第30章
フェリシティの視点
キンティンが自分のことを弁護するから、マジで笑っちゃった。お腹もう痛いんだけど、笑うの止めらんない。
「なんでオマエはオレがそのババアに興味あると思ったんだよ。言ってるのは、オマエと一緒にいたもう一人の女のことだよ、フェリシティ!」キンティンは叫んだ。顔真っ赤だし、オレのことマジで嫌ってんのが目からビシビシ伝わってくる。
あいつのおかげで、その日のうちに書類をちょっといじってやろうかと思ったもんね。未亡人って、誰か相方を探してるもんだし、キンティンに相手がいるってわかったら、間違いなくオレのところにクライアントが殺到するだろうし。
そう、オレは年寄りクライアントも受けてるんだ。大体金持ちで、オレのサービスのためなら大金払ってくれる。でも、ほとんどのクライアントは秘密主義なんだ。だって、子供たちが親にまた結婚してほしくないとか思ってるからね。でも、それはオレの問題じゃないから、キンティンの話に戻ろ。
「わかった、わかった!話がわかりにくくてゴメンね。で、その人たちは誰なの?娘さんの名前は?」って聞いたら、オレは落ち着こうとしてたんだけど、答えようと口を開いた瞬間、携帯が鳴った。
目の前の机の上にあった。登録されてる相手を見てみたら、その日のクライアントだった。
「ちょっと待って、キンティン、出るね」って言って、通話ボタンをスワイプして耳にあてた。
キンティンは手で「どうぞ」ってジェスチャーしたから、ハローって言う前に、クライアントが話し始めた。めっちゃ焦ってるみたい。
「もうそっちに向かってる?」って聞かれた。てっきりもう待ち合わせ場所にいて、オレのこと待ってるのかと思った。壁掛け時計を見てみたら、もしもうそこにいたら、10分も早く着いてることになる。
「ううん、まだオフィスにいるよ。ちょうど出ようとしてたとこ」って嘘をついた。
「あ、よかった!」って声が聞こえた。間があって、ため息をついてる。電話の向こうから、すごくホッとしたような大きなため息が聞こえた。「実は、どうしても行かなきゃいけない会議があるの。会社の重要クライアントと会うことになってて、ずっと待ってたんだけど、このチャンスは逃したくないの。会議の日程、変更できないかしら?オマエのスケジュールが大変だってのはわかってるけど、来週でも来月でも構わないから」って続けた。
あの人はほんと仕事人間だよね。10年近くもマネージャーとして働いて、会社のことばっかり考えてて、恋愛する時間なんてなかったらしい。昇進候補にもなってて、そのクライアントのおかげで、会社での地位がもっと上がるかもしれないって話だった。オレが邪魔する理由なんてないよね。
「うん、日程は変更できるよ。とりあえず、おめでとうって言っとく!うまくいくこと祈ってるよ!頑張って!」って言ったら、電話を切った後に感謝された。
彼女が来れなかったのは別にイライラしてないけど、もしオレがもうそこにいて、待たせた挙句に来れないって言われたら、来年の会議まで延期するかもしれない。
電話での短い会話が終わって、キンティンのとこに戻った。あいつは椅子に寄りかかって、机のサボテンをぼーっと見てた。何か考えてるのか、別次元にいるみたいだった。
2回も名前呼んだけど、全然気づかない。そしたら突然、オレの頭にアイデアがひらめいて、それを考えながらニヤニヤしちゃった。
「で、また誰に興味があるの?お母さん?」って冗談で言ったんだけど、あいつのイライラのスイッチを入れちゃったみたい。
なんでわざわざオレのオフィスに来て、クライアントの継娘のこと聞こうとしてるんだろ。名前はエイプリルっていうんだけど、まだ教えない。
やっと目線を動かしてオレのこと見てきた。
「からかうのやめて」って、眉間にシワ寄せて言われた。「未亡人に手を出すなんて考えたこともないよ。若い女がたくさんオレにヤらせろって迫ってくるから、なんでもう水分がなくなっちまったような女を相手にしなきゃいけないんだ?」って、あいつは納得させようとしてきた。
正直、キツかった。あいつはもうイライラしてるみたいだったから、プロっぽく振る舞うことにした。
「残念ながら、娘さんのことはよく知らないんだよね。継母がオレのクライアントだから、オマエが聞いてる娘さんの情報は持ってないんだ」って言ったら、パチンって感じでキンティンの顔色が変わった。マジでがっかりしてるのがわかった。「でも――」って続けた瞬間、あいつの目がキラッとした。「もしかしたら、継母のファイルに彼女のことが書いてあるかもしれないから、メールで送るよ。何か見つかるといいね」キンティンは頷いた。
あいつの気分がこんなに早く変わるとか信じらんない。
「ありがとう!でも、もう一つお願いがあるんだ。他の情報は自分で集められるんだけど、何か別のことでもオマエのサービスが必要なんだ」って言ってきた。
あいつの顔を見てたら、何がしたいか読めた。
「もう考えてることはわかってる」って、一言も言わせずに遮った。「まず、彼女はオレのクライアントじゃないし、念のため言っとくと、キンティン・ヘネロソさん、オレの力は、オレの助けを必要としてない人には及ばないんだよ。彼女がもう結婚してるかどうかもわからないのに、オマエはオレに、彼女に近づくのを手伝ってほしいって?」
「そう言うと思ったよ。彼女はまだ独身だと思うんだけど、まず話を聞いてくれ」キンティンもオレの考えてること読めるのかも。
「オッケー、全部ぶっちゃけて!」
あいつは自分の計画を話してくれたけど、そのアイデアにはマジでビックリした。オレはその娘にどこで会えるか教えるだけで、あとは全部あいつがやるって。
「わかった――手伝うよ」って、あいつの話を聞いた後に言った。「でも、条件がある」って付け加えたら、あいつの顔から笑みが消えた。
椅子から立ち上がって、背筋をピンとして、コートを直して、近づいてきた。オレにお願いする代わりに、オレが言ったことは何でもやるって。
「その条件ってのは?」って聞いた。
チャンスだと思った。オレにノーって言う可能性はほぼゼロ。キンティンがエリヤナを助けたって言ってたの覚えてるし。もしあの娘が助けを必要としてたなら、オレに電話してくるべきなのに、なんでヘネロソで、なんでオレじゃないんだ?
ムカついた!でも、あいつを使ってエリヤナを助けるために利用できる。オレ以外にも友達がいてよかったって思うべきだけど、なんでキンティンなんだよ、地球にはこんなに大勢人がいるのに?
「言えよ」あいつはもう待てないみたい。
「ただ、オマエには、オレの親友のエリヤナと、ずっと友達でいてほしいだけ」って言ったら、あいつは顔をしかめた。
「そんなこと頼まなくても、エリヤナとはもう友達だよ。それがオマエの頼み事?他に何かあるんだろ」ってニヤニヤしながら言った。
正直、言うべきか迷った。お願いすることって、彼女のプライベートに入り込むことになるってわかってた。でも、ただ彼女がいつも元気でいてほしいし、特に、あいつとオレの家族にまだ恨みがあるのが明らかになってるこの時期には、誰か話せる友達がいてほしいだけなんだ。
彼女を責めたりはしないよ。全部オレたちのせいだし、そのことを考えるたびに、双子の弟の前で目を回したくなるんだから。
「なら、それでいい!オマエにやってほしいのは、エリヤナがどう思ってるか――オマエと話したこととか、どんなことでオマエに助けを求めたか、教えてほしいんだ」
「そ、それは答えられない」キンティンはそう言うと、オレの目を見ようとしなかった。
「なら、オレは助けられないね」って、代わりに言った。スマホとバッグを掴んで、まるで出かけるみたいにドアに向かった。
「ま、待って!」って、ドアに着く前に叫んだ。
ニヤリ。数秒だけ笑って、彼の方を向き直って、まだ何か言いたいことあるのか聞いてみた。
「ああ、ある」って答えたから、オレはすぐに席に戻って、質問攻めにしてやった。