛んで笑うのを我慢してたんだけど、結局、笑っちゃった。
ママの笑い声が大きくなって、私たちもつられて笑っちゃったんだけど、笑いが止まった瞬間、召使いの人たちがフェリシティのところに集まって、彼が本物かどうか確認し始めたんだ。2人は信じられないって感じで、上の子供部屋に駆け込んだし。もう一人は、彼の車があるか確認するために外に出た。
その日は屋敷の中で大騒ぎになった。彼らはフェリシティを囲んで、なんで髪の毛を切ったんだって質問攻めにしてたし。ダルダリタでさえ、髪の毛どうしたの?ウィッグにしたいからって聞いてたけど、フェリシティはもう必要な人に寄付したんだってさ。