第9章
次の日、目が覚めたら、焦げ付くような朝だった。新しい雰囲気と天気に、まだびっくりしてる。まるで夢だったみたいに、昨日の夜食べた美味しいディナーのことをまだ考えてた。
でも、めっちゃ食べたんだよね。テーブルマナーとか、忘れちゃった。だって、素手でデッカイ牡蠣とかロブスターとか食べたんだもん。
フィリピン料理って、独特の味がするじゃん? なんだか、恋しくなっちゃうシーフードとかもあるし。 ママが新しく雇ったメイドさんたちには、昨日のこと、内緒にしてほしいな。絶対、恥ずかしいから。 確実に、何日もご飯食べてないみたいに思われてるはず。
目が覚めたのは午前10時。だから、もう暑いんだよね。寝る前にエアコンつけなかったのは、もう疲れ果ててたから。湿度もあって、全身汗だく。起きてはいるんだけど、精神的にはまだ寝てる感じ。汗だくのに、ゴロゴロしてたんだけど、急に今日の予定を思い出して、起き上がったんだ。
どこに行くつもりだったか、一瞬忘れちゃったんだけど、思い出したから、シャワー浴びて、今日は彼にオフィスで会えるかもって、期待して準備したんだ。
一番着心地のいい服をカバンから探してたら、あれ? って気づいた。夏用のワンピースとか、買わなきゃダメじゃんって。探し回ってたら、あんまり露出してないワンピースが見つかった。
デートじゃなくて、友達に会うだけだし、シンプルなピーチ色のマキシワンピでいいかなって。肌色のウェッジヒールと合わせて、髪も下ろした。
着替えてから、鏡で自分の顔見たら、顔色悪くて、赤リップ塗って、マットなパウダーでクリーム塗った後にそばかすを隠した。3 in 1 クリームでコンシーラー効果と日焼け止め効果があるやつ。ローションのこと、忘れかけてた。外、暑いから、腕とか首とか足とか、塗らないとね。
準備が終わって、口角が上がったまま止まらない。お腹の中は、ドキドキでいっぱい。
完璧って感じになったから、運転手を探しに出た。車、勝手に使えないんだよね。だって、免許必要じゃん。「捕まったときに払うお金はあるけど、やっぱり法律は守るべきでしょ。」
グリーンヒルズ・サンフアンから、マルティンクが経営するエンジニアリング会社があるサンパロック、マニラに向かった。今の会長、CEO、社長は、フェリックス自身。COOは、彼の姉の旦那さんで、建築家なんだって。
長女のレアは、カフェを経営してる。ユージーンおばさんのレシピのパンとかお菓子をそこで売ってて、一番人気は、私が恋しかったチーズケーキ。フェリシティだけ、キャリアが全然違う。彼は自分の血と汗で会社を始めたんだ。
会社は近かったから、まずフェリックスに会いにいくことにした。移動に30分以上かかって、着いたのはもうお昼。フェリックス、もう出ちゃってるかもしれないから、運転手に待っててもらうことにした。「タクシーで一人で移動したくなかったから、念のため。」
従業員はランチ休憩中だったから、たくさん会うことになった。みんな出ていくところだった。
入り口入った瞬間から、みんなの視線を集めてた。警備員がカバンをチェックして、そのうちの一人が、何しに来たんですか? って聞いてきた。フェリックス、社長に会いに来たって言ったら、意味深な顔された。
名前をログブックに書いて、サインした。サインし終わったら、服の下に武器とか持ってないか、スキャナー通された。
歩いてたら、女の人二人が、ある女優さんの話をしてた。フィリピン語で話してたんだけど、全部わかった。
私が観光客みたいに見えたから、わからないと思ったのかな。だって、お父さん、私にそっくりなんだもん。顔の形とか、鼻の尖り具合とか。目の色も、グレーっぽいし。トルコの人に間違われることも多いから、別に珍しいことじゃないんだけど。
警備員に、社長のオフィスがあるフロアを教えてもらった。二人によると、社長はまだ出てきてないらしい。ラッキーかも。エレベーターに乗って上がってると、口角が上がったままだった。ロビー以外は、何も変わってないのに気づいた。ロビーは前よりちょっと広くなってるみたい。フェリシティのオフィス、どんな感じなんだろう。
彼のオフィスは、マニラ、パコにあるんだ。フェリシティはまだ、自分の建物全部持ってるわけじゃなくて、巨大な建物の一室をオフィスとして借りてるだけなんだ。
なんで勉強した道じゃなくて、キューピッドになりたいのか聞いたら、フェリシティは、恋人を見つけるのが難しい人たちを助けたいからって言ってた。
彼は、自分のことを「モダンキューピッド」って呼んでて、たくさんの人を助けてきたんだって。
双子のこと、助けようとしなかったのかな? とか思っちゃうけど、多分、やったんだろうし、あの人だから、どうかなって。
フェリックスは、もう37歳だけど、まだシングルらしい。一度も、家族に女性を紹介したことないんだって。心配になっちゃうよね。だって、フェリシティのハートのこと、知ってるでしょ? 女の人のハートなんだから。
エレベーターのドアが開いて、私が降りる階に着いた。フェリックスのオフィスは8階なんだ。
「すみません、フェリックスさん、まだいらっしゃいますか?」受付の女性にフィリピン語で尋ねた。ランチに行く準備をしてるみたいだった。私のこと見て、びっくりしたみたい。私が彼女の言葉を話せるって、信じられないって感じだったのかな。
「あー、あのー、先生とのアポイントメントは?」って、丁寧な言葉遣いで聞いてきた。
「あ、すみません、実は、ないんです。代わりにフェリックスに、私が来たって伝えてもらえませんか? エリヤナ・ベグムだって。友達なんです」って、お願いした。
待っててくれって言われた。彼女は部屋に入っていった。待ってる間に、周りを見てたら、突然、あの人が別の部屋から出てきて、私の方に歩いてきたんだ。
その瞬間、感情が抑えられなくなって、フェリックスのところまで、全力疾走した。彼に飛びついて、抱きしめた。
「会いたかったよ!」って、すごく嬉しくて大声で叫んだ。彼が私を突き放そうとしてる感じがしたから、離れたんだ。
彼の顔を見て、誰だかわかって、すごく驚いてるのを見て、すぐに抱きしめた。
「エ、エリヤナ?」って、信じられないって顔で聞いてきた。
「そうだよ! 会いたかったよ、フェリックス!」って答えて、また抱きしめた。今度は、もっと強く。もう、突き放されなかった。でも、彼も抱きしめ返してくれなかった。
ちょっとがっかりしたけど、まあいいか。彼からのそういう対応には慣れてるから。
「いつ帰ってきたんだ? ここにいるなんて、信じられない」って、抱擁から離れた私に言った。
「昨日だよー。あー、もう! かっこよくなってるじゃん。昔のオタクみたいな感じ、全然しないね! 近くでランチでも食べない? ちゃんとお話できるし」って、周りを見回した。みんなこっち見てるし、立ち止まって見てる人もいるし、さっき話した女性もいた。
「ママに今日、ランチは家にいるって約束したんだー。一緒に来ない? きっと、みんな喜ぶと思うよ」って、誘いを断られたんだけど、その提案は嬉しかった。
「いいよ! 実は、ここに会う前に、ユージーンおばさんのところに行くつもりだったんだ」って答えた。
「じゃあ、いいね! 車ある?」って聞いてきたから、あったんだけど、運転手も外にいたんだけど、嘘ついて、車持ってきてないって言ったんだ。
運転手には、家に帰っててってだけ、メッセージ送ったんだ。
彼らは、まだ同じ場所に住んでて、前より広くなってて、リフォームしたばかりみたいだった。
「エンジニアリング会社と建設会社持ってる人たちだから、当然でしょ?」 毎年リフォームできたらいいのにね。 ルーカスの場合は、家を買って、リフォームして、高い値段で売ってるんだよね。
結構、長い道のりだった。フェリックスに色々聞きたいこととか、道中、からかったりしたかったんだけど、やめとけって感じだったから。ただ座って黙ってろって。それが、私を好奇心と同時に怖がらせる。
5年以上会ってなかったけど、彼はまだ、気分じゃない時とか、周りの人が嫌いな時に出る、あの気まずい空気を出してた。私が、彼が嫌いな人の中の一人だってわかってた。
「もう変わったと思ってたんだけどな。」
着いたら、彼は私を直接ダイニングエリアに連れて行った。レアが私を見て、興奮して叫び出した。
「オーマイゴッド、エリヤナ! オーマイゴッド! スーパーオーエムジー!」って、心の中で笑っちゃった。
すぐに私に近づいてきて、抱きしめてきた。ユージーンおばさんがレアの叫び声を聞いて、大好きなキッチンから心配そうな顔で出てきたんだけど、私を見て、表情が変わった。
「エ、エリヤナ?」私がいるって、信じられないって顔だった。
「やあ、おばさん!」って挨拶して、レアが私を離してくれた後、ユージーンおばさんが近づいてきたから、抱きしめた。
また会えて、抱きしめ合えて、本当に嬉しかった。フェリックスと一緒に行ってよかった。みんなに会いたかったから。
「元気にしてた? すごく綺麗になったわね!」って、褒めてくれた。
「あ、ありがとう、おばさん! 元気だよ。みんなに会えて、本当に嬉しいよ」って答えたら、ユージーンおばさんがまた抱きしめてくれた。
「私たちも嬉しいわ! フェリックスとは、どこで会ったの? いつ着いたの? 全然連絡くれなかったじゃない! 本当にずるいわね!」レアは、私に質問しまくり。
次から次へと質問攻め。どれから答えようか考えてたら、ユージーンおばさんがその尋問を遮って、先にランチを食べましょうって言ったんだ。